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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「鬼姫、異世界へ参る!(下)」 ジュピタースタジオ

2025-05-06 | 異世界転移・召喚
「あの世で弁慶に自慢でけるて!」
「だから誰だよベンケイって……」


 もしかしたらこの世界の東の果ての海に日の本があるのではないか。せめてそれを確認しなくては、これから先納得して生きてはいけないだろう。それでただ東をめざして旅を続けるが、大陸の東の果てはまだ開拓が進んでいない土地、かつて魔族の国があり、今は魔王が封印されている地であった……。

 鬼姫様の異世界放浪記、上下巻で大団円。確かに上下巻同時発行で正解。一気に読みたいもの。
 毎回のように繰り返される、角をさわるか?とか、カードを見せるくだりとか、読者が期待するお約束パターンをしっかり繰り返してくれるのが愉しいよ。アニメなら全13話1クールで観たいよね。さっぱりしているようで、日本を思い出してはめそめそする鬼姫様かわいい。

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「鬼姫、異世界へ参る!(上)」 ジュピタースタジオ

2025-05-01 | 異世界転移・召喚
「どんな仕事であろうと、真面目におつとめしておるのであればなんら恥ずかしいこととちゃうんじゃ」
 娼婦という職業が悪いと頭から決めつけるなと少女に説く鬼姫様。

 古都の外れの紅葉神社は、そこで祀られている鬼姫様が美少女だったらしいということでご当地キャラと化し鬼子ちゃんなどと親しまれ人気を博していた。ところが日本列島に襲来した巨大台風が直撃、小さな祠は濁流に呑み込まれてしまう。
 その祠に祀られていたのは数百年前にかつて実在したと言われる最後の鬼。祠を守ろうと一緒に流された地元消防団の男たちを救おうとした鬼姫は、気がつけば異世界に一人漂着していた。失われたはずの肉体さえ蘇って……。

 『北海道の現役ハンターが異世界に放り込まれてみた』のジュピタースタジオの新刊。異世界に放り出された鬼姫様がなんとか元の世界に戻れはしないかと、ハンター仕事でモンスターを討伐しながら手がかりを求めて旅をする物語。異世界とかファンタジーの常識なんか知らない鬼姫なので、出くわすモンスターを自分の常識で「これは鵺じゃな」「ぬらりひょんか」と言いつつ退治していきます。
 上巻は全7話。毎回毎回いろんなモンスターや事件に遭遇し、解決していく連作短編に近い形式。ちゃんと起承転結のついたエピソードが7編。細かいところや枝葉にまでは言及せず、本筋をさくさくテンポ良く進めていく、70年代のファンタジーっぽい読後感です。

【鬼姫、異世界へ参る!(上)】【ジュピタースタジオ】【あるてら】【Mノベルス】【遠き日の本へ帰還を目指す、心躍る流浪譚】【小説家になろう】【オーガ】【かまいたち】【切り裂きジャック】【マンティコア】【餓鬼】【ゾンビ】【アラクネ】【女郎蜘蛛】【サイクロプス】
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「ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた13」 桂かすが

2025-04-19 | 異世界転移・召喚
「最後に一つだけ疑問なのですが……神託があって光魔法も使えるならば、それはもう勇者ではないのですか?」
 神殿関係者含めみんながそういうのだ。何が何でも何が相手でも勝つ、そのためには努力は惜しまないマサルだが、それでもまだそこまで言い切る覚悟はできていない。

 帝国の王城に展開していた「転移術師を捕まえる罠」にかかり囚われの身となったマサル。貴重な転移術を使える魔法使いを抱え込みたい帝国はエルフ屋敷からの返還要求を無視し、マサルの存在自体を否定してしまう。
 もはや穏便に事を進めることはできないと、意を決したサティはマサルを奪還すべく単身で王城へと切り込んでいく。それはまさに剣聖の伝説をなぞるかのような、鬼気迫る戦いぶりであった……。

 サティ無双の回。
 あおり文句に「勇者の奪還と帝国とのその後……物語はひとつの終焉を迎える」と微妙な言い回しですが、書籍化はとりあえずここまでと巻末で告知されていました。残念。ウェブ連載は令和7年3月26日の更新で完結。あと3冊くらいだったのだけどなあ……。

 「小説家になろう」サイトの存在が広く知れ渡り、掲載作品の書籍化が始まった2000年代初頭、2013年連載開始の作品。23才無職が求職活動をしていて異世界に放り出される話で、今となっては定番の「異世界召喚」「大人のやり直し譚」「チートなスキル」「美少女に囲まれてハーレム」「唐揚げやマヨネーズ」「便利な土魔術」「収納スキルの便利な使い方」といった要素満載なんだけれど、そういうお約束要素が試行錯誤の中で練り上げられつつある時代の作品です。むしろ原典。
 この時期の代表作を並べていくだけでバリエーション豊富で楽しいですね。これらの作品から現在の作品群のひな型が生まれてきたわけです。

 2010.04『ログ・ホライズン
 2010.10『Knight's & Magic
 2011.10『薬屋のひとりごと
 2012.02『月が導く異世界道中
 2012.04『賢者の弟子を名乗る賢者
 2012.07『詰みかけ転生領主の改革
 2012.10『盾の勇者の成り上がり
 2012.10『ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます
 2012.11『無職転生
 2013.01『とあるおっさんのVRMMO活動記
 2013.01『戦国小町苦労譚
 2013.02『転生したらスライムだった件
 2013.02『ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた』
 2013.03『デスマーチから始まる異世界狂想曲
 2013.03『弓と剣
 2013.06『八男って、それはないでしょう!』
 2013.09『本好きの下剋上
 2013.10『サモナーさんが行く
 2013.10『銀河連合日本

 その黎明期ど真ん中にスタートした作品は、後のテンプレといわれる要素満載ながら、けっしてお手軽な話ではありません。リスクとリターンがきっちりした作品なのですね。たとえば、いくらスキルで強化されていてももともとの体力や技術が伴わなくてはウサギにすら負けるとか、美少女とお付き合いできるようになるけどその前にたいてい死にかけるようなトラブルに巻き込まれるとか。
 なので苦労せずしてウッハウハという話ではなく、やることやってたからなんとかなった……という冒険譚。順風満帆かと思われたクライマックスでも心機一転のまき直しで、1からの再出発ですがそこが魅力なんですね。根っこの部分がポジティブなので、ハラハラドキドキの山あり谷ありなのに意外とストレスフリーで読めたのです。

【ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた13】【箱庭世界ラズグラドワールド】【桂かすが】【さめだ小判】【MFブックス】【異世界冒険ライフ】【小説家になろう】【カクヨム】【鉄筋コンクリート】
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「王都の行き止まりカフェ『隠れ家』」 守雨

2025-04-04 | 異世界転移・召喚
 難病で死にかけていたマイを見舞った祖母は、彼女を異世界へと転移させた。一方通行だが、異世界転移による肉体の再構成が病巣を排除すると信じて。
 マイの祖母はかつて異世界から飛ばされてきた魔法使いだったのだ。
 かくして祖母の願い通り健康な身体を手に入れた結果、ひとりぼっちで東京から異世界に移り住むことになったマイには祖母から与えられた魔法の知識と魔力があったが、彼女が選んだのは食堂を開くこと。王都の行き止まりに小さなカフェ『隠れ家』を開いたが、そこにやって来たのは多忙で人づきあいも鬱陶しいというお城勤めの文官ヘンリーだった……。

 立地条件は最悪の目立たないところにある料理店が、たまたまふらりと立ち寄った役人のお気に入りになったことからさまざまな事件に巻き込まれるカフェ・ファンタジー。使うつもりはなくても、彼女の心のこもった料理と溢れ出る魔力が奇跡を起こします。

【王都の行き止まりカフェ『隠れ家』1~うっかり魔法使いになった私の店に筆頭文官様がくつろぎに来ます~】【守雨】【染平かつ】【MFブックス】【小説家になろう】【マイが美味しい料理と魔法の力で誰かを幸せにする物語】
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「異世界転移、地雷付き。12」 いつきみずほ

2025-03-20 | 異世界転移・召喚
 秘書のダンジョン権利を手に入れ、いよいよ本腰をいれて攻略を始めたナオたちだが、途中に遭遇した断崖絶壁に攻略方法の再考が求められていた。移動が困難な高く切り立った崖、細居桟道と難所が続き、【登攀】系スキルか道具の整備が必要と判断したのだ。そしてまたまたトミーに登山用具開発という無理をオーダーするのはお約束。
 そんなとき、彼らのもとに見知らぬ冒険者3人組が姿を現した。オークイーターの異名を持つ女性3人組〈翡翠の羽〉、つまりナオたちと同じ転移者である……。

 ウェブ連載とは大筋は同じでも細部は大きく違う書籍化の、書き下ろし外伝で青息吐息で冒険していた〈翡翠の羽〉がついに本編合流! ナオたちの優雅な日常に呆然としてます。

【異世界転移、地雷付き。12】【いつきみずほ】【猫猫猫】【ドラゴンノベルス】【小説家になろう】
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「逃亡賢者(候補)のぶらり旅2」 BPUG

2025-02-28 | 異世界転移・召喚
「ここを今日の野営地とする!」
 ハルはあたりまえのことをなぜか堂々と宣言した。

 国境を無事に越え、城郭都市ジャステッドで別行動していたフィーダとも合流したハルとイーズ。モンスターを食材にした屋台料理や都市の名所巡りと異世界観光を満喫していたが、気がつけばイーズの成人の儀式が目前に迫っていた……。

 拉致型召喚に引っかかった2人がとっとと逃げ出して異世界の旅を満喫する『逃亡賢者のぶらり旅』が無事に2巻! 2巻で以後のレギュラーメンバーが揃って、いよいよ本編突入!って感じ。だいたいメンバーが揃う回がいちばん面白いのですよ。戦隊ものなら最初の合体回とかね。
 今回ついにマンドラゴラが登場。やったね。けなげなマンドラゴラたちはかわいいぞ。イラストがちゃんとサトをかわいく描いてくれました。サトはマスコットキャラの決定版だと思いますよ。役立つし可愛いし。それからフィーダは今回も思った以上に髪の毛がふさふさでした!

【逃亡賢者(候補)のぶらり旅2~召喚されましたが、逃げ出して安寧の地探しを楽しみます~】【BPUG】【村カルキ】【カドカワBOOKS】【異世界のんびり旅行記】【小説家になろう】【カクヨム】【成人式】
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「通販で買った妖刀がガチだった」 日之影ソラ

2025-01-19 | 異世界転移・召喚
 大学生の宮本総司が衝動買いした模造刀は本当に妖刀だったらしい。試し切りをしたら空間が裂け、勇者召喚をしていた異世界の王宮に飛び出してしまう。こっちは訳が分からなくて混乱しているし、向こうは勝手に聖剣を手にした勇者が召喚されたと聞く耳を持たない。
 勝手に勇者認定された上に、彼が勇者ではないことを知ったエリカ王女に、偽の勇者だと王族を騙した罪は死罪だと脅迫され、総司は強制的に魔王討伐の旅に出ることになってしまった……。

 美人で有能ではあるけれど癖が強すぎるメンバーを引き連れた偽勇者が魔王を討伐する話。
 あまりヒロインの王女に共感できないのが残念。拉致誘拐系召喚のバリエーションだよね。

【通販で買った妖刀がガチだった1~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~】【日之影ソラ】【福きつね】【ブレイブ文庫】【一二三書房】【妖刀携えた偽勇者の魔王討伐冒険譚】
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「異世界リーマン、勇者パーティーに入る」 岡崎マサムネ

2025-01-18 | 異世界転移・召喚
「わたし、こまめに休憩したいです。たぶんわたしが疲れたときにはハヤシさんは限界を超えています」
 よく言った、シャリー。

 魔王退治に旅立つ勇者のパーティー。戦士、魔法使い、僧侶に加え、王様は新たに出現した異世界人をメンバーとした。異世界から来た林さんである。その職業はエイギョウ、ステータスは病人並。
 勇者アレクはこの人は絶対に外に連れ出したらイカンだろうと思ったのだが、パーティーはいつしか林さんなしでは回らなくなっていた……。

 ここ最近の追放もの・逆襲ものの大元をひっくり返したコメディ・ファンタジー。戦闘ではぜんぜん役に立たなさそうな支援職の重要性をパーティーはみんな知っている、むしろ痛感してる。感謝していると同時に、直接闘うこと以外のすべてをこなしている林さんが、どうしてここまでできるのかとびっくりし、さらにはそんなスキルを身につけた林さんの前職のありさまにドン引きする話。

【異世界リーマン、勇者パーティーに入る】【岡崎マサムネ】【てつぶた】【ガガガ文庫】【笑いあり、涙あり、営業のハヤシありの英雄譚】【営業】【名刺】【パイプ椅子】【ミャンマー出向】
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「冒険者酒場の料理人2」 黒留ハガネ

2024-12-21 | 異世界転移・召喚
「吟遊詩人は噂を物語に仕立てる。物語は語り継がれて伝説になる」

 ヨイシの店で提供される迷宮産品を素材にした料理の旨さは王都にまで噂が届き、その美食の殿堂で学びたいと王都から料理人がやって来た。宮廷料理煮込み部門担当の女性料理人、メルクーリ・ヴォン・ストラトニーケー。もちろん王命である。
 宮廷料理人は化け物か?
 それが彼女の技を観たヨイシの感想だ。彼が一度見せただけの仕事をきちんと覚え、魔法を駆使しながらもアッという間に再現して見せたのだ……。

 1巻ではヨイシが迷宮素材をいかに調理すべきか工夫している間に常連の新人冒険者、ユグドラとセフィが着々と迷宮を攻略していきますが、この巻ではユグドラとセフィがいよいよ最下層の主に挑むかという裏で、今度はヨイシの教えを受けたメルクーリが着々と宮廷料理人として出世していきます。この二重構造が面白いです。そして、冒険者アカルナニアがついに朴念仁に突きつけます。そのまま一気にいけそうなところを、クソボケ鈍感野郎が足踏みをしてしまったためにメルクーリが介入する余地を残してしまいます。物語は迷宮が攻略されたことによって一先ずの幕となりましたが、こちらについてはグダグダなまま引きずります。

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「異世界道楽に飽きたら7」 三文烏札矢

2024-12-08 | 異世界転移・召喚
 「働いたら負け」という言葉に強く共感する中年男だが、最近少し働いても良いかなという気がしている。それに身分証明書が無いと自由な旅人のつもりでいても、客観的に見ればただのプータローである。冒険者ギルドに登録すれば、余計なしがらみにとらわれず身分証明書が作れる!くらいの気持ちだったのだ。
 しかし、謎の忍者クロスケと名乗って登録に来た胡散臭い中年男、そもそも仕事をする気のない男を、冒険者ギルドの受付嬢ミランダは言葉巧みに誘導して塩漬け案件の依頼を引き受けさせていく。クロスケ様ならできる簡単な仕事だからと。
 ミランダのスキルは〈適材適所〉。そして彼女はクロスケことグリンの面倒くさい性格を見抜いていた。彼が目立たぬよう、仕事をさせすぎて機嫌を損ねて逃げ出さないよう、ギルド内外に彼の功績を隠して面倒ごとから守り続けているのだ……。

 冒険者ギルドへの依頼には難易度と報酬がつり合わないなど受け手のいない死蔵案件がちらほらあって、そういう依頼を巧みに処理していく受付嬢の物語。貧しい子供が親のための薬草を採りに森に行くから護衛してくれといっても危険ばかりで報酬はないも同然。でも放置は人情的にできないよね……という回です。
 中年男のチートぶりはいつもの通り。破格の高レベルに無尽蔵の高性能アイテムの数々。でも、それだけだと単純に「強いので全部上手くいきました」で終わってしまう話を、間にギルドの受付嬢を介在させることでくるんとひとひねりした展開となりました。まさに飽きさせずに読ませる回です。にんにん。

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「冒険者酒場の料理人」 黒留ハガネ

2024-11-27 | 異世界転移・召喚
『俺だって人並みに迷宮の謎に興味はある。だけど、料理人だから。
 冒険と謎解きは冒険者に任せる。料理人は料理をするだけだ』


 いつの間にか異世界に迷い込んだヨイシを拾ってくれたのは酒場の爺さんだ。日本で生まれ育ったヨイシには、食材も限られ、同じようなメニューばかりの生活には我慢できなかったので、調理法とか工夫しながら料理人として生きてきた。爺さんが死んで店を譲られて、よくよく考えた結論は「なにか迷宮で食材は手に入らないか」ということだった。
 もちろん迷宮でもなにかしら手に入るが、まともに食えるものはない。苦いばかりのクルミとか、美味しいけれど食せば必ず腹を下す桃とか、全身骨ばかりの魚とか、どこをどうやっても食えるものじゃない。
 それでもなんとか調理法を考えたら食べられないかと考える、ヨイシは根っからの日本人だった……。

 現代日本から迷宮最寄りの街に辿り着いた日本人が、せめて酒場に来た客にぐらいは旨い飯を食わせてやろうと迷宮食材で作る料理に挑む物語。そして、そこで拾った幼女が看板娘となり、腕っ節はからっきしのヨイシに代わって店を守る用心棒となっていきます。前半でいかにその食材が食えたものじゃないか語りたおし、後半で調理法を見つけて一気に解決してメニューに加えていくあたりミステリのフォーマットですね。

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「サムライ転移3」 四辻いそら

2024-10-28 | 異世界転移・召喚
「多少大きいと思うが、世間はそれを八重歯と呼ぶ」
 クロスはルナマリア・ガルサ・ノクテュルヌ=ヴルヴィエガレ(以下略)が吸血鬼だと自称するのを信じない。ただの虚言癖の浮浪児ではないのかと。

 アンデッド系の魔物暴走(スタンピード)が発生。クロスたちも強制依頼で前線へ。しかし、これだけの屍人がいるならその宿主たる吸血鬼もいるはずなのだが、1体も見当たらないまま事態は収束し始める。
 だがその後、街中でクロスは吸血鬼を自称する少女にまとわりつかれる。お前も魔族ではないのかと……。

 戦国時代の日本から異世界に転移したお侍さんが、どこかのんきな現地の冒険者や騎士たちを生ぬるい、覚悟が足りんとプリプリしながら、自分は自分でアンデッドって斬っても死なないし、腕が落ちても大丈夫だし、うちにも試し切り用にひとつ欲しいなあとか言い出してみんなに怒られる回。
 イラストは極上。今回も派手な戦いから星のように降る大魔法まで、見所をキッチリ絵にしてます。

【サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~3】【四辻いそら】【天野英】【MFブックス】【武士道を曲げずに異世界を斬り進むサムライの血気盛んな冒険譚】【カクヨム】【骨丸】
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「奴隷に鍛えられる異世界生活2」 路地裏の茶屋

2024-10-22 | 異世界転移・召喚
「いいかい大事なのは押して押して押しまくることさね。転移者は向こうの価値観があるからなかなか私に手を出さなくてねぇ」
 ギルドマスターのナノウは、前回に召喚された勇者の1人と結婚したが、体格が小さくて幼女にしか見えない小人族には自分からは手を出さなかったという。

 交易の町に辿り着いたシンヤたちは冒険者登録をし、少しずつ生活の基盤を固めていくが、そんなとき狩り場で同じ学校から召喚された女子生徒たちと遭遇した。しかし、彼女らはシンヤに同行している女性2人が奴隷と知って斬りかかってきた。奴隷を買って好き放題に女性の尊厳を踏みにじる不埒者と断定されたのだ。
 しかし、ファスら少女たちはいわば身を守るために奴隷としてシンヤと同行しているのであり、むしろシンヤが自分たちから離れないよう腐心し、さらにはひそかに精力剤の材料を集め、転移者との性生活に詳しいナノウから女子会であれこれ知識を仕入れていたのだ……。

 勝手に異世界召喚され、役に立つスキルが無いと牢に放り込まれた少年のサバイバル冒険譚の2巻で、今回は駆け出し冒険者篇。懐かしい人と再会したり、ギルマスが訳ありだったり、担当になった受付嬢がどう見ても幼女だったり(でも強い)、死にかけた女性を救ったりと大忙しです。
 そして着々と強くなって出番を増やしているのが蜘蛛のフクちゃん。すっかりヒロインにカウントされてます。わお!

【奴隷に鍛えられる異世界生活2】【路地裏の茶屋】【東上分】【TOブックス】【人生崖っぷち少年が美少女奴隷と、拳で切り拓く最強への成長冒険譚】 【奴隷犯罪】【宝石商】【チンパン人形】
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「逃亡賢者(候補)のぶらり旅」 BPUG

2024-10-12 | 異世界転移・召喚
「あの世界の神は、2秒をゼロにすることを決めたのです」
 それは単なる巻き込まれではなく、2人を救うための神の御業。

 異世界の勇者召喚に巻き込まれた中学2年の市川和泉と32歳になる食品バイヤーの高田遥だったが、召喚の場にいたラズルシード王族に胡散臭さを感じるや、勇者だ賢者だともてはやされる高校生集団から離れてこっそり逃げ出した。
 ところで、そこで気がついたのだが、和泉は全治3ヶ月と言われていた怪我がすっかり治っており、一方、遥は年齢が14歳に若返っていた……。

 誘拐同然に異世界召喚され、そのについでに若返った元サラリーマンと中学2年生の凸凹コンビが、この見知らぬ世界で安住の地を探そうと旅に出て、行く先々で事件に巻き込まれたりご当地グルメを堪能していく異世界道中記。行く先々できちんと相談して目標を立てて、それを遂行しようとなかなか計画的なのにいろいろ想定外も起きて、それを含めてのぶらり旅なのです。
 1巻は登場人物は少なめでメインキャラの掘り下げが中心です。商社のバイヤーで食品には詳しくてうるさい高田遥ことハルは、計算高くて口八丁で人を丸め込むタイプ。一方、市川和泉ことイーズは幼い容姿と感情で人をたらし込むタイプ。魔法もだんだん使えるようになっていきますが、なによりこの対人スキルが彼らの異世界旅の原動力です。そして、彼らの護衛兼保護者のフィーダはパーティの常識担当。ベテランの隊商護衛だけれど、美味いものを食べさせると蘊蓄が止まりません。それに、出番は少ないけど性格の良すぎる女神様も良いキャラです。最小の出番で最大限のアピールです。

「あなたたちの歩む先に、この世界ディオセルネの神、ノルケレシアの加護と祝福を!」

 自分の2023年最推しのウェブ小説『逃亡賢者(候補)のぶらり旅』、無事に書籍化されました。イラストも良い感じですよ。長身の無精ひげだけれど、ちょっとフィーダが良い男過ぎるかも。もつと髪が薄いと思ってました。

【逃亡賢者(候補)のぶらり旅~召喚されましたが、逃げ出して安寧の地探しを楽しみます~】【BPUG】【村カルキ】【カドカワBOOKS】【異世界を満喫し尽くす、気ままなのんびり観光旅】【小説家になろう】【カクヨム】【王城の七不思議】【赤福】【ベイマックス】【現地神情報】【麩菓子】
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「奴隷に鍛えられる異世界生活」 路地裏の茶屋

2024-08-29 | 異世界転移・召喚
「わかりません。なんか出ました」

 唯一の家族であった祖父を亡くし、借金で家屋敷さえ失った吉井真也は自殺を図るも、そのタイミングで異世界に召喚されてしまった。ダンジョンの活性化や周辺国の侵略などに悩むラポーネ国では、国を挙げて各地で勇者召喚を試みられていたのだ。
 しかし、真也のクラスが愚道者、拳士であって武器防具が装備できないと分かると、召喚を担当したアグー子爵は役立たずと彼を座敷牢に放り込んでしまう。他の貴族らへの対面から、側仕えは用意しても呪いに蝕まれた奴隷少女。食事に毒を混ぜて、余所の勇者らと対面する前に殺してしまおうというのだ。
 真也は奴隷少女ファスや蜘蛛のフクちゃんと共に脱獄準備を進めるのだが、その頃、彼の親友たちも勇者として召喚されていた……。

 主に牢獄周辺で話が進む1巻です。オリジン・スパイダーのフクちゃんが頑張ってます。

【奴隷に鍛えられる異世界生活】【路地裏の茶屋】【東上分】【TOブックス】【人生崖っぷち少年が美少女奴隷と、拳で切り拓く最強への成長冒険譚】
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