付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ハードワイヤード」 ウォルター・ジョン・ウィリアムズ

2009-10-19 | 破滅SF・侵略・新世界
「わたしはいろいろなことをわすれてしまった。人間であるのがどのようなことかわすれてしまった。自分のからだが燃えていたところは覚えている。炎の中で脳が融けていくのを覚えている。助けてくれ、カウボーイ」

 21世紀の地球は荒廃しきっていたが、莫大な財と高度な技術を独占した軌道コンツェルンはスペースコロニーで栄華を誇っていた。一方、荒れ果てた大地の上では、超音速戦闘機や装甲ホバーに乗りこんだパンツァーボーイたちが略奪者の網をくぐり抜け、危険なブツを命がけで運んでいる。カウボーイと呼ばれる男もその1人だった。
 全身にハイテク機器を埋めこみ、航法コンピュータや攻撃システムと脳を直結した“ハードワイヤード”であるカウボーイは伝説的運び屋だったが、彼の属するグループがコンツェルン同士の抗争の煽りを食らって大きな被害を出してしまう。
 カウボーイは復讐のため、美人ハードワイヤードのサラと手を組んで仲間たちの力を結集するのだが……。

 サイボーグ化による肉体強化や性転換、データとして保存される記憶や意識、操縦者と一体化した航空機や武装車輌の戦闘と、サイバーパンクとしていちばん理解しやすい作品でした。似たような話がライトノベルやゲームで幾らでも出ていそうな気がします。
 この時期のハヤカワSFには珍しく末弥純の挿絵が多いのも特徴。空中戦と仕手戦が同レベルで繰り広げられるというあたりがサイバーパンクなのかもしれません。

【ハードワイヤード】【ウォルター・ジョン・ウィリアムズ】【末弥純】【サイバーパンク】【地獄のハイウェイ】【空中戦】【仕手戦】
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「パズルの軌跡」 機本伸司

2009-10-19 | その他SF(スコシフシギとかも)
「嫌なことは、自分を変えさえすれば、消えていくのです。自分が変われば、この宇宙の見え方さえ変わってしまう」
 フレッド・ポラックによる「ノアスの園」オリエンテーションの一節。
 世界を変えずに自分を変えるとは、いろいろな作品で語られている言葉だけれど、このシチュエーションでいわれると誤魔化しか逃げにしか聞こえないところが不思議です。

 凡庸なサラリーマンになった綿貫基一に、「ネオ・ピグマリオン」という量子コンピュータを利用したベンチャー企業が接触をしてくる。
 だが、というか案の定というか、彼らの目的は綿貫自身ではなく、彼が親しくしている天才美少女・森矢沙羅華だった……。

 神様を作ったり、地球脱出の移民船を造ったりと、さまざまな巨大プロジェクトをSF的発想で描いてきた機本伸司の新作は意表を突いて「失踪者の捜査」でした。
 確かに量子コンピュータは重要なキーワードではあるし、人工受精児の問題、脳科学の観点から見た「人間とは何か」というテーマなどハードな切り口はいろいろある作品ですが、機本作品に「巨大プロジェクト」がないのは寂しいなあ……。
 その分、「穂瑞沙羅華と綿貫基一」に話の焦点が集まってミステリっぽくなるのだけれど、どちらかというと続きの方が気になるかな。221Bのシェルターにやってくる依頼人を迎え入れるサラカ・ホズミとワタさんの物語(ハードSF)ってだけで、どんな風になるか気になるじゃないですか。

【パズルの軌跡】【穂瑞沙羅華の課外活動】【機本伸司】【D・K】【221B】【粒子加速器】【ディオゲネス・クラブ】【人工授精】【ルーツ】【アプラDT社】【生まれ変わり】【ツンデレ】
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