付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「図説 スペースパトロール」 スティーブン・コールドウェル

2013-01-31 | 宇宙・スペースオペラ
 星々の彼方から大洋の世界まで、スペースパトロールは生命と文明を守るために戦い続けている。
 スペースパトロールは君たちの力を必要としているのだ!

……と、宇宙軍のリクルートから始まり、さまざまな装備や活動の紹介がされている広報パンフレット。
 しかし、よく似た時期に、よく似た企画が続いているなあと思ったら、スティーブン・コールドウェルはスチュアート・カウリーのペンネームでした。
 そしてスペオペものの設定に使えそうだなと思っていたら、本当にTRPGがベースだったようです。

【Space patrol】【Galactic Encounters】【The official guide to the Galactic Security Force】【Steven Caldwell】【Crescent】【スペースパトロール】【銀河治安維持部隊オフィシャルガイド】【スティーブン・コールドウェル】
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「霊能者は女子高生!2~嘆きのマリアの伝言」 メグ・キャボット

2013-01-30 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 仕事が忙しいと読書ペースも落ちるし、なによりも新しい本を読もうという気力が無くなります。とりあえず時間に余裕があれば、ストーリーと結末のわかっている馴染みの本の再読ばかりです。ここしばらくは『大きな音が聞こえるか』を読み返したり、『ログ・ホライズン』とか『ゲート』を飛ばし読みしてみたり。『ゲート』あたりは、異世界との接触、オタク趣味の流入、頑張っている自衛隊と、世が世なら吉岡平が書いていても不思議はないテーマなんだよなあ……。
 とりあえず、ささっと流し読みしたのが『嘆きのマリアの伝言』。

 今回、スザンナの前に出現した女の幽霊は、「あなたがわたしを殺したんじゃない」と“レッド”に伝えてくれと言う。レッドとは誰か? 夜な夜な枕元に出現されてはかなわないと、レッドを探し始めたスザンナだったが……。

 原題は『神の目の小さな塵』でおなじみの「Mediator」。 つまり霊能者は生者と死者の「仲介者」であり、きちんと手順を踏んで成仏させるのが本筋なのに、幽霊は拳で殴って吹っ飛ばす!とか我流のブードゥーで!とか、周囲の助言を無視しては窮地に陥る主人公の、あいかわらず脳筋な霊能ラブストーリー。
 内容的には水戸黄門並みにシンプルで、こういう精神状態の時にはありがたい。

【霊能者は女子高生!】【嘆きのマリアの伝言】【メグ・キャボット】【なめ】【ヴィレッジブックス】【メディエータZERO】【吸血鬼の息子】【理論社】【胸キュン幽霊ラブストーリー】【吸血鬼】【証拠無き殺人者】【猫】
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「図説 銀河世界の戦争」 スティーブン・コールドウェル

2013-01-29 | 宇宙・スペースオペラ
 1988年に刊行された、コールドウェルの宇宙ガイド集。イラストの方は何人かで手分けして描いています。2012年のSFコンベンション「ミューコン15」のオークションにて関連書籍2冊とともに1500円で落札。

 異星文明と接触した地球がその技術を手に入れ宇宙へ進出し、銀河系へと拡大して銀河連邦に加わっていく過程を、さまざまな戦争についての記述をメインに解説していくもの。

 類書では旺文社から翻訳が出たスチュアート・カウリーの『スターライナーズ』のシリーズがあるけれど、あれは1970年代末から80年初頭に刊行されているので、こちらの方が後発。米アマゾンだと新品価格で231ドルから、中古で3ドル前後というから、まあ相場。できれば1000円までに抑えたかったけれど文句は言うまい。
 発想は面白いし、構成もすごく好みなのだけれど、宇宙艦や戦闘服のデザインが今ひとつ垢抜けてない。でも、日本ではなかなか無いシルエットのデザインは参考になるなと思いました。

【Worlds At War】【Galactic Encounters】【An Illustrated Study of Interplanetary Conflict】【Steven Caldwell】【Crescent】【図説 銀河世界の戦争】【イラストで学ぶ惑星間の対立】【スティーブン・コールドウェル】
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「デート・ア・ライブ6~美九リリィ」 橘公司

2013-01-28 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 天央祭は単なる文化祭ではなく、天宮市内の高校10校が共催する一大イベント。その実行委員を押しつけられた士道は、その打ち合わせ会議で第6の精霊、美九と出会う。
 だが、彼女は今をときめく人気アイドルであり、大の男嫌いだった……。

 巨大学園祭なんだけれど、その10校がそれぞれに創意工夫をこらした出し物や出店を競うという巨大さ、愉しさが伝わりにくく、単なる音楽ステージ対決に終始した感じになってしまったのが残念。2校でも良かったじゃないかという感想。

【デート・ア・ライブ6】【美九リリィ】【橘公司】【つなこ】【富士見ファンタジア文庫】【文化祭】【洗脳】【女装】
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「異世界の虜囚」 レイモンド・E・フィースト

2013-01-27 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー


「伝統と習慣のほうが法よりも拘束力が強いんだな。法は変わっても、伝統は持続するんだ」

 魔法使いホチョペペの言葉。

 竜の鎧を手に入れたトマスがグレイタワーズの小人族と共に戦い続けていた頃、パグはツラニの捕虜となり、沼地の収容所で強制労働に就かされていたが……。

 離ればなれになった2人の少年が、長い戦いの中で計らずしてそれぞれ別の道を歩み始めるのがこの巻。長い歳月の間に皆誰もが成長し、傷つき倒れ、そして幻影の中に己の過去と未来をかいま見ます。
 だんだん人間離れしていくトマスが不気味で、これからどうなるのだろうかとドキドキしながら読み進めていた頃を思い出します。
 表紙イラストとしては、出来は橘版より米田版の方が良いと思いますが、米田版は話の中身を反映していないからなあ。ここは主人公2人を対比させて成長を描くべきでした。

【異世界の虜囚】【リフトウォー・サーガ】【レイモンド・E・フィースト】【米田仁士】【橘賢亀】【ハヤカワ文庫FT】【イタチ】【坑道戦】
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「妖術使いの物語」 佐藤至子

2013-01-26 | エッセー・人文・科学
 国書刊行会の『妖術使いの物語』が、明治以前の文学や演劇における傾向が把握できる良書と聞いて、聞いたら即チェックは当然。
 日本人というのは、ヤマトタケルの時代から女装男子好きで、有名人とか人気作が登場するとすぐに二次創作に走り(エロパロ含む)、挿絵が良くないと売上が伸びず、過去からの因縁やお家の事情で主人公の少年が突如として授かった異能で大暴れし、その超能力はわかりやすく(使い魔とか式神みたいに)可視化されているのがお約束。義姉妹ヒロインが人気で、戦うヒロインもあり……。
 さまざまなジャンル定義には関心があるのだけれど、こういう本を読むとライトノベルの定義なんてできないなあと思います。

【妖術使いの物語】【佐藤至子】【国書刊行会】【二次創作】【異性装】【義妹】【歴史改変】【家族の因縁】【御伽草子】【浄瑠璃】【歌舞伎】【美少年主人公】【異能バトル】
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「備えよ!!」 矢澤元

2013-01-25 | エッセー・人文・科学
「組織が大きくなればなるほど、共同体を存続させようという意志が、より高所から見た合理的帰結より大きくなり、時にはその共同体トップの意志よりも優先される」

 軍事研究の本だかムックのような表紙イラストに、仰々しいタイトル。内容も太平洋戦争やら湾岸戦争などの話が半分くらい。でも軍事の本ではなく、メインとなるのはもう半分の自動車業界の話です。ロジスティクス・サポート(戦務支援)をテーマに考えてみようというもの。
 日本の企業活動において「ロジスティクス」というと単に「流通」の問題としかとらえられないことが多いけれど、本来の意味からいえば流通はもちろん在庫管理からアフターセールスまですべてを含むべき概念。その点をしっかりみっちり語っています。
 その点で大事なポイントは、冒頭の東日本大震災でのエピソードで語り尽くされているのかもしれません。何がいつ、どこで必要になるか、それをあらかじめ予測し、どのような状況になろうとも対応できるよう準備をしておくことの重要性が指摘されています。そして、その一方で経産相の無謀なシビリアンコントロールで限界を超えて酷使された放水車が壊れて戦線離脱するくだりは涙無くして読めません。

【備えよ!!】【ロジスティクス・サポートとは何か!】【矢澤元】【小林源文】【カンプグルッペ・ゲンブン】【東日本大震災】【ベンツ・ジョーク】【稼働率と可動率】【シールドビーム】【スカイライン】【スルクーフ】【F1】【湾岸戦争】【オーケストラ】【補給艦】【ヤオハン】【フォード】【セクショナリズム】【ポップ吉村】
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「大きな音が聞こえるか」 坂木司

2013-01-24 | その他フィクション
 高校1年生の八田泳は、サーフィン以外はとりたてて趣味がない帰宅部で、生活や学業に何不自由はなかったけれど、なんとなく過ぎ去っていく日々にぶつけ処の見つからないモヤモヤを抱えていた。
 そんな泳は偶然にアマゾン川の終わらない波・ポロロッカの存在を知り、なにがなんでもこの波に乗ろうと決意するのだが……。

 なにをしたらいいか分からないままもがいていた少年が、ポロロッカという目標を見つけ、それに向かって動き始めたことから、最初は単なる障害にしか思えなかったクラスメイトや大人たちが助言を与えたり支えてくれる存在に変わっていきます。少年が一歩ずつ夢の実現に向けて動き出す青春小説で、終わらない波に乗る、バイトと旅の物語。
 宣伝文句に「青春大河小説!」と書いてあって、1年生の夏から春休みまでの物語だから青春小説であっても大河小説じゃないだろ!?とツッコミいれようとして、あ、これはアマゾン河の“大河”かよ……と気づいて。
 まあ、大河には違いない。

 そして途中から合流してくる剛叔父さんの仕事はメディスン・ハンターというやつですね。『メディシン・クエスト』で読みました。これも懐かしく思いながら再確認。
 主役はあくまで少年であり、少年が自分の意志と力で行動する成長と変化の物語なのだけれども、それを見守り、時に助言して手助けする大人の存在は、良きジュブナイルそのものです。泳は自分自身の置かれた状況、自分の欲求や衝動を自分の言葉で語れるようになるたびに成長していきます。自己を客観視することが成長の1ステップなのですね。

「大人は喜びに溢れている」
 バディ・ジュニアの言葉。
 大人は子供の楽しさを超える楽しさを経験できる。大人だからつまらないということはない。『That's イズミコ』の名台詞を即座に思い出しましたが自重します。
 でも、確かに彼の成長は羨ましい。彼に嫉妬する周囲の大人たちの気持ちがよくわかります。

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「銀閃の戦乙女と封門の姫」 瀬尾つかさ

2013-01-23 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 学校では中二病全開のおっぱいスキーに過ぎないカイトだが、地球に隣接する魔法世界クァント=タンでは<玩具破壊者>と呼ばれる戦士。その特殊能力を危険視され、もう1つの祖国である日本へ強制送還されていたが、ゴールデンウィークを前にお呼びがかかり……。

 モンスターがわいてくるのもダンジョンがわいてくるのもマナのせい。
 電気やガス水道の存在は知っているし、そちらの方が便利なことも多いし、それを扱う技術もあるけれど、資源の不足とモンスターのせいでインフラが維持できないというのは面白い。

【銀閃の戦乙女と封門の姫】【瀬尾つかさ】【美弥月いつか】【一迅社文庫】【RPGファンタジー】【剣と魔法の本格異世界ファンタジー】【呪式装具】
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「レーション・ワールドカップ」 中村幸吉他

2013-01-22 | 食・料理
「そういやニホンでもさいきん大きなジシンとかおおいし、ヒトゴトじゃないぞ、あんちゃん」
「ほうよ、非常食だって美味いに越したことないからのう」

 アメリカ軍の戦闘糧食(コンバット・レーション)はとにかく不味いけれど、それでも存在意義はある。

 こういう戦闘糧食の本はけっこう出ていて、その内容もだいたい似たようなモノで、違いは収録している国の数と年代くらいでしょうか。
 そんな中で、この本の特徴は、まずそのお国料理が紹介されていること。
 この国の食文化は基本的にこういうもので、日本ならこのお店で食べることができます。でもそれが戦闘糧食になると……という感じで、総合的なお勉強ができます。
 それ以外にも過去レシピとして、スキー汁、兵糧玉、乾飯なども再現されているのがポイントです。

【レーション・ワールドカップ】【軍隊の日常食 戦闘糧食大百科】【かわかずお】【乾パン工場】【入間基地】【輸送艦しもきた】【高田駐屯地】【朝霞駐屯地】【需品課】【アニメ製作現場で食べられたMRE】
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「SOULLESS」 REM

2013-01-21 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 ハヤカワ文庫FTから翻訳が出ている、英国パラソル奇譚の1作目『アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う』をコミカライズしたもの。アメリカの出版社の刊行だけれど「The Manga」とわざわざあるくらい、絵だけを見れば日本のマンガと区別が付きません(崩したギャグフェイスも含めて)。このままモーニングかアフタヌーンあたりで連載しててもおかしく日本的な巧さだなと思って調べてみたら、作画担当のREM氏はモーニング国際新人漫画賞の第1回大賞受賞者のようです。どんぴしゃり。
 全体的にキャラクターは美形化してます。アイヴィのファッションセンスがちょっとおかしいのもそのままだけれどかわいいし、なんとなく白塗りのオネエっぽいイメージだったアケルダマ卿がすてきな美青年に描かれているし、そのドローンはもちろん美形集団。夕焼けの名場面は泣かせます。ビクトリア朝の雰囲気もそのままに、激しいアクションやら素敵な肉体が披露されるシーンもしっかりと。
 巻末におまけマンガ「Mr.マクドゥーガルの大脱走」も収録。

【SOULLESS】【アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う】【ゲイル・キャリガー】【REM】【英国パラソル奇譚】【パラノーマル・ロマンス】
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「翼の帰る処3 歌われぬ約束(下)」 妹尾ゆふ子

2013-01-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人から教わった未来など……そんなもの、よくできたまがい物に過ぎない。明日は、自分で積み重ねていくものだ。誰かに語られるものではない」
 予言の言葉などに振りまわされる義務はないと<黒狼公>ヤエト。

 上巻が出てから下巻まで1年という(刊行ペースは)超大作。待つのは辛いけれど、それでも待てるくらいの面白さ。そして、刊行ペースに反して話がさくさく進むのは、主人公が病弱だから。
 これで主人公が活劇を繰り広げるほどの気力と体力があったなら、鉱床の掃討戦とか北方からの脱出劇とかあれやこれやで膨大な紙幅が費やされてしまったろうけれど、文官なので戦闘は報告を聞くだけだし、何かあったら昏倒して病室に担ぎ込まれて1週間や2週間は平気で人事不省に陥ってしまうので、結果的に話の展開は早いです。

 皇帝の策謀によって失敗に終わりかねなかった、北方との人質交換と外交交渉をとりあえず進めたヤエトはまたも人事不省で北嶺に送還。意識を回復するや、商人ナグウィンを救出するため再び北方へ飛び、塔に幽閉されていたア=ブルスたちを解放することに成功するが、帰還したヤエトを待っていたのは、皇女が第4皇子の処刑を阻止するべく籠城しているという報告だった……。

 倒れても立ち上がるヒーローというのはタフガイの代名詞ですが、死にたくないのに、今にも死にそうなことばかり自分からしているヤエトは、倒れては病室に担ぎ込まれ、やっとこさ起き上がるとあっちに飛び、倒れて担ぎ込まれてはまた立ち上がりの連続。ぜんぜんタフガイではありません。案外と頑張っているなと思いつつ、確実に痩せてきているようなので、主人公の過労死で話が終わらないかドキドキです。暗殺とか、皇帝による刑死とかも十分ありうる展開です。
 恐ろしい皇帝の意外な親バカぶりもちらりと垣間見え、あれは本心が思わず漏れたのか、はたまた単なる偶然かとドキドキしながら頁をめくりますが、結局結論は持ち越し。次は1年後か2年後か……。(2011-09-04)

 新装版は、人質生活をセルク視点で語った短編「鳴弦の響き」収録。

【翼の帰る処3(下)】【歌われぬ約束】【妹尾ゆふ子】【ことき】【幻冬舎コミックス】【北の魔女】【女心がわからない】
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「翼の帰る処3 歌われぬ約束(上)」 妹尾ゆふ子

2013-01-21 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「権力は、失ったら買い戻せない。手に入れたら死ぬまでしがみついていないと、危険な品物です。売れないものに興味はありませんよ」
 権力に興味はないのかと尋ねられ、仕入れても不良在庫になるモノは要らないと商人ナグウィン。

 病弱な下っ端役人が、生きているうちに隠居して楽になりたいと願いながら、余計なことに口出ししないでいられるほど賢くなくて、いつの間にか望まぬ出世を続けるはめに陥り、いまや帝国の四大貴族の一角にまで上り詰め、それに伴い職務も増大。隣国との紛争から国内の権力争いはおろか、神話の中だけのはずの鬼神にまで対応しなければいけなくなり、結局、意識不明で北嶺国にたどり着いて、面会謝絶状態の病室で話がスタートするのだけれど……。

 今回は、皇妹から「復縁」を提案されるのと、宿敵・北方蛮族の使節との和平交渉がメインかな。「今度こそ隠居すると言い出されたらどうしよう!?」と狼狽える王や重臣たちが可愛いです。みんなが苦境にいるときにやめると言い出せるような人物だったら、もっと楽に生きられたはずですよ。

 一頃と比べると書店での文芸新書の扱いは悪く、駅ビルのワンフロアを占有するような書店でも街の小さな書店でも、新書コーナーは計ったように棚1本分。ここにミステリも架空戦記もSFもファンタジーも押し込められているので、買いそろえているシリーズでも新刊発見は困難です。本当に新刊で出たときに、たまたま書店に配本されていて、それを運良く見かけないとそれっきり。
 この本も出ているのに気づいたのが刊行後10ヶ月が過ぎたところ。慌てて書店に客注で取り寄せてもらったのだけれど……思いっきり逆境に陥ったところで続く……で、発売後ほぼ1年経つのに、いまだ下巻の刊行予定は見えず。これはこれで辛いなあ……。(2011-05-29)

 新装版の帯で、4巻上は25年2月発売予定とのことで、ちょっと楽しみです。

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「.(ピリオド)」 瑠璃歩月

2013-01-20 | ミステリー・推理小説
 ローマ県警の女性警官ビアンカは、相手がマフィアとなると歯止めが利かなくなってしまい、とうとう対マフィア特殊警察PSAとの合同捜査チームに飛ばされる。
 マフィア対策のために各部署の精鋭を集めたPSAとの捜査に張り切るビアンカだが、所詮は囮役に使われる程度の価値しか認めてもらえず、しかも包囲したはずの容疑者の少女ニコラに囚われてしまう始末で……。

「礼儀正しい狼は、獲物の唇は食べないのよ」

 少女向けレーベルの百合っぽい設定であおった話は、ろくに色っぽいエピソードもない、警官と便利屋のバディものでした。
 国家警察、軍警察、財務警察、刑務警察、森林警察と幾つもの警察組織が乱立し、腐敗と権力争いが横行する中で、マフィアと戦う女2人のアクション・ストーリー。
 物語的にはややご都合主義すぎるところがないでもないけれど、映画1本分の活劇としては悪くないかな。

【.(ピリオド)】【瑠璃歩月】【玄鉄絢】【一迅社文庫アイリス】【マフィア】【復讐】【人身売買】【ICレコーダー】
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「七都市物語」 田中芳樹

2013-01-19 | ミリタリーSF・未来戦記
 未曾有の大惨事“大転倒”(ポールシフト)によって地球の地軸は90度転倒し、地球上の人類は壊滅的な被害を受けた。
 月面都市に移民していた人類は地上に救いの手をさしのべ、地上に7つの都市を建設したが、同時に地球に月が攻撃されることのないよう地上500メートル以上を飛ぶ飛行体をすべて撃墜する「オリンポスシステム」を設置。
 ところが、今度は謎の疫病によって月面都市が滅び去ってしまい、オリンポスシステムが稼動状態のまま放置されてしまう……。

 航空技術の制限された世界での、残された人類の覇権争いを描いた連作短編集。小林智美のファンタジーっぽい表紙が魅力的ですが、中身はがちがちのミリタリー&ポリティカルSFです。

【七都市物語】【田中芳樹】【小林智美】【ハヤカワ文庫SF】【架空歴史小説】
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