付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「肥満令嬢は細くなり、後は傾国の美女(物理)として生きるのみ」 八針来夏

2024-09-19 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「おれは将帥だ。将帥だった。そして人の上に立つ立場の人間とは、ひとたび口にした約束を絶対にないがしろにしてはならぬ。
 もし一度でもおれが約束をたがえれば、その言葉は誰にも顧みられぬ軽いものになるであろう」

 だから単なる口約束だろうが、1人で10人相手に戦うことになろうと約束は守るものだとローズメイは死神の笑みで笑った。

「お前との婚約を破棄する」
 最前線から呼び戻され、衆目の中で王子から婚約破棄を突きつけられたローズメイ=ダークサント公爵令嬢はふんと鼻息を漏らした。
 ローズメイは醜女である。幼い頃の美しさは見る影もなく重量級の肉の塊に包まれて、戦場を知らぬ者は醜女将軍と蔑んでいる。しかし、彼女はまた領土拡張を図るサンダミオン帝国からルフェンビア王国を守る最前線の指揮官である。父と兄を戦場で失った武門の名家ダークサントの跡取りとして、ローズメイは強力神の加護を受け、その反作用で肉体が醜く変貌していたのだ。
 帝国の間諜である男爵令嬢の策略で最前線から引き離されたローズメイは、王都に迫り来る8000の敵軍にわずか10騎の部下を率いて戦いを挑み、敵将を討ち果たした代償に戦死。強力神の加護もそのときに失ったのだが……。

 「公爵令嬢(極)」とか「傾国の美女(物理)」とかカッコ書きがつくと、なんかワクワクするよね。
 肥満で巨漢で醜女だけれど、強力無双にして百戦錬磨の女将軍が派手に討ち死にした後に神の加護を失って復活するのだけれど、そのときに代わりに「肉体美」の加護を与えられ、誰もがひれ伏すカリスマの美女として生まれ変わり、謀略を仕掛けてきた帝国に裸一貫から立ち上がって立ち向かう英雄譚。物語としてはウェブ連載1章の折り返し地点まで。2章以降も期待してます。

【肥満令嬢は細くなり、後は傾国の美女(物理)として生きるのみ】【八針来夏】【輝竜司】【TOブックス】【美貌を頼る気まるでなし。美女の痛快英雄伝】【狼龍】【アトラトル】【王子と姫の恋物語】【生贄ちゃん】
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「魔術師クノンは見えている6」 南野海風

2024-09-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「偉大なる神は時代の流れもちゃんと読んでいるはずです」
 神が魔王と戦うために与えた力であっても、時代が変わったのだからもっと自由に使えと聖女レイエスはいう。無表情で、悪びれることなく、神の教えや意思を独自解釈して聖なる魔法を好き勝手使うことを正当化していくあたり、レイエスもまた典型的な魔術師なのだ。

 クォーツ家の令嬢であり、まだ12歳のセララフィラにとって、魔術を学びながら生活費や使用人の給金まで稼ぐのは至難の業だ。正直、食べるものにも事欠き、今にも倒れそうだった。
 そして、友人であるジオエリオン皇子から従妹のセララフィラの面倒をできるだけ見ていて欲しいと頼まれていながら、研究にかまけて彼女のことをすっかり忘れ果てていたのにクノンが思い出したのは、彼女が金策の相談に訪れてからだ。
 まったく紳士として恥ずかしいことであった……。

 クノンが頼まれていた後輩についてやっと思いだし、彼女の金策に協力して魔建具のアイデアをポンと提供するところから始まるジタバタ篇。高位貴族の姫であるセララフィラが入学後2ヶ月足らずで魔術師の世界に染まっていく様子が描かれていきますが、その一方で聖女も見た目は変わらないまま中身がすっかり堕ちてしまった様子が断片的に語られます。みんなたくましいのだ。
 併録はゼオンリーとアイオンの出会いを描いた小篇。

【魔術師クノンは見えている6】【南野海風】【Laruha】【カドカワBOOKS】【盲目の天才の魔術探求・二年生編】
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「魔女と傭兵4」 超法規的かえる

2024-09-01 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「剣も、薬も、魔術も。人が戦うために生み出した道具に過ぎん。必要ならば使うだけのこと。誇りだなんだ選り好みして、それについて行けない者は死ぬだけだ」
 ジグは必要だったら薬も使うと一蹴した。もちろん道具に使われるようなのは論外。

 魔女シアーシャの交友関係も少しずつ広がっていくのを微笑ましく見守る傭兵ジグ。なので、彼女が女性冒険者のリンディアから儲かる仕事があると誘われたのもそのまま見送った。ギルド斡旋の仕事だから悪い事はあるまい。
 そんなわけで護衛任務に間が開いたジグに、マフィアのボスの娘であるカティアから自身の護衛の依頼が持ち掛けられた。街に外から危険度の高いドラッグが持ち込まれ、その調査に妨害が入るのだという。国や傭兵に憲兵に追われない内容で、金払いさえしっかりしているならどこの仕事でも受けるのがジグだったが、それが他のマフィアや冒険者ギルドも巻き込んだ抗争になろうとは……彼はあまり気にしていなかった……。

 今回はシアーシャは別行動なので、表紙イラストままでジグとカティアのシティ・アドベンチャー。今回もジグは大暴れして、盛大かつ頻繁に武具を壊します。

【魔女と傭兵4】【超法規的かえる】【叶世べんち】【GCN文庫】【本格ファンタジー】【小説家になろう】【もぎたて】
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「青薔薇アンティークの小公女」 道草家守

2024-08-20 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 産業革命でこの世の春を謳歌しているアレクサンドリア女王統治下のエルギス。母親を亡くし、花売り娘としての居場所も失ってしまった少女ロザリンド・エブリンは美貌の貴公子アルヴィンに拾われたが、それは別に親切とか慈善というわけではない。道楽に走った彼のアンティーク店は「青薔薇」を謳い、花の意匠のアイテムさえ取り扱っているのに花も飾っていないとは何事だ、花でも買ってこいと言われたアルヴィンが、たまたま目に留めたローザをこれなら花の代わりで文句あるまいと引っ張ってきたのだ。
 アルヴィンの店「青薔薇骨董店」は、妖精と花がモチーフのものばかり。彼は伝承上の妖精に強い関心を寄せており、店は彼の蒐集品の陳列場所みたいになっていた。そこで看板娘としての指導を受け始めるのだが、労働階級の出身でありながらローザは既に上流階級の美しい言葉と所作を身につけていた……。

 妖精の伝承が薄れた産業革命時代を舞台に、天涯孤独の労働者階級の娘と心を失った道楽者の物語。妖精にしか興味はなく、人の思考を見抜いても心は理解できない妖精店主アルヴィンを、人の心に気づいて寄り添えるローザがカバーして真実に辿り着くミステリー・ロマンスです。

【青薔薇アンティークの小公女】【道草家守】【沙月】【富士見L文庫】【新たなマイ・フェア・レディ物語】【時代に忘れられた、優しいフェアリーテイル】【西洋風幻想浪漫開幕】【女言葉の男性仕立屋】【古伊万里】【バンシー】【レプラコーン】【ブラウニー】
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「美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件」 諸星悠

2024-08-04 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 魔術学園で最弱と侮られているウィリアムは、幼い頃から嘲笑を受けてすっかり無気力になっていた。しかし、あるとき千年前の戦争で活躍した美少女英霊たちを召喚してしまい、望みもしてない厳しい修行を強制的に受けるようになったことから、気がつけば秘められていた才能が開花。魔術にも剣術にも、師匠たちが驚くほどの実力を身につけていた……。

 Fate以来、過去に活躍した偉人が精霊化したものを「英霊」と呼ぶのが当たり前になったようです。本来の辞書的な意味なら、戦没者あるいは単に優れた人という意味ですから、ニコイチみたいなものですね。
 英霊の魔王イリスに魔力を引き出されて覚醒した少年の成り上がり譚です。

【美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件】【諸星悠】【kodamazon】【富士見ファンタジア文庫】【かつて「最弱兵器」と見下された少年の、人生逆転無双劇】
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「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」 天酒之瓢

2024-08-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 最辺境の街で巨大な人型機械で貨物運びの日々を送るワット・シアーズは、元は王国騎士。ゆえあって引退後、鉄獣機乗りのおっさんとして余生を過ごすはずだったが、そこに娘を名乗る少女が現れた。
 王族に奪われた恋人が生んだ少女アンナは、今まさに次期国王を選ぶための争い『継承選争』の真っ只中にあったのだ……。

 引退した王国筆頭騎士が、王弟に狙われている娘を助けて戦うロボットバトル小説。娘さんが女王となるべく立ち上がりましたよ?という話。

【隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる~引退騎士は娘のために王国筆頭騎士に返り咲く~】【天酒之瓢】【みことあけみ】【DREノベルス】【娘のためにおっさん騎士、最強に復帰】


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「その者。のちに…」 ナハァト

2024-07-27 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 結婚の約束までしていた幼馴染みを勇者に取られた青年ワズは、自分の弱さに絶望して「山」に引き篭もっていたのだが、実はそこは人跡未踏でS級魔獣が跋扈する秘境。そこで獣の肉を食いあさって生き抜いたワズは、いつの間にか女神の加護まで手に入れて人外の力が身についていた。
 しかし、本人にはあまり自覚がない。殴り合ってマブダチとなった竜と別れ、2年ぶりに人里に降りてきたのだが……。

 いつかハーレムをつくれるようになるといいねとハイエロフに感化された青年の無双譚。直球勝負の成り上がり冒険談としては先駆けの作品です。

【その者。のちに…】【ナハァト】【三弥カズトモ】【アーススターノベル】【小説家になろう】【エルフ】【ドラゴン】
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「太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る3」 風見鶏

2024-07-24 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「お前は畑を見ている。それはお前だけの畑だ。お前以外の誰も手入れはしない。その畑を前に座り込み、なにも収穫がないと嘆いている。そもそも、お前はそこに種を蒔いたか?」
 銭湯で出会った獣頭の大男は、ミトロフを幸運だと告げる。

 怪我の療養で時間を持て余したミトロフはリハビリも兼ねて一人で迷宮の浅層へと潜るのだが、そこで異形の老婆と出会う。それは聖書で語られる、古の災いと称される“魔族”だ。当然、這々の体で逃げ戻るのだが、そのときに愛用の剣を失ってしまう……。

 今回は迷宮の階層主の代わりに出現した魔族との戦いを通じて、ミトロフが「放逐された貴族の息子」から「新米冒険者」になってパーティが完成するまで。
 ギルドから見たブラン・マンジェら禁忌の一族の扱いや、ギルドそのものの存在意義とかられていて、設定的にも面白いです。

【太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る3】【風見鶏】【緋原ヨウ】【オーバーラップノベルス】【追放された太っちょな貴族の、優雅な迷宮攻略譚】【錬金術師ベンジャミン・フランクフルト】【地上げ】
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「旅する錬金術師のスローライフ(1)」 川上とむ

2024-07-14 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 鈴木芽衣は病弱な身体でゲームとテレビでしか外の世界を知ることができない。そんな彼女の楽しみは14歳の誕生日にもらった錬金術師の育成ゲーム。ただ、そんな日々は長く続かず、結局、病気で命を失ってしまうのだが、彼女に同情した神様のはからいで異世界転生することになった。
 もちろん憧れの職業である錬金術師として!
 ところが、この世界ではどうやら錬金術師はマイナーな職業らしい……。

 死後の世界が愉しくて良かったね、という異世界紀行。転生したティーンエイジャーが行く先々で必要に応じてパパッと便利な道具を作って問題を解決しては次の町へ旅立っていく物語です。

【旅する錬金術師のスローライフ(1)】【川上とむ】【竹岡美穂】【Mノベルス】【気ままな錬金術師のスローライフ】【便利な道具でまったりガールズスローライフ】【空を飛べる靴】【容量無限バッグ】【万能テント】【万能地図】【迎撃用カカシ】【風の爆弾】【重力ボム】
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「異世界刀匠の魔剣製作ぐらし4」 荻原数馬

2024-07-11 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「俺は今、この世の全ての職人を代表して言っています。納期、予算、技術、職人の都合、そうしたものを無視して仕事を取ってくるな!」
 相手が歴戦の勇士グエンであっても、刀匠ルッツは許さない。

 停戦の条件のひとつである連合国との交易があまり伸びていないらしい。それはルッツたちには直接関係のない話だが、それで不利益になるのは退役軍人を集めて開拓をしている王女リディアだ。政治的立場としても、開拓のための資金調達としても喜ばしくはない。ならば商人が自分の仕事として連合国に行商で赴いて滞っている理由を調べるのはよかろうと、同じ女のクラウディアが動き出し、それならばとルッツたちも付いていくのはやむを得ない。
 行ってみて分かるのは、結局相手方の諸部族の都合だということ。そして、その状況をなんとかしようとしていくうちに、なぜかルッツがある部族に伝わる古の魔剣を打ち破るための魔剣を打つことになっていた……。

 刀作りの職人たちの物語。前半は国境地帯の連合国での魔剣狩りで、結末は即物的な婚姻事情に。後半は伯爵領内に出没する通り魔の事件。ルッツの作った刀剣を狙う通り魔が巡回騎士を次々に殺害したところから二転三転、ルッツが伏し拝まれ、ひょっとこ仮面も登場する展開となります。
 過ちを償う機会が与えられ、きちんとそれに応えられるというのは有り難いことです。「生きていれば、いつか必ず挽回する機会も訪れよう」が今回のテーマ。人々に幸あれ。

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「廃嫡王子の華麗なる逃亡劇2」 出雲大吉

2024-07-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「神は皆の心にいる。俺の心の神様はこれは生活魔法だよって言ってる」
 生きている人間にも使える血抜き魔法を、禁忌の黒魔術ではなく便利な生活魔法だと、エーデルタルト王国第一王子であるロイド・ロンズデールは言い張った。

 飛行艇が墜落してたどり着いたのは、巨大な奴隷市を前に賑わう港町だが、ここはエーデルタルト王国の敵国であるテール。さっさと船を奪って逃げ出したいと思っていたロイド王子たちは、大陸から連れ去られてきた獣人奴隷たちの脱出計画に巻き込まれる。
 互いに利用し合って、さっさとおさらばしようとするのだが……。

 あいかわらず王侯貴族以外は素で差別する主人公たちです。人間至上主義のテールから獣人たちが逃亡するのに協力しますが、彼らにとってはテールの領主も獣人たちも等しく価値がないのです。利用できるかできないか。自分たちを不快にさせるかさせないか。
 自分たちでは普通のつもりでも、周囲の国の人間から見れば、エーデルタルトの人間は暴力好きの野蛮人で厚顔不遜の狂信者。まさにその通りです。そんな誇り高い王子たちが好き勝手に生きる事で救われる人間が出てくるのは不思議ですね。

【廃嫡王子の華麗なる逃亡劇2~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~】【出雲大吉】【ゆのひと】【カドカワBOOKS】【廃嫡王子のやりたい放題ファンタジー】【小説家になろう】【カクヨム】【奴隷市】
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「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」 監督:トラヴィス・ナイト

2024-07-07 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 隻眼の少年クボの力は三味線の音色で折り紙に命を与え、意のままに操るというもの。折り紙人形を使って語る彼の冒険活劇は町のみんなにも人気で、それが半ば正気を失って隠れ住んでいる母を養う彼のすぎわいだ。しかし、ある日、闇の刺客に襲撃され、彼をかばおうとした母を失ってしまう。
 追手から逃れていくうちに、面倒見の良いサルと知り合い、弓の名手であるクワガタとも出会うのだが……。

 冷徹な月の帝の刺客から逃れつつ、伝説の武具を集めて両親の仇を討とうとするクボの冒険譚。ストップモーションがスゴすぎるアニメーションです。
 出来は良いし、話は面白いし、吹き替えも巧い!を前提に話をするけど、全体的に漂う不思議の国ニッポンが気になります。
 中世日本を舞台にしているのだけれど、いかにもアメリカが考えたサムライの国ニホンといった感じになっちゃいます。書き文字とかは日本語だけど、風景とか建物とか人の顔とか甲冑デザインとかどうしても中国が混じってきますね。砂漠で朽ち果てている謎の巨大石像……って、絶対それ中央アジアのイメージや!!
 それはそれでファンタジー小説定番の「大陸の東のはずれにある、黒髪黒目の人々が住む国」っぽくて面白くはありますが。

【KUBO/クボ 二本の弦の秘密】【トラヴィス・ナイト】【Kubo and the two strings】【アート・パーキンソン/矢島晶子】【シャーリーズ・セロン/田中敦子】【マシュー・マコノヒー/ピエール瀧】【ルーニー・マーラ/川栄李奈】【レイフ・ファインズ/羽佐間道夫】【小林幸子】【闇の三姉妹】
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「冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。3」 KAME

2024-06-22 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「冒険者は自由であるべきだ。君たちは君たちの心の赴くままに冒険へ向かうといい。……安心したまえ。もしそれで死んだとしても、中身のない虚像にされたとしても、ぼくは君たちのまま覚えていて、笑いものにしてあげるよ」
 先達の冒険者として、ペリドットはキリに語った。

 魔術士のリルエッタと治療術士のユーネを仲間に迎え、パーティを組んだキリだが、あいかわらず薬草採取を続けていた。初心者を連れて危険な依頼を受けることなど考えられなかったのだ。しかし、3人で薬草採取をしていても報酬はいくらにもならない。金がないからとキリが厩で寝泊まりしていることを知ったリルエッタは怒りをぶつけた。
 長期の任務に出ていてベテラン冒険者、カッコづけの激しいペリドットのパーティが帰還したのは、ちょうどそんなタイミングだった……。

 英雄とか勇者とか、無謀で危険な依頼に冒険者を駆りだして死なせてしまった依頼者の逃避、責任逃れが生み出した虚像に過ぎないとペリドットが語りますが、そういう英雄譚を否定する地に足のついた展開がこの作品の個性です。
 今回の鍵はもう亡くなって随分になるムジナ爺さん。彼が生前にしたこと、やったこと、言ったことが後の物語に続きます。派手な展開はなくても十二分に面白いですよね。今回は薬草任務から地質調査とか空き家調査、最後に遭難者の救出までで、そこに一件無責任でチャラそうで自己愛が強そうな優男に見えるけど(実際そうだけど)、ここのギルトで一番の凄腕で一本芯が通っているというキャラ造形も見事です。

【冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。3】【KAME】【ox】【GCノベルズ】【一人の子供が、冒険者になる物語】【小説家になろう】【サハギン】【麻薬】
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「かくして少年は迷宮を駆ける1」 あかのまに

2024-06-18 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「お前が、お前等が望まなくても俺がお前らを救ってやる。身勝手にな」
 ウルはお前の意思なんか関係ないとシズクに言い放った。

 あらゆる経済が迷宮都市を中心に回る、迷宮大乱立時代。
 名字を持たない流浪の民の少年ウルは、くそったれのオヤジのせいで窮地に立たされていた。金貨10枚の借金を残した父親があっさり死に、そのカタに妹アカネが売り飛ばされるというのだ。しかも、実はアカネは希少な精霊憑きで、買い取るには金貨1000枚の価値があるという。上級民でさえ一生かかって稼げるかどうかの金額だ。
 迷宮鉱山ケイカの管理権を手にしている金貸し屋【黄金不死鳥・クリード支部】を掌握したディズ・グラン・フェネクスに、ウルは自分が冒険者となり、黄金級に到達することで支払うと言い切ったのだが……。

 何も持たない最下層民なのに、なまじ孤児院で教育を受け、道徳を半端にたたき込まれてしまったために無法者にもなりきれない、良識を捨てられない少年が、迷宮攻略の中で自分の殻を破っていく物語。これだけ兄が頑張っているのに、幼い妹が「わたしおたかいな?」と若干他人事なのが泣かせます。ウル、がんばれと。
 イラストはきっちり描かれていて、派手な戦闘シーンからのんびり武器庫で装備を見繕うところまで、おっさんから美少女、モンスターから奇妙きてれつな武器まで網羅されてます。良いですね。
 普通に小説として語られてますが、ゲーム的に「迷宮鉱山ケイカ」とか場所が表示されたり、獲得した賞金やアイテムがゲームリザルト的に挿入されるのがちょいと違和感あります。この情報いる?と。

【かくして少年は迷宮を駆ける1~強欲の迷宮と借金まみれの新米冒険者】【あかのまに】【深遊】【MFブックス】【これは冒険の物語】【解せぬ】【賞金首】
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「魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。」 じゃがバター

2024-06-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「あんたら、何の集まりなんだ?」
 スイルーンに庶民の一般常識を教える係に雇われた傭兵タインは、ついにかねてより疑問に思っていることを聞いてしまった。名前まで聞いてしまったら、もう後戻りできない。

 魔王討伐から50年。勇者は戻らず、魔女は森に去り、神官は神殿に入り、俗世に残るのは剣聖と呼ばれるスイルーンだけだが、彼ももう72歳。彼はただ女神との約束が果たされる日を待つだけだ。
 だが、魔王討伐から半世紀を祝うパーティーのための衣装の仮縫いの日、スイルーンは白い光に包まれたかと思うと魔王討伐当時の姿に若返っていた。女神ラーヌの古い約定が果たされるときが来たのだ……。

 勇者パーティの一員だった剣聖は人生の終焉を前に、再びかつての旅路を辿る旅に出る事にした。なぜか女神の力で若返らされ、一人旅のつもりがだんだん同行者が増えてくるけど……という、『葬送のフリーレン』とかとプロットは似ているのに、その骨格にまとわりつく肉とか皮が別物なのでストーリーがまったく別物になっているという、創作論のお手本になりそうな1冊。
 じじいののんびり一人旅のはずが、仕事をほっぽり出してじじいがもう1人勝手に付いてきて、さらにかわいい孫娘たちが追いかけてきて、気がつけば勇者、魔女、神官、剣士に聖獣が加わって旅の仲間がそろってしまいます。そんな一行が、魔王と勇者の戦いが終わって(ほぼ)平和になった世界を旅していく物語です。
 イラストも巧いし、レイアウトも絶妙。中央、上半分が空白の構図でタイトルも何も入ってこないのは珍しくて、そこがなんともいえず良いのです。この先に進むのだというイメージがありました。

【魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。】【じゃがバター】【toi8】【富士見ファンタジア文庫】【『冒険』を終えたあとの方が、人生は長くて、楽しい。】【騒がしくも気ままな“二度目”の英雄譚】
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