【 rare metal 】

此処 【 rare metal 】の物語や私的お喋りの全部がね、作者の勝手な妄想ですよ。誤解が御座いませんように。

不義な逢瀬の別れ。

2009年03月12日 12時00分18秒 | 無くした世界 
  




 (画像はイメージ。上画像は昔の面影もなき新駅)





夕暮れの駅は 絵師でも描けない刹那き風景だと想いました。



人もまばらな寂しきホームにふたり佇めば、ふたりが握りあう手と手。

冷たさな粘る汗ばかりでした。


屠所に向かうかとな列車が、静かにレール軋ませホームに停まりました。

連なった車両の扉がいっせいに音たて開けば、握りあう手の最後の一握り。



俯くあなたが離れゝば、想わずに空(クウ)をつかみかける我の指の間には。

夕焼けからの涼しき風が纏います。


あなたが俯きながらはなれ、細き背を見せ乗り込む後姿。


胸の心の中でも、頭の意識の中でも、圧倒する溢るゝもの。

確かに、溢るゝもの。

我の忸怩たる想い切りのなさぉ責めてきました。


薄暗さな列車の窓辺に手を置けば、あなたが涙濡れした頬載せる。

卑怯なボクの眼を、あなたの哀しみな瞳は覗き込むようにしていました。


ふたりの軌跡を残したいのだろう、最後にあなたは。

ボクの手の甲に爪を立てる。


(今の時代について往けずに想い出に耽れば。

いつまでも忘れがたくにも、我の脳裏に鮮明に浮かぶは。

あの時のあなたの目 白さなトコロが鮮明にとでした。

更ける夜に、暗き天井見つめ眠れぬときにも、鮮明に。

ナニかをしていても知らずに想うて、鮮明に。)


観れば膚に小さき赤い球が湧き生まれ、血の一筋があなたの手のひらに堕ちました。


あなたの爪先。 限りにと膚に減り込む痛み堪へれば。

心の片隅にて アヤフヤなるものに溺れそぉなボクを迷いし幻惑させました。


我の手の甲、温かき唇にて優しく吸われました。

血の筋には紅い舌先が這いました。


夕陽とおなじ口紅の赤が、薄暗さな中でも赤が。

ボクの手の甲を染めました。



善きひとを裏切る、互いに快楽ぉ求めあいし逢瀬は。

寸の安らぎもなきだから、高まる胸の時めきが悪さなと。

悪事かと問い詰める。


キツク。キツク。



確かに想う背徳感を意識し、無限にと追い求め願いしは。

他ノ者で求めやれぬ隠微なる性に堕ち、深くと嵌る出来事。



別れの間際まで、あなたの気持ちが判るから。ボクはモットっと望んでいた。

だけどベルが鳴る、ふたりぉ早く引き裂けと。


列車が、もぉぅ、先はないと想い知らせるように。

じれったいほどユックリとホームを離れゝば、それだけなんでしょうか。

いつまでもとなくも、早くお忘れするんでしょうか。


嘘で糊塗し続いた勘違いはお間違いだったと。

何処かにと探すことの、忘却のお終い。


ボクが動く列車と添い走れば、あなたは窓辺より身ぉのりだし手を伸ばす。

掴もうかと我がのばす指の先、微かに触れました。


情けなくも、いつまでも、想い切れない最後の触れ合いでした。




老境にかかりし今。

閉じる瞼の裏に観るは、哀しみ塗れな涙顔。




いつまでも いつまでも