付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「たま◇なま~生物は、何故死なない?」 冬樹忍

2009-10-09 | 破滅SF・侵略・新世界
 氷見透は宇宙人に改造されてしまった。
 3億年の昔より地球を観察していた鉱物生命体・由宇は、地上での活動のために人間の姿を借りて自分の分身、より優れた子孫を人間社会にばらまくことで世界を支配せんとしていた。そして透に次世代作成、つまり子作りへの協力を強いるのだが、由宇のかりそめの身体はせいぜい小学校高学年程度の少女の姿だった……。

「生命とは、好奇心だ。知り得ぬ事を知る為に、まだ見ぬ物を見る為に。お前らは、その為に、この地に生まれ、海より上がり、この星に満ちて、そして、日々、戦い続けているのだ。終わりのない、残酷な戦いを」
 「不完全な生命体である人間は何故自ら死を選ばないのか?」と問いかける由宇の結論。 そして由宇の最大の敵は<自死>。もとは同じ鉱物生命体の一部でありながら、ガン細胞のように浸透し、自らを滅ぼそうとする存在だった……

 第1回ノベルジャパン大賞の大賞受賞作で、このあと2年半の間に7作目まで出ているので、それなりに人気はあるのかな。話としては、美少女エイリアンの押しかけ話で、アマゾンではわかつきひかるの『AKUMAで少女』と同じテーマということで紹介されていました。2巻目以後はハーレム・シナリオに分岐したようです。
 デビュー作なので仕方がないのだろうけれど、やはり荒削り。前半の異文化コミュニケーションによるドタバタしたかけあいと、後半のドロドロした殺し合いが乖離した不快感を感じました。特に、ひき逃げ犯がほぼ無罪放免になったくだりには、こんな子供だましの言い訳が通じると思いこむ犯人はいるだろうけれど、実際に通じさせてしまう司法・警察制度は腐っているというか非常識。せめて(陳腐だけれど)金持ちだか有力者の関係者ということで横車が通ったくらいにはしてもらわないと、その時点で主人公の境遇に同情する以前に興ざめです。
 数を増やして社会の中から支配していくという侵略方法や、人間型形態を取った時点でかなり記憶が欠落している設定、核兵器に破壊と殺戮以外に使い道があるのかという会話のあたりは面白かっただけに残念。

【たま◇なま】【生物は、何故死なない?】【冬樹忍】【魚】【鉱物生命体】【交尾】【二次性徴】【生殖器破損】【核兵器】
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「アイリータの生存者~恐竜惑星2」 アン・マキャフリー

2009-10-09 | 怪獣小説・怪獣映画
 反乱が起きた惑星アイリータ調査隊は洞窟に避難し、隠した冷凍睡眠装置に入って難を逃れるが、救助に来たセク族トールによって再び覚醒させられたのは43年後であった。
 カイやヴェアリアンら調査隊の生き残りは、さまざまな恐竜が跋扈する世界で反乱者たちの子孫から隠れつつ、事件の真相を探り出そうとするが……。

 恐竜惑星シリーズと銘打ち、確かに金色の翼竜やら大型竜が登場するのだけれど、恐竜小説にならないんですよね。なかなか恐竜がストーリーの中心に来ない。事件の発端は惑星の外にあり、惑星の外で解決するといった展開で、まだパーンの竜騎士の方が恐竜小説じゃないかと思います。
 面白くはあったけれど、別に恐竜の星でなくても良かったよねえ。それとも何か必然があるのかしら……と思いつつ、もう出ない3巻を待ち続けているわけですが、こうポツポツと刊行してちゃ関心も薄れますよね。3巻が刊行されるときは装幀を変えて3冊同時刊行にしてくれたら、最初からもう一度読みます。
 銀河の有力種族でありながら、時間スケールが人間と違うシリコン生命体なので「どうぞ御勝手に」状態のセク族の設定がステキだ。だんだん巨大化し、死ぬ頃には山かピラミッドかという状況になるってのもさぞや壮観でしょうね。

【アイリータの生存者】【恐竜惑星】【アン・マキャフリー】【叛乱】
コメント (2)
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