「クリスタル・レイン」 トバイアス・Ｓ・バッケル

『あと何個か菌があればこの子たちの世界は変わる』
　p.284。パソコン時代らしい「金」の誤植だと思います。面白い話ですが、良いところでこんな単語がぽろりと出てくると、首をひねって手を止めてしまいます。菌が２・３株あったところでストリート・チルドレンの生活は変わらないと思います。

　異星人テトルの襲撃を阻止するため、惑星ナナガダがワームホールを破壊して300年。孤立した文明は19世紀レベルにまで後退していたが、地上に到達していたテトルは入植した人々の神として君臨してアステカと呼ばれる帝国を築き、人類植民地と戦い続けていた。
　その膠着状態が破られようとしていたその頃、天空より落下した物体から、１人の男が姿を現した……。

　カリブ的文化を継承したアフリカ系植民者中心の世界に、ケツアルクワトルを信仰するアステカ帝国が攻め込むというシュールなシチュエーションのミリタリー冒険活劇でした。
　高度な文明が一気に退化し、スチームパンク的な状況でかろうじて踏みとどまった世界の戦争絵巻。そう考えると『パーンの竜騎士』と似たようなシチュエーションですね。ただ、最後に出てきたアレが意外に小さくてしょぼん。続編に期待。

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「裂けた旅券（パスポート）(6)」 御厨さと美

「（年齢というものは）財産としちゃ才能よりも確かなものさ。手に入れるには、それなりに手間どるがね」
　公式鑑定人テオドル・デュザーヌの言葉。天才が育つには死ぬまでかかるが、凡人でも育てばそれなりに手に入るものはあると。

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「鳥は鳥であるために」 野島けんじ

「吼え癖のある犬を怒鳴りつけても余計に吼えるだけだからね、時間の無駄さ」
　口の悪いメイド、夕香の言葉。

　「呪受者」は特殊な能力と引き換えに宿主になんらかのダメージをもたらす「呪」に憑かれた者のこと。その力ゆえに社会からは忌み嫌われ、マスコミだって率先して煽る風潮があるため、呪受者はその力をひた隠しにして暮らしていた。
　石南花学院に通う高校生・小笹志朗は呪受者であることを隠して生きていたが、その能力をかぎつけた有力者、水星家に拉致されてしまう。そこで知り合った水星家の末娘・小鳩から行方不明の兄・倭を探すのに協力して欲しいと頼まれるのだが……。

　式神使いとかスタンド使いみたいな物語のバリエーション。
　終始、相手の都合も気持ちも考えない図々しくて横暴なキャラばかりで辟易。みんな星になってしまえばいいのに。ひたすらポジティブな志朗の妹、菓の登場がもう１頁遅れていたら本を投げ捨てていたところ。
　別にタイトルナンバーは打ってなかったけれど、最後まで読んで話が全然終わってないなあと思ったら、しっかり続いてましたね。全４巻で完結ですか。

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