【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

夜の酩酊逃走世界 !

2006年05月24日 01時11分01秒 | 夜の時代 【深夜倶楽部】 
  

  【 逃走 】

「あの二人はなぁ 兄妹なんやでぇ 」
「ぇ! そぉかぁ やっやっぱりそっそぉなんかぁ! 」
「うんっ 永い事離れ離れやったけどぉ 
      やっと逢えたらぁなぁ、なさぬ仲のふたりやったなぁ」

っと おかぁはんっ 言い終わると茶碗酒呷りました。
自分 どぉ相槌を打っていいか判りませんでしたから おかぁはんと同じ様に
自分の湯飲み茶碗 呷りました。

意識の底の酩酊は、もぉトックニ胸の中で広がっていました。
酔いは酒ではなくって、遣り切れなさの想いが広がるからでした。

  

今夜の騒ぎを見届けた自分たちは、狂乱的大騒ぎの店から出る時 
真二に言われて赤い爪が案内してくれた、
店の奥の従業員の女の子達が着替たり 休憩するロッカールームにある裏口から 
 暗い路地裏に出ました。
裏口のドアは最後に 真二が内側から閉めました。
ドアを閉めるとき、真二とつねちゃんが言い争います。

「えぇかっ ぜんぶわいがしたんやからなっ なんも言うたらあかんぞっ! 」
「真ちゃんっ! わてが刺したんやでっ自首するんはわいやんかぁあ!ぁ 」
「アホッ! 言うなっ! 言うたら殺すぞっコラッ! 」

真二の眼つきと面顔、 何かの覚悟の気持ちが表情に表れていました。
其の覚悟の為 目尻が吊り上って頬 引き攣っていました。 

 そやけど口元は、微笑んでいました。

「真ちゃんっ ゴメンなぁ~!カンニンやでぇ!! 」
「えぇっ 分かってるさかいに気にするな なっ 」

ドアっ 金属同士がぶつかる音響き 閉まりました。
赤い爪 暗闇路地に吸い込まれる軋る様な嗚咽と共に 鉄の扉に縋ってました。

それから暫くすると パトカーと救急車ののサイレンや
警察関係の人々の怒号が表でし始めました。
自分たち、表に回って野次馬の群れに混ざりました。

つねちゃん、自分の背中に顔を伏せて泣いてました。
自分の背中 涙で濡れ続けました。 
堪える事無く赤い爪 何時までも啼いていました。

真二さん店から連行される時 自分達の方を観ました。頬ぉ蒼褪めてます。
其の後ろから清美が 婦人警官に肩を抱かれる様にして連れられていました。
顔 白いハンカチで覆われていました。
自分、もぉ何も考える力も失せ パトカーの屋根でクルクル回る真っ赤な回転灯 
ボンヤリ眺めるだけでした。

 其の時っ!
 怒号が湧きます 警察車両の群れの向こうから 突然っ!

警官や刑事らしき人々が何かを叫び話ながら一つの流れになって 
 何かを追う様に表通りを走ります。

「逃げたっ! 追わんかい! 」
「路地やっ 其処のやぁっ! 」

つねちゃん、自分の背中にくっついて小声で言いました。
「ぇ! 真ちゃん逃げたん? 」
「!っ するつもりなんやあっ! 」 自分マサカと思いながら
「やぱりかぁ ! 」

つねちゃんと自分 慌てて警察の群れを追いました。

真二っ 勝手知ったる夜の路地裏に逃げ込みました。

自分 真二が往くのはあそこしかないなぁ 
っと 走り出しながら思いこぉ考えました。

 止めん方が えぇんやろかなぁ  っと。


 永い夜が終わる始まりでした



「かきちゃん あんたかて人ぉ殺したい想ぉうたことないんかぁ 」
おかぁはんが細腕で一升瓶持ち上げ こっちの茶碗に傾けながら聞いて来ました。
「ぉかあはん あるでっ なんぼでもあるがなっ 」
自分茶碗に細く注がれる酒を視 寝ろと誘う酩酊を堪えながら言いました。


 夜の硝子戸隙間風の啼き音 やっぱし悲鳴みたいやなぁ ってね
  自分が啼きたいのを堪えて 想いました。