付け焼き刃の覚え書き

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「ライトノベル完全読本」 日経BP社

2004-08-03 | エッセー・人文・科学
 『ライトノベル完全読本』を買いました。
 表紙に書かれた記事のラインナップだけ見ていると、通りいっぺんを押さえているだけとも見えるけれど、実際に1つ1つの記事をチェックしてみれば、ライトノベルというジャンルをあらゆる角度から万遍なくフォローしようとしていることが分かります。
 ベスト10とかセレクションは当然として、イラストやデザインのこと、『ヤマト』や『ガンダム』といった初期作品の位置づけ、年表を中心に見た変遷、ライトノベルの黒歴史、テーブルトークRPGやPBMが与えた影響、一般文芸とライトノベル……とりあえずムックとしてこれだけ押さえていれば文句はつけられません。
 でも、学園ジャンルの紹介で、『マリみて』と『まぶらほ』と『ガンパレ』と『ブギーポップ』が並んでいるところに、ライトノベルの奥深さを見ました。

 ただ『ライトノベル完全読本』は評判も売れ行きも良さそうだけれど、一方で序文に対する反論も多いようです。まあ「歴史」とか「正当な評価」なんて不要じゃないかという人もいるのです(人によって条件がついたりつかなかったりするけど)。
 世の中、いろんな意見があるなあとは思うけど、僕としては両方とも必要派。そりゃあ、「今」の「中高生」の読者だけを対象とするなら不要かもしれません。
 でも、まだライトノベルの誕生とされる時期からの読者がまだ現役でいる今のうちにまとめれば、「歴史」もかなりちゃんとしたものができあがります。ライトノベルだからといって中高生が中高生の時期にしか楽しめないものばかりとは限らないということも、ちゃんと評価されるようになり、それが伝わるようになれば、もっと多くの人に(門前払いせずに)読んでもらえるんじゃないかと期待します。
 そしてそういう主旨で編纂された本だと思うので、それは何ら文句をつける場所はありません。
 ろくなストーリーもキャラクターの描写もなく、ただ擬音だらけでエッチなシーンばかりの本が売れてもそれはそれで否定するもんじゃありません。求めている人がいて、それが売れれば結構なこと。たとえば中高生の時期の男性だけに人気のある作品だってかまいません。ただ自分が良いと思う作品がたとえば「中高生男子」には人気が出そうになく、それなのに「中高生男子」向けのレーベルなんかに居たとしたら、せめて(売れ行きでは無理としても)作品として評価し、なんらかの形で次回作を書く場を与えてもらって欲しいと思うし、中高生男子「以外」の読者にも手に取って欲しい。
 それが本音だなあ。自分の好きな作家には売れてもらいたい。次が読めるから。
コメント
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