付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ベン・トー9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー」 アサウラ

2012-10-31 | 食・料理
「自分には価値があると思えることなら、それは実質的な価値を持ちますわ。たとえ他者にとってどれほどくだらなくても、ね」
 他人が笑ってバカにするようなことであろうと、それが自分にとっては大切ならそれでいいのだと沢桔梗の言葉。それはこの話を通じての基本テーマだったりする。

 閉店間際のスーパーマーケットで、半額弁当を巡って闘う狼たちの物語の外伝短編集。(オチはないと最初に明言される)スケッチのようなものも含めた短編が11本に、いろいろ内容に問題の多い読書会が4本はさまったもので、9巻の後日譚やらクリスマス前後のエピソードやら、槍水仙が1年生のときの話とか。
 今回もスウィング感が半端なく、話がいったいどこに飛んでいくか、予想も出来ない乱れッぷり。フェティシズムあふれるエロの美学から瞬時にセガの先駆的すばらしさに話が飛ぶような脈絡の無さは最高。内容的に仕方がないこととはいえアニメ版では大幅にカットされてしまった、石岡くんらの回想とかセガとかダメ両親話がたっぷりで文句なし。
 ベン・トーって、こういうごった煮的なところが持ち味なんだよ。

【ベン・トー】【箸休め】【濃厚味わいベン・トー】【アサウラ】【柴乃櫂人】【スーパーダッシュ文庫】【庶民派シリアスギャグアクション】【水着ピンナップ】【エロ本】【早瀬の狼】【コミケ】【サンドイッチ】【獣道】【3Dゲーム】【初物】【るろうに剣心】


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「ちゃらぽこ」 朝松健

2012-10-30 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 最近、ホラーアクション系の時代小説が多くなった朝松健が、妖怪長屋ものを刊行。

 一本気な性格が災いして職を失い、親から勘当されるどころか殺されかけた旗本の次男坊・荻野新次郎。流れ流れたあげくに死んでしまい、本所業平橋の外れのボロ長屋に棲む妖怪たちに喰われかけ……。

 居合の達人・新次郎と気のいい妖怪たちが悪に立ち向かう話……かというと、これも微妙に違います。
 朝松健の妖怪時代小説としては、かなり初心者向け。極端にオカルトやグロに走らず、筋書きは単純、怪しげな登場人物が出てきたと思えば早々にネタバレで正体を明かして解説してしまい。
 時代小説ファンで、妖怪の出てくる話とか面白そうだねと探している人にお薦めしたらいいかも。

【ちゃらぽこ】【真っ暗町の妖怪長屋】【朝松健】【光文社時代小説文庫】【痛快時代活劇】【地上げ】【汚職】【玉藻】
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「妖魔戦線」 菊地秀行

2012-10-30 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 奇怪な魔力で次々と美女を襲う妖魔によって最愛の婚約者を殺された工藤明彦は、平凡なサラリーマンである。しかし、彼にはバカ親父から受け継いだ力があった。
 邪悪なるものを浄化する破邪の技、念法である……。

 菊地秀行の初期代表作である、妖魔シリーズの1作目。
 当時はSFテイストのエログロバイオレンスといえば菊地秀行と夢枕漠の二枚看板が鉄板。どちらもコバルト文庫にほんわりしたリリカルな作品を発表したりもしていましたが、すぐにエログロバイオレンスというかホラーアクションが主流となっていきます。
 ただ、菊地、夢枕、あるいはその傍流亜流が生み出したホラーアクションの主人公の中でも、この工藤明彦は一種独特な雰囲気を身にまとっています。なんといっても、「関西漫才師の西川某」に似ているという、その容貌。漫才で西川といえば、西川きよし師匠もいるし西川のりお師匠もいます。けれども「さて、私は誰でしょう」などと言い出すところをみると西川のりお師匠の方のようです。秋せつらや魔法医師メフィストら魔性の超絶美形が居並ぶ菊地秀行作品では珍しいタイプかもしれません。
 漫才師ではありませんが、これが西川貴教そっくりだったら女性人気ナンバーワン間違いないだろうに……と「CLOUD NINE」のTVCMでツクツクボーシwと歌う西川師匠の姿を見ながら思いました。
 でも、とにかく強い!
 敵も強いがこっちはもっと強い!!
 菊地秀行の代表シリーズといえば、魔界都市新宿もあるし、妖獣都市もあるし、吸血鬼ハンターDや八頭大シリーズもあるわけですが、自分はこの妖魔シリーズがいちばん好きかな。エロとグロとユーモアとアクションのバランスがいちばんしっくりしていると思います。とはいえ、初期のカッパ版の表紙イラストはちょっとぐちゃぐちゃどろどろで、かなり妖怪絵の方にシフトしていて怖いので、もう少しスタイリッシュな光文社文庫の方でそろえ直そうかなと迷っているところです。

【妖魔戦線】【菊地秀行】【カッパノベルス】【復讐譚】【南風さん】【阿修羅】
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「この空のまもり」 芝村裕吏

2012-10-29 | VRMMO・ゲーム世界
「おまたせしました。そしてもう、待たせません。二度と」
 翼P復帰の第一声。まるで超人田島のようだ。

 専用メガネやiPhoneを介在させることで、現実と電脳空間を同時に認識できる強化現実……電脳コイルの時代が到来した。
 だが、日本は技術的にその波に乗り遅れて衰退してしまっただけではなく、法整備すら旧態依然で放置状態。どこもかしこも個人情報や誹謗中傷、広告を無秩序に書き込んだタグだらけ。
 電脳空間的にはゴミだらけになってしまった、そんな日本を守ろうと動き出したのは、ニートやオタクや物心がついたときには強化現実が存在していた小学生たちだった……。

 美しい日本を守るために電脳空間で戦うニートの物語。帯にあるとおりの「清く貧しく理性的な愛国活動と就活と婚活の物語」。
 ただ、「愛国」というとイコール「右翼」ってことになりがちで、作品中にもそういう理解をする人は登場するけれど、ここで「国」とか「日本人」とは何かというところを、物語の中でしっかり定義づけしているあたりが芝村節。あやふやなままで話を終わらせないのです。

「どんな人にも善意はある。ただまあ、それは小さく、勇気が足りないだけで」
 混乱する大久保の街で、三浦大輔が知ったこと。 

 さわやかに読み終わってしまったけれど、状況的にも、今後の展望も、決して明るくないというか、はっきり言って「悪い」のだけれど、そこに「希望」もあるのですね。
 そして無名世界観的には、あの人がどちら系かは非常に重要なポイント。確定していないということは、どちらの可能性も残っているということですから。

【この空のまもり】【芝村裕吏】【有坂あこ】【ハヤカワ文庫JA】【理性的愛国を実践する電脳国防青春SF】【強化現実兵器】【猫】【ポンペイ】【大久保】【日本大好きオタク】【ネット右翼】【マージナル・オペレーション】【幼なじみ】【AI】【WTG】【妖精】
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「バッカーノ!1935-A」 成田良悟

2012-10-28 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 フィーロが新たに始めたビジネスは、新しく完成した地下カジノの取り仕切り。
 だが、そこに顔を出すのはアルカトラスから出所したばかりのラッド・ルッソとその一党、借金が払えなくてフィーロのところで下働きすることになったジャグジーたち。さらには脱獄したヒューイ・ラフォレットは用心棒としてあの男を雇い入れ……。

 不老不死の酒を呑んでしまったばかりに、死なない身体になってしまったギャングたちが、それについては特に悩むことなくバカ騒ぎや縄張り争いに興じる話の最終シーズン目前、1930年代最後の馬鹿騒ぎということで、今まであちらこちらのエピソードで顔を合わせていた者たちが、続々と集結。
 これからどんな騒ぎになるのかしらね。

【バッカーノ!】【1935-A】【Deep Marble】【成田良悟】【エナミカツミ】【電撃文庫】
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「青い空を、白い雲がかけてった」 あすなひろし

2012-10-27 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 今まで何冊も本やコミックを読んできたけれど、どうにも辛くて読み通せなかった本もあれば何度も繰り返し読む本もあります。
 また、繰り返し読んだ本にしても、10代のときは愛読したけれど、今ではとても読めないというものもあれば、今読んでも面白いというものもあります。
 前者の代表が小山田いくの『すくらっぷ・ブック』で、後者があすなひろしの『青い空を、白い雲がかけてった』。どちらも初出・少年チャンピオンでそろえてみました。
 どちらも好きだったし、今でも名作と思うし、タイプとしては似たような青春コメディなんだけれど、『すくらっぷ・ブック』はあまりに真っ直ぐすぎて、今はそれが青臭く感じられ気恥ずかしいんだよねえ。

 中には当然、「昔はつまらなかったけれど、今は面白い」というのもあるのだろうけれど、さすがに最初に「つまらない」と思ったものに再読の機会はまず無いので、それはまだ発見されておりません。
 今でもときおりふと口をつく「ちいたかたった、ちいたかたった」のかけ声はなんでしょうね?

【青い空を、白い雲がかけてった】【あすなひろし】【ビームコミックス文庫】
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「ソードアート・オンライン9」 川原礫

2012-10-27 | VRMMO・ゲーム世界
 その世界では、10歳になった時点で、生涯の仕事が決められる。
 キリトとユージオは、
 そして彼らの傍らには常に少女アリスの姿があったのだが……。

 最終エピソードの導入部の位置づけらしく、まるまる1冊がプロローグにして導入部。なので、この巻単独では評価に困ります。面白くなりそうではありますが。
 もともとインターネット上で無料公開されていた作品ですが、面白い、良いと思えば、後からでもお金を払うのは当然のこと。ささやかながらパトロン気分で喜んで払わせていただきます。

【ソードアート・オンライン】【アリシゼーション・ビギニング】【川原礫】【abec】【電撃文庫】【MMORPG】【WEB小説】
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「生徒会探偵キリカ(3)」 杉井光

2012-10-26 | 学園小説(ミステリ)
 ついに夏休み。
 といっても生徒会の面々は、生徒会室で執務に励む日々で、なんやかやと舞い込むトラブルもいつも以上。
 カンニング疑惑の捜査で風紀委員長が暴走気味と揶揄される中、生徒会探偵のもとに、カンニングに使われたと思しきプログラムの作成者を突き止めて欲しいという極秘の依頼が舞い込み……。

 巨大学園の生徒会で会計をしているキリカの探偵物語。
 学校を舞台としている日常系ミステリとして、今いちばんのおすすめ。対抗馬だった「子羊…」はちょっと「学校を舞台とした日常系ミステリ」の範疇から外れちゃったよね。
 主人公がたんに、“周囲の女子からモテモテなのに鈍感さからスルーしちゃってる、ちょっと良いやつ”ではなく、案外と黒いってあたりが指摘されて、ますます面白くなりました。

【生徒会探偵キリカ】【杉井光】【ぽんかん⑧】【講談社ラノベ文庫】【ハイテンション学園ラブコメ・ミステリ】【スクール水着】【水泳対決】
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「はたらく魔王さま!(6)」 和ヶ原聡司

2012-10-25 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「日常ってのは変わらないものなんかじゃなくて、目に見えない速度で確実に時間が動いていることを言うんだろうな」
 魔王の真奥の述懐。

 狭苦しい6畳1間に集ったのは、悪魔が2人に、大天使が1人、堕天使が1人。さらに勇者と聖職者と女子高生。
 どう見ても相容れぬ者たちが集うのだが、その中心は誰あろう、女子高生の千穂だった……。

 いちばん非力で、いちばん普通の千穂が誰よりもがんばって世界を動かそうと決意する無双な回。
 この話そのものも、同じような話が淡々と続いているようでいて、ちゃんと前に進んでいますね。日常の話とはこういうものなのかもしれません。むしろ波瀾万丈した挙げ句に振り出しに戻る非日常の話って目立ちますよね。そのあたりの分析は、きちんとしたら面白いかも。

【はたらく魔王さま!】【和ヶ原聡司】【029】【電撃文庫】【フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー】【自分の胸に聞いて】【銭湯】【バリスタ】【八王子】【誕生日】
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「高杉さん家のおべんとう6」 柳原望

2012-10-24 | 食・料理
「楽しいことを追求すると、新しいことが生まれる」
 研究もそうあって欲しいと風谷久郎教授。

 今回は、久留里の新生活編+高杉くんのダメっぷりに拍車がかかる1冊。もう涙無くして読めませんが、丸兄のバカっぷりに期待。

 確かに日間賀は「食」の場として面白い場所です。トラフグの水揚げが全国トップクラスなのに、かつてはそのほとんどが下関方面に送られていたわけで、それをいかに地のものとして売り出すかが鍵だったわけです。他にも伊勢エビ、タイラ貝、ミル貝、シャコ、ワタリガニと海産物が豊富な島なので、これをうまく独自の観光資源として売り出せるかどうかですね。
 知多半島も江戸から明治にかけては200以上の酒蔵があった酒処ですが、楽に儲かるからと他地方の大手酒造メーカーの下請けに甘んじているうちに斜陽。もう数社しか残っていない蔵は、どれも独自ブランド化に挑戦し続けているところだけ。
 文化と経済は裏表なんです。

【高杉さん家のおべんとう】【柳原望】【MFコミックス】【高校編】【小さな恋の終わり】【日間賀島】【文芸部】【サンドイッチ】【文化祭】【浴衣】【でした】【断捨離】【スズメバチ】【たこ飯】【おから】【“すべからく”の誤用】
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「クラインの壺」 岡嶋二人

2012-10-24 | ミステリー・推理小説
 アドベンチャーゲームブックの原作募集に応募したものの、規定枚数オーバーで失格となった上杉彰彦は、それをヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』のシナリオとして使いたいという謎の企業イプシロン・プロジェクトに200万円で売却した。
 そして完成したゲームのベータテスターとして、上杉は美少女・梨紗と共に仮想現実の世界に入り込むのだが……。

 ヴァーチャルリアリティといってもMMORPGではなく、パラグラフ形式のアドベンチャーゲームが念頭にあるところがミソで、サイコホラーっぽいミステリというかSFみたいなもの。プレイヤーが2人といっても、別々にプレイしていてリンクはなさそうですし。
 昨今のVRMMOをテーマにした作品の先駆けというより、ディックの『追憶売ります』の後継者というか現代版リメイクですね。『ニューロマンサー』の影響がほとんど感じられないのが信じられないくらい。

【クラインの壺】【岡嶋二人】【講談社文庫】【菅浩江】【胡蝶の夢】【アフリカ】【CIA】
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「銀のプロゲーマー2G」 岡崎裕信

2012-10-23 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 ゴルフのように賞金付きのゲーム大会が世界各地でおこなわれている世界で、マインスイーパーしか取り柄がないのにゲームエリート養成コースに推薦された少年の学園生活の第2弾。

 夏休みだが、帰省してみても面白いことがなかったので、早々に帰ってきてしまった秋煌はオンラインで戦争ゲーム三昧。
 ところがたまたま銀華に1勝してしまったものだから……。

 悪魔のゲームデザイナー登場篇。
 岡崎裕信はこういう頭のネジが飛んでしまったキャラが登場すると一気に面白くなります。『滅びのマヤウェル』なんか登場するヒロインのネジがことごとく飛んでました。
 そして、天堂銀華も結局は高校デビュー組だったわけですね……。

【銀のプロゲーマー2G】【岡崎裕信】【龍太】【スーパーダッシュ文庫】【MMORPG】【こなみ】【ゲームで友達ができるか】【飽和攻撃】
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「ソードアート・オンライン8」 川原礫

2012-10-22 | VRMMO・ゲーム世界
「一人では何も背負えはしない」

 『ソードアート・オンライン』2冊目の中短編集。
 キリトとアスナが知り合った直後に発生した、奇妙な殺人事件の顛末を描いた「圏内事件」。
 伝説の聖剣を手に入れるため、キリトたちのパーティーが急襲をかける「キャリバー」。
 そして、最初の1日にキリトが何をしていたかを描いた「はじまりの日」。

 ファントム・バレット編以来、出番のなかったシノンが登場して、仲良くゲームしていて良かったねと安堵。NPC食堂でラーメン(のようなもの)をすする団長もステキだ。
 阿良々木ハーレムではないけれど、キリトの周囲もハーレム化していて大丈夫かと思わないでもありませんが、気のあった面々と「冒険行くぞ」で「おーっ!」と応えられる関係がRPGの醍醐味なんですよね……。

【ソードアート・オンライン】【マザーズ・ロザリオ】【川原礫】【abec】【電撃文庫】【MMORPG】【聖剣エクスキャリバー】【アースガルズ】【雷槌ミョルニル】【クエスト自動生成機能】【ヨツンヘイム】
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『MUTCON15』 2012.10/20-10/21

2012-10-22 | イベント・コンベンション
 名古屋ローカルのSFイベントは東京や大阪と比べてちょっと異色です。
 なにが異色かというと、同じ系統で続いているのです。東京や大阪なら無数の団体が誕生しては発展したり消えたりしながらイベントを開催していますが、もともとのプールが大きくない名古屋では、そういうことをしていたら何もイベントができません。そのため、当初は複数の団体があったものの、それが統合し、先輩から後輩、さらにその下へと引き継がれながらイベントが開催されています。
 なので、ダイナコンとかミューコンとかイベントの名前が変わりつつも会場は固定だし、運営スタッフも参加者もほとんど固定という、安定しているというかなんというかな状態だそうです。ですから、小中学生の姿もちらほら見えながらも、参加者の平均年齢は高め。「60代の出席率が悪い。70代は全滅。80代はさすがに声をかけなかった」という話が出るくらい。



 私はSFファンダムの人間ではないので、すべて伝聞です。でも、今年は母体となる金曜会の設立50年の記念のイベントということで、そういう話があちこちで語られていました。

 受付開始直後の15時に、大学生となった長男といつもの会場、日進市の宗教公園五色園に到着。スタッフでもなんでもないのに、昔ここでさんざんイベントを主催していたものだから、フロントのおじさんに「今年もよろしくお願いします」とあいさつされてしまうのはご愛敬。
 17時からは立川三四楼さんのSFファンをネタにした小話で幕開け。
 開会式のあとは夕食。まぐろの刺身にローストビーフ、ほたてひもに酢の物、吸い物、カニグラタンというラインナップにビールとジュース付き。
 19時半には50周年のケーキに入刀。上品な生クリームとイチゴの美味しいケーキをみんなでシェア。
 あちらこちらのディーラーのブースや古書市を見て回り、よさげなものはその場で確保。相場的には状態美麗の文庫が100円、ハードカバーが200円といったところかな。紅茶屋さんでは100グラムで3000円クラスの高級茶葉を堪能。贅沢を言えば、お茶うけにスコーンかキューカンバーサンドが欲しいところです。
 さらにふらふらして、PXで白カビのサラミをつまみに酒を飲んで一服したら、今度は長谷川裕一の「すごい科学で守ります」。
 もともとは東映の戦隊シリーズを1つの時間線上の話として辻褄を合わせていこうという主旨の企画だったのに、昨今では本家が仮面ライダーともどもワールド統一を公式で進めていて、さらにはこれに宇宙刑事が加わるなど歯止めを知らず。そこで今回は守りから攻めに転じろと、次の戦隊を考えてみようとネタ帳の総ざらえ的なお話。戦隊物のルーツを遡っていくと、忍者部隊月光とかレインボー戦隊を飛び越えて、白浪五人男とか頼光四天王あたりまで遡ってしまうのですが、日本人の業の深さについてはこちらにもまとめがあります。海外にも円卓の騎士とか三銃士とかありますが、まだまだといった感じ。
 これを2時間堪能したら、いよいよオークション会場へ。



 名古屋のイベントは伝統的にオークションが盛んです。特に近年は全国のオールドファンが鬼籍に入られたり、高齢でコレクションの処分を始めていたりするので、出回る量も膨大。今回はマンガもかなり出ましたが、作者別・傾向別にダンボール箱に詰められ、「萩尾望都セット」とか「新旧MAPSセット」とか「ゲッターロボ各種セット」などと大放出。だいたい1セット100円、高くて1000円程度で落札されていきます。箱代が100円かかっているのでブックオフの買い取り価格以下のひどい話ですが、落札した方も宅急便で別送したり車に詰め込んで持ち帰らないといけないので必死です。未成年の少年少女たちが「さすがの猿飛」と「Gu-Guガンモ」の詰まった細野不二彦セットを競り合う姿には感動さえ覚えました。
 さて、小一時間の攻防の末に、数十箱のコミックの引取先が決まり、そのあとは書籍・雑誌の部の開幕。
 安値で落札される傾向の強い名古屋なので、さすがに20万円超のものは別にオークションに出すとのことでしたが、それでも100年前の押川春浪編集の「冒険世界」とか復刻版「海底軍艦」第1~4部までといったあたりがぞろぞろ。100年50年前はあたり前で、20年前あたりは「新しいやつ」という扱い。それが1000円前後で落札されそうになりますが、東京相場がしみ込んでしまった参加者が値をつり上げるので、さすがにそれなりのものは2000円前後に。それでも東京あたりではン倍ン十倍になるそうです。とにかく貴重なアイテムを広くばらまいて、参加しなかったものを羨ましがらせるためのイベントと化しています。



 自分はとりあえず紛失した分や買い逃した分の補充を兼ねて、「銀河英雄伝説」セットとか「めぞん一刻」セット、長谷川裕一セットなどをいくつか。あとは青心社の『クトゥルー』5冊セット、歳月社の「幻想と怪奇」を2冊購入。
 オークションが終わるともう3時。
 さすがに寝ておこうと布団の確保に動きますが、まだ部屋はがらがら。
 結局、別館に2部屋確保されていた寝部屋の方は、布団20組に対して使用されたのは6組。みんな企画部屋で雑魚寝か徹夜という感じだった模様。



 7時から朝食。8時から閉会式……というタイトなスケジュールはさすがに無理で、30分遅れのクロージングです。
 恒例のじゃんけん大会では、萌え米300グラム(ポストカード付き)を勝ち取って、満足して帰還。お金は少し使ってしまったけれど、なかなか有意義な週末でした。

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「新島八重」 久野潤

2012-10-21 | 伝記・ノンフィクション
 幕末に会津藩の砲術指南の家に生まれ、銃火器の扱いに秀でて育ち、米の一俵や二俵は抱えて走るような強力を持ち、合理的すぎる母親に育てられた女傑の生涯。
 でも、帯のあおり文句や表紙イラストを真に受けるとがっかり。
 まあ、評伝的なものなんだろうけれど、新島八重という女性についてより、彼女が生きた時代や地域について割かれる紙幅の方が多く、「八重が会津戦争のときに何をしていたか」より、「会津藩の人間がどうして常に国家の最前線ともいえる土地へ送り込まれ続けたか」とか「新撰組が誕生した背景」などの方が詳しいのですね。そりゃあ、人を語るのにその背景に触れないわけにはいかないけれど、タイトルからして主客転倒という感じがしなくもない。
 八重自信について語られ始めるのは、主に戦後の新島襄との結婚後からであり、赤十字活動、茶の湯への傾倒といったあたりから。虚実取り混ぜた活躍を見たければ、来年の大河ドラマを視ろということか……。

【新島八重】【とある会津女子の生涯】【久野潤】【晋遊舎新書】【同志社大学】【新島襄】【茶道】【若松城籠城戦】【戊辰戦争】【八重の桜】
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