今年も読んで面白かったものを順番にまとめて総括。
こうして見ると「この話って、刊行始まってまだ1年足らず?」と思うものもしばしばです。
ウェブから読んでいるせいでしょうけれど。
『戦国小町苦労譚』 夾竹桃
農業系女子高生が戦国時代にトリップして信長配下となり、異世界DASH村を建設する話。
チートな異能力に頼らない内政系タイムトリップもの。そのうち外交とか戦争とかにも関わるけれど、すぐに村に戻って開墾と農産物の開発に取り組む日々です。
話も進んで、もはや女子高生という歳ではなくなりましたが……。
『人狼への転生、魔王の副官』 漂月
瞬く間に辺境都市を陥落させた魔王軍。しかし、その指揮官である人狼ヴァイトは、元人間の転生者だった。魔物の力に人間の知謀……。
主人公は自己評価が低すぎで、その一方で周囲は勘違いから実際以上に高評価され、結果としてギャップがすごく大きくなる話。文章の緩急が効いていて、さくさく話が進むのに急いでる感じがしないのは、場面転換が巧いからかな。
自分は所詮小物で副官レベルがお似合いと卑下しながら、実は彼が倒れれば国一つ倒れかねないのに自覚のないのに周囲が苦労する物語でもあります。おとなしく後ろで控えてくれれば良いのに、すぐ突貫、特攻しちゃうから、周囲の気苦労はいかほどのものか。
『銀河連合日本』 松本保羽
地球に突如飛来した異星人たち。しかし、ファーストコンタクトを求めてきた異星人たちは、なぜか日本にしか興味を示さなかった……という展開で、アニメやコミックなどサブカルが第一の理由にならないのは珍しいかも。
真っ当なファーストコンタクトSFというより、人類が銀河文明に加わっていこうとする過程でぶつかる政治問題を描いたラブストーリー。やっぱ日本人ってスゴイよな! 陛下万歳!という話ですが、ウェブ版では最後の最後に(それまでみそっかす扱いだった)アメリカ海兵隊が見せ場をかっさらっていくのがツボ。
『銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。』 Y.A
宇宙の事故で時間と空間を飛び越えて戦国期の地球に漂着した日系宇宙人の運送業者一家が、宇宙船で沈没船の財宝を引き上げて売り払ったり、オーバーテクノロジーな機械で干拓事業をごり押ししつつ、信長配下として着々と勢力拡大していく話。
よくある戦国内政系チートものなんだけれど、メリハリがしっかり効いていて痛快。戦いは火力だよ、アニキぃ!とばかり長距離殲滅戦志向で戦場を蹂躙していきます……。
『火輪を抱いた少女』 七沢またり
ひとことでいうと、血に飢えた愛少女ポリアンナ。
この作者のシリーズは、可憐な少女が巨大な武器を振りかざして無双する、そして少女のものの考え方が常人からかけ離れていて理解困難というのが特色で、その少女がリアルに血肉を持った存在なのか、単なる悪夢が見せた幻影なのか、物語が進むうちに境界線が分からなくなり、最後には周囲の多くを巻き込んで歴史の彼方に消えていく姿が魅力です。
『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』 宮地拓海
騙した相手に殺された詐欺師が異世界に転生したものの、そこはウソをつくとカエルにされてしまう世界だった……というところから始まる異世界コンサルティング物語で、巧妙な語り口で繰り返されるノリツッコミが印象的。最近読んだコンサルものの中ではいちばん面白く、物語としてもまとまってました。
ウェブ連載で気になっていた部分も書籍版でさりげなく差し替えられていて、安心して読めました。
『アラフォー賢者の異世界生活日記』 寿安清
異世界の神様の手抜きで死んでしまったVRMMOゲーマーが、アバターの能力そのままに異世界転生。“黒の殲滅者”と異名を取るほどのトップキャラが異世界でやりたい放題、日々平穏を求めて好き勝手に生きる冒険譚。
異世界転生系のテンプレ要素をことごとく詰め込みながら、無理矢理感がないまま面白く読めてしまう、ジャンルを体現した1冊。
『嫌われ者始めました』 くま太郎
もはや定番となった「ゲームの悪役に転生しちゃった」話の男性版。悪女なら才色兼備で性格だけ悪いというのが定番だけれど、男なのでひたすら貧相。よくあるのは設定だけ貧相とか普通といっているのにイラストは格好良いというやつですが、安心してください。イラストも終始貧相です。
そして真面目に将来設計して民草のために仕事してるのに、なぜかヒロインたちには毛虫のごとく嫌われますが、ここで気にせず、むしろ距離を置いてもらった方が好都合と黙々と働く主人公のワーカーホリックぶりが格好良いです。
『セーブ&ロードのできる宿屋さん』 稲荷竜
初心者冒険者を短期養成で一人前に育ててくれるという噂の宿屋さんの物語。
ネタ的にはタイトルでモロバレなんだけれど、これを天丼で押し込んでこられると物量で負けます。ハッピーエンドなので笑って読めるけど、「とりあえず死にましょう」「たすけて」「死ななければ殺人じゃありません」「たすけて」と客観的に一言でまとめると「静かなる狂気」。そして「豆」。
『武姫の後宮物語』 筧千里
新しい王の後宮に呼び集められた美姫たちのうち、最年長のヘレナがなぜか皇帝のお気に入りに。皇帝の年増好き疑惑が持ち上がる中、権謀術策が蔓延する後宮の勢力争いに巻き込まれたヘレナは、何も考えず、ただ肉体の鍛錬に専念していた。
本来の彼女は淑女ではなく、次期将軍候補と謳われるほどの武勇に優れた戦士だったのだ……という、脳筋ヒロインの武勇譚という、熱血スポーツ根性後宮小説。
最近ではアルファポリスとかカクヨムもありますが、あいかわらず「なろう系」の書籍化が多いですね。
でも、こういうウェブ小説は、最初は面白くても長編化していくうちにルーチンに陥り、「水戸黄門」化くらいならともかく「くれくれタコラ」「ウルトラファイト」全話視聴くらいの単調な展開になりがちです。新しい街や迷宮に到着、大暴れでモンスター退治、戦利品を持ち込んで驚かれる、みんなで日本食を愉しむ……の繰り返しとか、いつまでもいつまでも戦争を繰り返していたり。
そういう中で書籍換算して5冊10冊と飽かせず続けられる作品は本当にスゴイと思います。
願わくば、そういう作品はすべてそれなりに売れて完結できますように。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。
こうして見ると「この話って、刊行始まってまだ1年足らず?」と思うものもしばしばです。
ウェブから読んでいるせいでしょうけれど。
『戦国小町苦労譚』 夾竹桃
農業系女子高生が戦国時代にトリップして信長配下となり、異世界DASH村を建設する話。
チートな異能力に頼らない内政系タイムトリップもの。そのうち外交とか戦争とかにも関わるけれど、すぐに村に戻って開墾と農産物の開発に取り組む日々です。
話も進んで、もはや女子高生という歳ではなくなりましたが……。
『人狼への転生、魔王の副官』 漂月
瞬く間に辺境都市を陥落させた魔王軍。しかし、その指揮官である人狼ヴァイトは、元人間の転生者だった。魔物の力に人間の知謀……。
主人公は自己評価が低すぎで、その一方で周囲は勘違いから実際以上に高評価され、結果としてギャップがすごく大きくなる話。文章の緩急が効いていて、さくさく話が進むのに急いでる感じがしないのは、場面転換が巧いからかな。
自分は所詮小物で副官レベルがお似合いと卑下しながら、実は彼が倒れれば国一つ倒れかねないのに自覚のないのに周囲が苦労する物語でもあります。おとなしく後ろで控えてくれれば良いのに、すぐ突貫、特攻しちゃうから、周囲の気苦労はいかほどのものか。
『銀河連合日本』 松本保羽
地球に突如飛来した異星人たち。しかし、ファーストコンタクトを求めてきた異星人たちは、なぜか日本にしか興味を示さなかった……という展開で、アニメやコミックなどサブカルが第一の理由にならないのは珍しいかも。
真っ当なファーストコンタクトSFというより、人類が銀河文明に加わっていこうとする過程でぶつかる政治問題を描いたラブストーリー。やっぱ日本人ってスゴイよな! 陛下万歳!という話ですが、ウェブ版では最後の最後に(それまでみそっかす扱いだった)アメリカ海兵隊が見せ場をかっさらっていくのがツボ。
『銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。』 Y.A
宇宙の事故で時間と空間を飛び越えて戦国期の地球に漂着した日系宇宙人の運送業者一家が、宇宙船で沈没船の財宝を引き上げて売り払ったり、オーバーテクノロジーな機械で干拓事業をごり押ししつつ、信長配下として着々と勢力拡大していく話。
よくある戦国内政系チートものなんだけれど、メリハリがしっかり効いていて痛快。戦いは火力だよ、アニキぃ!とばかり長距離殲滅戦志向で戦場を蹂躙していきます……。
『火輪を抱いた少女』 七沢またり
ひとことでいうと、血に飢えた愛少女ポリアンナ。
この作者のシリーズは、可憐な少女が巨大な武器を振りかざして無双する、そして少女のものの考え方が常人からかけ離れていて理解困難というのが特色で、その少女がリアルに血肉を持った存在なのか、単なる悪夢が見せた幻影なのか、物語が進むうちに境界線が分からなくなり、最後には周囲の多くを巻き込んで歴史の彼方に消えていく姿が魅力です。
『異世界詐欺師のなんちゃって経営術』 宮地拓海
騙した相手に殺された詐欺師が異世界に転生したものの、そこはウソをつくとカエルにされてしまう世界だった……というところから始まる異世界コンサルティング物語で、巧妙な語り口で繰り返されるノリツッコミが印象的。最近読んだコンサルものの中ではいちばん面白く、物語としてもまとまってました。
ウェブ連載で気になっていた部分も書籍版でさりげなく差し替えられていて、安心して読めました。
『アラフォー賢者の異世界生活日記』 寿安清
異世界の神様の手抜きで死んでしまったVRMMOゲーマーが、アバターの能力そのままに異世界転生。“黒の殲滅者”と異名を取るほどのトップキャラが異世界でやりたい放題、日々平穏を求めて好き勝手に生きる冒険譚。
異世界転生系のテンプレ要素をことごとく詰め込みながら、無理矢理感がないまま面白く読めてしまう、ジャンルを体現した1冊。
『嫌われ者始めました』 くま太郎
もはや定番となった「ゲームの悪役に転生しちゃった」話の男性版。悪女なら才色兼備で性格だけ悪いというのが定番だけれど、男なのでひたすら貧相。よくあるのは設定だけ貧相とか普通といっているのにイラストは格好良いというやつですが、安心してください。イラストも終始貧相です。
そして真面目に将来設計して民草のために仕事してるのに、なぜかヒロインたちには毛虫のごとく嫌われますが、ここで気にせず、むしろ距離を置いてもらった方が好都合と黙々と働く主人公のワーカーホリックぶりが格好良いです。
『セーブ&ロードのできる宿屋さん』 稲荷竜
初心者冒険者を短期養成で一人前に育ててくれるという噂の宿屋さんの物語。
ネタ的にはタイトルでモロバレなんだけれど、これを天丼で押し込んでこられると物量で負けます。ハッピーエンドなので笑って読めるけど、「とりあえず死にましょう」「たすけて」「死ななければ殺人じゃありません」「たすけて」と客観的に一言でまとめると「静かなる狂気」。そして「豆」。
『武姫の後宮物語』 筧千里
新しい王の後宮に呼び集められた美姫たちのうち、最年長のヘレナがなぜか皇帝のお気に入りに。皇帝の年増好き疑惑が持ち上がる中、権謀術策が蔓延する後宮の勢力争いに巻き込まれたヘレナは、何も考えず、ただ肉体の鍛錬に専念していた。
本来の彼女は淑女ではなく、次期将軍候補と謳われるほどの武勇に優れた戦士だったのだ……という、脳筋ヒロインの武勇譚という、熱血スポーツ根性後宮小説。
最近ではアルファポリスとかカクヨムもありますが、あいかわらず「なろう系」の書籍化が多いですね。
でも、こういうウェブ小説は、最初は面白くても長編化していくうちにルーチンに陥り、「水戸黄門」化くらいならともかく「くれくれタコラ」「ウルトラファイト」全話視聴くらいの単調な展開になりがちです。新しい街や迷宮に到着、大暴れでモンスター退治、戦利品を持ち込んで驚かれる、みんなで日本食を愉しむ……の繰り返しとか、いつまでもいつまでも戦争を繰り返していたり。
そういう中で書籍換算して5冊10冊と飽かせず続けられる作品は本当にスゴイと思います。
願わくば、そういう作品はすべてそれなりに売れて完結できますように。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。