付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「砂の上の1DK」 枯野瑛

2024-06-11 | その他SF(スコシフシギとかも)
「先手必勝は、全世界共通の安全標語ですので」

 谷津野中央環境研究棟で事故が起きた。表向きはガス爆発だが、その真相は社内政争が波及した破壊工作(サボタージユ)、ここで行われている極秘研究を頓挫させるためのものだ。
 産業スパイの青年、江間宗史は事故に巻き込まれた女子大生、真倉沙希未を救い出すが既に彼女は瀕死だった。しかし、その致命傷かと思われた傷がほとんど何もしないうちに回復していくのだが、意識を取り戻した彼女はかつて彼を「江間先生」と呼んだ少女ではなかった。秘密裏に研究されていた出所不明の肉片"コル=ウアダエ(幽霊の心臓)"が寄生し、沙希未の肉体の修復を行っているのだ。
 ネズミに植えつけて試験されていた未知の細胞はアルジャーノンと名づけられていたが、それは沙希未の記憶を読み込み、言葉を覚え、人間とは何かを学んでいくのだが、サンプルを狙う包囲網が狭まりつつあった……。

 人に宿った怪物と人を信じられない青年の、5日間の逃亡生活の顛末。
 表紙イラストから、よくある中年男性と若い少女の同居ものかなと思って手に取ってみれば、どちらかというとサスペンスSF寄りの作品でした。ファーストコンタクト的な要素もありますが、作中で登場人物が「マクガフィンだ」と言い切っていましたが、確かにコル=ウアダエが何だったのかというあたりはほとんど追求されません。ストライプ・ザ・パンツァーみたいなのでなくて良かったですね。

【砂の上の1DK】【枯野瑛】【みすみ】【角川スニーカー文庫】【終わりを受け入れ、それでも人らしい日常を送る“幸せ”を望んだ、とある生命の五日間。 】【アルジャーノンに花束を】【マクガフィン】
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「電話交感」 こがらし輪音

2024-01-13 | その他SF(スコシフシギとかも)
「タヱ、先生の言うことが全部正しいとは限らんし、正しければ何でも納得できるってもんでもねぇ。御国のために命を捧げるのが尊いことでも、親兄弟を失った悲しみが無くなるわけじゃねえし、正しさを盾に無神経なことを言っていいわけでもねぇ」
 横川タヱの父は、男に交じって軍人になりたいと戦争ごっこに明け暮れる娘に語って聞かせた。

 携帯大手子会社に勤める森戸紗菜は、連日のパワハラとクレームで弱り切っていたところで新型コロナに罹患して療養中。そんなとき、彼女のスマホにかかってきた間違い電話は、死んだ祖母からのものだった……。

 電話を通じて現在と過去がつながり、誰かと誰かの時間が交差する物語です。
 カジシン的なちょっと時間の流れが不思議な話だけど、どこか雰囲気違うなあと思っていたら、これ主人公自身の恋愛要素がほとんどないんですね。いちばん大きな要素は、家族の戦中戦後史。恋愛している相手とかはいてもとりあえず置いておいて、大事なのは人生において今自分は何をすべきなのか、仕事として自分に誇れるものか……そういうコロナ禍で迷子になっている自分の立ち位置を確認して自分自身を救う話なのです。

【電話交感~私とおばあちゃんの七日間の奇跡~】【こがらし輪音】【水元さきの】【角川文庫】【タイムパラレルストーリー】【コロナ禍に希望を見出す奇跡】【疎開】【ベンチャー企業】
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「旋風のルスト」 美風慶伍

2023-07-07 | その他SF(スコシフシギとかも)
「女が着飾るって事はね、それだけ相手に誠意を示してるって事なのよ!」
 ルストはその誠意を踏みにじる相手を許さない。

 17歳の少女ルストことエルスト・ターナーは病身の母親に仕送りをしている二級傭兵だ。しかし、もともと女は男より体力的に劣っているし、女性としても小柄。名前も売れていないルストは仕事を得るのも一苦労。
 なんとか手に入れた植樹林の見回りは新米でもできる簡単な仕事のはずだったのだが、見回りの最中に大がかりな山賊団の襲撃を受け、部隊長が戦線離脱してしまう……。

 銃と魔法の世界で傭兵になった少女の戦場譚。今回は巡回任務と偵察任務です。等級は着実に上がってはいるけれど、まだまだ名前は売れていない……つまり、周囲の傭兵仲間からの評価は低い少女が過酷な戦場で生き残るべく足掻く物語です。
 ハンマーを振り回して大暴れする女性キャラといえば筆頭は『ストリート・オブ・ファイヤー』のマッコイですが、ここに新たに1人参戦。癖のありすぎる傭兵たちが魅力ですが、どこまでレギュラー化するのでしょうか。

【旋風のルスト〜逆境少女の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方国境戦記〜1】【美風慶伍】【ペペロン】【ブレイブ文庫】【ファンタジー戦記×骨太の人間ドラマ】【少女傭兵と仲間たちの、成長×戦場ストーリー】【小説家になろう】【戦杖】【軍用ラクダ】【精霊科学】【火竜槍】
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「SFファンに贈るWEB小説ガイド」 柿崎憲

2023-03-16 | その他SF(スコシフシギとかも)
「実は「異世界『転生』」を扱っている海外SF・ファンタジーはほとんど存在しないのだ」
 異世界転生は日本のWEB小説の主流なのに、海外作品では転移などして異世界訪問する話は多くても、生まれ変わりはほとんどないという。

 SFファンというものは、自分の好きなものはなんでもSFのカテゴリーにくくろうとしたり、逆に何がSFか?の定義に異様にこだわりを見せたり、つまり集団としての扱いに困る存在という私感なんだけれど、そんなSFファンの牙城である『SFマガジン』でもウェブ小説の紹介記事が掲載されています。最新刊からテーマ別、出版形態までさまざまな分け方で本が紹介される雑誌ですが、この書籍化作品にとらわれないセレクションはいつも絶品です。

■第1回

■第2回(SFマガジン 2018年8月号)
無職転生~異世界行ったら本気だす~』 理不尽な孫の手
蜘蛛ですが、なにか?』 馬場翁
『信ぜざる者フゴナント』 ステファン・ドナルドソン(1983)

■第3回「グルメとSFとファンタジー」(SFマガジン 2018年10月号)
辺境の老騎士』 支援BIS
異世界食堂』 犬塚惇平
異世界居酒屋『のぶ』』 蝉川夏哉
異世界料理道』 EDA
『地球はプレイン・ヨーグルト』 梶尾真治

■第4回「人気はあれど書籍化されない、その理由は?」(SFマガジン 2018年12月号)
幻想再帰のアリュージョニスト』 最近
『蝉の女王』 ブルース・スターリング

■第5回「WEBならでは!? ブラウザノベルの恐怖!」(SFマガジン 2019年2月号)
ムルムクス』 大澤めぐみ
謎と旅する少女』 渡辺浩弐
あなたに似ている』 渡辺浩弐
『真っ白な嘘』 フレドリック・ブラウン

■第6回「誰が一番強いのか知りたい」(SFマガジン 2019年4月号)
『グラップラー刃牙』 板垣恵介
異修羅』 珪素
空手バカ異世界~物理で異世界ケンカ旅~』 輝井永澄
『仰天・平成元年の空手チョップ』 夢枕獏

■第7回「働かなければ生き残れない」(SFマガジン 2019年6月号)
勇者のクズ』 ロケット商会
異世界職業図鑑』 山田野郎
『R62号の発明』 安部公房

■第8回「復讐はお好き?」(SFマガジン 2019年8月号)
盾の勇者の成り上がり』 アネコユサギ
ありふれた職業で世界最強』 白米良
願わくばこの手に幸福を』 ショーン田中
「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい』 kiki
『虎よ、虎よ!』 アルフレッド・ベスター

■第9回「WEB最後のフロンティア!? やる夫スレ書籍化決定!」(SFマガジン 2019年10月号)
やる夫達は戦後の裏舞台を戦い抜くようです
ゴブリンスレイヤー』 蝸牛くも
翠星石と白饅頭な彼氏
『キッチン【やらない-O】』
『白頭と灰かぶりの魔女』
『やる夫はカードを引くようです』
『虎よ、虎よ!』AA版

■第10回「来る!悪役令嬢ブーム!」(SFマガジン 2019年12月号)
謙虚、堅実をモットーに生きております!』 ひよこのケーキ
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』 山口悟
アルバート家の令嬢は没落をご所望です』 さき
ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』 恵ノ島すず
『昼下がりの女王』 コードウェイナー・スミス

■第11回「タイムスリップしたからといってSFに分類されるとは限らない」(SFマガジン 2020年2月号)
淡海乃海 水面が揺れる時』 イスラーフィール
項羽と劉邦、あと田中』 古寺谷雉
オール・ユー・ニード・イズ・吉良~死に戻りの赤穂事件~』 左高例
この人を見よ』 マイクル・ムアコック

■第12回

■第13回「(番外編)今こそ読んでおきたいWEB漫画」(SFマガジン 2020年6月号)
『胎界王』 尾龍憲一
『新しい太陽の書』 ジーン・ウルフ

■第14回「いろいろな方程式」(SFマガジン 2019年8月号 No.740)
ブラック企業の方程式』 輝井永澄
『ドクターシップの方程式』 油布浩明
冷たい方程式:兄と弟』 鋼大
『残酷な方程式』 ロバート・シェクリー

■第15回「後宮に可能性を感じる」(SFマガジン 2020年10月号)
薬屋のひとりごと』 日向夏
ふつつかな悪女ではございますが』 中村颯希
後宮武侠物語』 古月
『後宮小説』 酒見賢一

■第16回「電子媒体とモキュメンタリーのマリアージュ」(SFマガジン 2020年12月号)
『<忌録:documentX』 阿澄思惟
『ケルベロス第五の首』 ジーン・ウルフ

■第17回「界面活性剤としての百合の可能性」(SFマガジン 2019年11月号)
銀河縦断ふたりぼっち』 クファンジャル_CF
世界を壊さないで』 デッドコピーたこはち
ネクロオーガン』 五三六P・二四三・渡
『ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?』 ジェイムズ・ティプトリーJr.

■第18回「夫婦のかたち」(SFマガジン 2021年4月号)
王妃ベルタの肖像~うっかり陛下の子を妊娠してしまいました~』 西野向日葵
嫌われ妻は、英雄将軍と離婚したい! いきなり帰ってきて溺愛なんて信じません。』 柊一葉
公爵令嬢は騎士団長(62)の幼妻』 筧千里
『技術の結晶』 ロバート・チャールズ・ウィルスン

■第19回「ヘンダーソン氏とは誰なのか?」(SFマガジン 2021年6月号)
TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す ~ヘンダーソン氏の福音を~』 Schuld
ドラッケンフェルズ』 ジャック・ヨービル

■第20回「このヒロインがすごい!」(SFマガジン 2021年8月号)
サイレント・ウィッチ』 依空まつり
エリスの聖杯』 常磐くじら
壺の上で踊る』 海老
『家族八景』 筒井康隆

■第21回「祝!はてな20周年!」(SFマガジン 2021年10月号)
フォルカスの倫理的な死』 枕目
力士二十人ミサキ』 芦花公園
ホラーのオチだけ置いていく』 春海水亭
『伊藤計劃記録Ⅰ』 伊藤計劃

■第22回「悪党どものお楽しみ」(SFマガジン 2021年12月号)
『ザ・スーサイド・スクワッド』 監督:ジェームズ・ガン
勇者刑に処す 厳罰勇者9004隊刑務記録』 ロケット商会
ペテン師は異世界で静かに暮らしたい』 片里鷗
ラケッティア~異世界ゴッドファーザー繁盛記~』 実茂譲
『地獄のハイウェイ』 ロジャー・ゼラズニイ

■第23回「男性が乙女ゲームに転生した場合」(SFマガジン 2022年2月号)
乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』 三嶋与夢
乙女ゲーのモブですらないんだが』 玉露
悪役令嬢の執事様 破滅フラグは俺が潰させていただきます』 緋色の雨
ノーストリリア』 コードウェイナー・スミス

■第24回「なぜかここだけ『MC』特集」(SFマガジン 2022年4月号)
『タコピーの原罪』 タイザン5
さよならウィザード』 平鳥コウ
『人形つかい』 ロバート・ハインライン

■第25回「匿名掲示板はお好き?」(SFマガジン 2022年6月号)
俺にはこの暗がりが心地よかった』 星崎昆
【VR】ブレイブファンタジー【神ゲー確実】』 hikoyuki
異世界通販レビュー!』 佐々木匙
『朝のガスパール』 筒井康隆

■第26回

■第27回「変化球多めな悪役令嬢もの特集!」(SFマガジン 2022年10月号)
現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』 二日市とふろう
鉄血の海兵令嬢』 草薙刃
伝奇世界の悪役令嬢※90年代からきました』 海老
『フラッシュフォワード』 ロバート・J・ソウヤー





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「辺境の惑星」 アーシュラ・K・ル=グイン

2023-02-06 | その他SF(スコシフシギとかも)
 竜座の第三惑星の冬は厳しい。五千日も続くのだ。
 そんな冬の到来を前に、他部族の食糧を求めて北方の蛮族ガールの略奪遠征が始まろうとしていた。それに立ち向かうべく、各部族間で同盟の動きが出てくるが問題は多い。なにより主導しているファーボーン族は地球からの移民の末裔であり、ファーボーンが共闘を持ちかけているトバールはガールと同じ原住種族ヒルフなのだ……。

 ファーボーンの頭アガトとトバールの族長の娘ロルリーをメインキャラに据えた、異種族間の相克の物語。ル・グィンが好むモチーフの原点かな。
 ゲド戦記で有名なル=グインの初期作品、長編2作目で『闇の左手』にもつながるハイニッシュ・サイクル、未来史ものの1つ。翻訳した出版社や時期により、ル=グウィンだったりル・グィンだったりしますが、サンリオSF文庫はル=グイン表記です。
 SFなんだけれど語り口はファンタジーで、物理や科学より社会学とか人類学に寄っているタイプ。これが好みのタイプな人は、C・J・チェリイの『色褪せた太陽』三部作も合うかも。

【辺境の惑星】【ハイニッシュ・サイクル】【アーシュラ・K・ル=グイン】【竹宮恵子】【サンリオSF文庫】【叙事詩的ファンタジー】【ハイニッシュ・ユニバース・シリーズ】【エクーメン世界SF】【遺伝子工学】【剣と惑星】
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「あおいちゃんパニック!」 竹本泉

2021-06-21 | その他SF(スコシフシギとかも)
 萩尾望都やら竹宮恵子のSFコミックを前にしても少女マンガから一線を置いていた男性SFファンを背中から蹴り倒した一作。

 転校してきた美少女、早川あおいは何故か森村少年を警戒している。
 そんなあおいはスポーツ万能で常軌を逸した跳躍力と聴力を持っていて、山崎あたりは彼女は論理的にウサギに違いないという。進化論的にみて姿が人間とまったく同じ宇宙人ということはありえないし、体重36キロではロボットとかサイボーグという可能性はないと断言した……。

 14歳のあおいちゃんは、ごくごく普通の女の子だけれど、実は宇宙人と地球人のハーフだったのです。
 彼女の本名、チャチャ=モチャノチャ=ヌートの1は周囲の男連中はみんな諳んじられたなあ……。

【あおいちゃんパニック!】【竹本泉】【講談社コミックスなかよし】
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「ゼネプロ年末年始カタログ」 ゼネラルプロダクツ

2020-09-02 | その他SF(スコシフシギとかも)
 SFグッズ専門店ゼネラルプロダクツの、年末年始カタログ発掘。発行年月日とか何にも入っていないのであれだけど、目玉商品が87年公開の『王立宇宙軍』のガレージキットなので、88年冬くらいかな。
 同じく看板商品の『DAICON-FILMコレクション』は84年製作の自主製作映画『八岐大蛇の逆襲』と81年と83年夏に開催された日本SF大会のオープニングムービー2、計3作の解説本で、総頁数8ページでお値段1万6000円!(おまけにレーザーディスク付き) 他にもミラージュナイトのTシャツとかスケバン刑事の鉄仮面とかあれこれ。懐かしいよね。
 ただ、ガレージキットはサンプル写真通りのものを完成させようと思うとどれだけ手間かけないといけないか。カタログはあくまでも完成予想図で、バリとか削り出し、モールドを彫り込み、細部まで自力で塗装しないとそこまで到達しないのだ。今から見れば、帆船模型を購入したら丸太を渡されたレベルの話だけれど、当時は普通の話でした。今の完成品市場が羨ましい。主に購入したのはネクタイピンでした。

【ゼネプロ年末年始カタログ】【ゼネラルプロダクツ】【快傑のーてんき】【愛国戦隊大日本】【メカオペブック】【STOL】【台湾本】【アマチュアフィルムアンソロジー】【クレクレタコラ】【ウルトラセブン】【ドラゴンクエスト】【謎の円盤UFO】【サンダーバード】【ブレードランナー】【FSS】
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「サイコパスSS (上)」 吉上亮・茗荷屋甚六

2019-12-21 | その他SF(スコシフシギとかも)
 「シビュラシステム」によって人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測が可能となり、犯罪係数が規定値を超えれば、実際に罪を犯していなくても「潜在犯」として裁かれている西暦2112年の日本。
 そんな監視社会でも犯罪は発生し、厚生省管轄の警察組織「公安局」の刑事は、シビュラと有機的に接続されている特殊拳銃「ドミネーター」を用いて、治安維持活動を行っているのだが……。

 公安局刑事課一係所属メンバーたちを主役にした、近未来犯罪SF。
 フジテレビ「ノイタミナ」枠で放映されていたProduction I.G制作のオリジナルアニメ。その劇場版のノベライズで、表紙イラストは公開時にリーフレット等で使用されたものの転用。
 上巻は、潜在犯隔離施設〈サンクチュアリ〉の心理カウンセラーが車両で公安局ビルに突入する【Case.1 罪と罰】と、無人の武装ドローンが東京の国防省を攻撃した事件を国防軍のパイロット・須郷徹平と刑事課一係執行官・征陸智己が捜査する【Case.2 First Guardian】の2編。
 今回はノベル版サイコパスをいつも担当していた吉上亮に加え、ゲーム版シナリオを担当していた茗荷屋甚六も参加しています。ただ、アニメの方はほとんど見ていないので、どこがどう違うかとは言えないのです。

【PSYCHO-PASS Sinners of the System (上)】【サイコパス】【吉上亮】【茗荷屋甚六】【マッグガーデンノベルズ】
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「陽射し」 吾妻ひでお

2019-10-24 | その他SF(スコシフシギとかも)
 ちょっとエッチなギャグ漫画がヒットし、シュールSFでマニアウケした吾妻ひでおのエッセンスが凝縮したのが、美少女が登場する幻想的な短編を集めた『陽射し』。『不条理日記』から『メチル・メタフィジーク』まで吾妻ひでおの不条理コミックを買い求めたら、当然、これも買います。値段は倍以上ですが、装丁も豪華です。
 ところが、本屋に予約して発売日に買いに走った高校生SFファンたちは、レジで店のおばちゃんに片っ端から捕まります。中身を確認させられ、「これ買うの? 本当にコレで良いの? 買うんだね!」……。
 この詰問に耐えられた者だけが手に入れられるコミック。
 収録作品のほとんどが、自販機販売の雑誌「少女アリス」掲載作品。商業誌初のロリコン漫画『純文学シリーズ』とは、この作品群のことですね。シュールで、SFで、美少女で、エロ。そりゃあ、仕方がない。
 だから、大きな本屋で買ったら駄目なんだって。

【陽射し】【妄想画廊】【吾妻ひでお】【奇想天外社】【少女アリス】【マンガ奇想天外】
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「不条理日記」 吾妻ひでお

2019-10-23 | その他SF(スコシフシギとかも)
 天皇即位の儀の前日に、吾妻ひでおの訃報が流れました。令和元年10月13日没。合掌。

 自分たちの世代としてはチャンピオンの『ふたりと5人』が直撃だったわけですが、その後、あまり目にすることがなくなったなあと思っていたら、別冊奇想天外「SFマンガ大全集」あたりから「吾妻ひでおのシュールなSFギャグがすごい!」と評価が一気に高まります。

「○月×日
 青ジョイントで青色申告にいく」


 『闇の左手』『はるかなる朝』『虎よ、虎よ!』『孔子暗黒伝』『去りにし日々、今ひとたびの幻』『ミルクがねじを回す時 』『エスパー魔美』『超人ロック』……小説からコミックまで、あらゆるSFを詰め込んでシュールな一発ネタで使い捨てていく不思議な短編集。わかる人にはわかるネタの数々に、マニア心をくすぐられるんですよ。

【不条理日記】【シャン・キャット】【タバコおばけだよ】【狂乱星雲記】【奇想天外コミックス】【SFギャグ傑作集】【東武西武東武西武】【でれっき】【ほしづる】【松本零士】
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「アステリズムに花束を」 S‐Fマガジン編集部

2019-08-20 | その他SF(スコシフシギとかも)
 最近売上が芳しくなかったSFマガジンが、百合(女性間の関係性を扱った創作ジャンル)とSFを組み合わせて特集したら創刊以来初の3刷と、みんなどれだけ百合が好きなんや?という快挙達成。
 中でも、特筆すべきはナムボク名義でpixivにて発表された短編小説「月と怪物」が収録されていること。

「では、これから無知蒙昧にして分別もつかない文明不毛の魂の稚児たるきみに、この社会主義国家の人民平等の理念の下、同志諸君と足並みを揃えるための授業を始めよう」

 ソビエト連邦の街の片隅で、ホームレス生活を送るエカチュリーナ姉妹が当局によって捕縛され、東西冷戦の軍拡競争のさなか、施設で育てられて人体実験の被験者となるのだが……。

……という、ソ連ファン歓喜の問題作が、よりによって百合文芸小説コンテストに応募されてしまって話題沸騰。読者困惑。人呼んで「豪速球ソ連百合」。

【アステリズムに花束を】【百合SFアンソロジー】【S‐Fマガジン編集部】【シライシユウコ】【ハヤカワ文庫JA】【世界初の百合SFアンソロジー】【BALCOLONY.】【宮澤伊織】【キミノスケープ】【森田季節】【四十九日恋文】【今井哲也】【ピロウトーク】【伴名練】【彼岸花】【草野原々】【幽世知能】【櫻木みわ&麦原遼】【海の双翼】【南木義隆】【月と怪物】【陸秋槎】【色のない緑】【小川一水】【ツインスター・サイクロン・ランナウェイ】
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「深夜の市長」 海野十三

2019-06-21 | その他SF(スコシフシギとかも)
「もし人間が生きるのに直接必要でない肉体部分--つまり心臓や肺臓は是非必要だが、手足や2つ以上ある内臓は、これを切除するか又は1つに減らしてしまう。そうすると人間の脳力は、手足などのことに煩わされることがなくなり、結局今まで無駄に使っていた脳力が余ってくるから、従ってその人間は普通の人間より何倍も悧巧になる」
 鴨下ドクトルの縮小人間学説。

 明治生まれの推理作家にして日本SFの父とも呼ばれている海野十三の傑作選。昔の作家ですが、定期的に復刻されて登場します。これは2013年版。
 ミステリとSFと怪奇譚の境界があやふやなのが当たり前だった時代の作品。昼間の東京とは全く別の姿を見せる真夜中の大都市Tを支配する謎の老人・深夜の市長をめぐる都市ミステリ奇譚「深夜の市長」とか、青年探偵帆村荘六が怪人蠅男や赤外線男の凶悪犯罪に挑む「蠅男」「振動魔」など5作品を収録。東宝の特撮映画・変身人間シリーズと怪奇大作戦を足して割ったような作品群です。

【海野十三傑作選(1)】【深夜の市長】【蠅男】【振動魔】【赤外線男】【三人の双生児】【海野十三】【沖積舎】【なんという怪奇!】【海盤車娘】【女流探偵】【近親相姦】【処女受胎】【シャーロック・ホームズのライバル】
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「九百人のお祖母さん」 R・A・ラファティ

2019-03-20 | その他SF(スコシフシギとかも)
 ユーモラスな語り口で、とんでもなく恐ろしい話をホラ話のように語ってしまったりするラファティの短編集。SFというより「空想」に主点が置かれた空想科学小説。ともあれ、この短編集については、タイトルで大ウケした記憶があります。

【九百人のお祖母さん】【レイフェル・アロイシャス・ラファティ】【横山えいじ】【ハヤカワ文庫SF】【不老不死】
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月刊OUT11月号「これが東京12チャンネルだ!」 

2019-03-19 | その他SF(スコシフシギとかも)
 昭和52年の11月号。巻頭特集は「新作SFアニメーションの大紹介」なんだけれど、メイン企画は「これが東京12チャンネルだ!」という、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の放送する番組をあれこれ大特集するというもの。
 中でも白眉は「快傑ズバット」の紹介記事で、今なお怪作の名高いズバットを、日本一の私立探偵である早川健の格好良さや敵対する犯罪者たちのトンデモぶりと合わせて面白おかしく紹介し、これを読んで「見よう!」と思ったら発行日がズバット最終回の翌日だったというオチがついた回。自分がズバットを初めて見たのは、刈谷商店街のお好み焼き屋で焼きそば食べながらで、確か花売り少女の回。すごい話だと今でも思うよ。
 他には、世界初のアニメーション小説「スペース・スカル」の連載がこの号から。アニメーション小説というので、イラストが動くとか、アニメとコラボとか思いきや、挿絵がセル画というだけの話で、みんなで盛大にツッコミまくった記憶があります。

【月刊OUT11月号】【みのり書房】【流行性透明人間】【ペイルココーン】【スペース・スカル】【新巨人の星】【ルパン三世】
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月刊OUT1月号「竹宮恵子特集/羊たちの胸やけ」 

2019-03-09 | その他SF(スコシフシギとかも)
 1979年の新年号。今号もインチキ表紙がついて表紙が全部で5枚となります。巻頭ポスターは「スター★シマック」。高信太郎のマンガ「地球へ!」、夏目房之介のマンガ「ウルトラ家の一族」も掲載。アニメ・マンガ・パロディ尽くしの雑誌ながら、音楽コーナーだけは矢沢永吉とかDEVOとかYMOとか特集していて、かなり趣味に走っていますね。
 そして、ファンジン紹介コーナーを見れば、16冊紹介されていますが、そのうち14冊の連絡先が女性名というあたり、この時期の同人活動が女性中心であることを確認できます。

【月刊OUT1月号】【みのり書房】【竹宮恵子特集】【マネージャー・増山法恵 竹宮恵子を語る】【アシスタント稼業】【地球へ!】【羊たちの胸やけ】【新春ロボット相撲】【まんがシティ・マップ'79】【OUT政府】【官報】【宇宙戦艦ノア】【マンガ老年】【灰の鳥】【JUN相姦号】【理科】【パラレル・ワールド】【マンガ図書館】
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