JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
鹿島鉄道 特別補充券
昭和56年に鹿島鉄道鉾田駅で発行された、特別補充券です。
黄色JPRてつどう地紋の券で、親会社である関東鉄道のものと大変酷似している様式です。
鹿島鉄道は昭和54年4月に関東鉄道鉾田線が分社化して独立した路線でしたが、営業収入の大半を占める航空自衛隊百里基地への航空燃料の輸送業務が廃止されると経営状態が悪化し、親会社である関東鉄道や地元自治体からの援助で何とか維持されてきました。しかし、つくばエキスプレスの開業によって関東鉄道常総線や高速バス路線の利用客激減の影響で経営支援が中止されると、路線維持は不可能であるという結論に達し、平成19年3月に全線廃止されてしまっています。
同社の特別補充券は石岡駅を除く有人駅各駅に設備されていたようですが、補片や補往は石岡接続のJR連絡乗車券としてであれば発行していただけましたが、真偽のところは定かではありませんが、常陸小川駅の駅員氏に拠りますと平成10年代になってから特別補充券については本社に返納されてしまったということで、晩年は発行していただくことは叶いませんでした。
JR東日本 七日町駅発行 会津鉄道連絡乗車券
昭和63年8月に只見線七日町駅で発行された、会津鉄道連絡乗車券です。
桃色JRE地紋のB型一般式券で、東京印刷場で調製されたものとなっています。着駅の田島高校前駅は会津鉄道に転換されてから設置された駅であるためか特活が用いられておらず、字数が少ないのに特活が使用されている会津田島と比べて左右に幅が広く、大変バランスの悪いレイアウトになってしまっています。
また、小児断片の「田島高校前」についても特活が用いられていないため、かなり窮屈な感があります。
社線への連絡乗車券については経由欄に接続駅が記載されているのが一般的ですが、この券については接続駅の表記が無く、一見すると自社完結券のように見えてしまいますが、東京印刷場では連絡乗車券の場合は運賃欄の下に小児運賃の記載をするようになっていますため、小児運賃の記載から辛うじて連絡乗車券であることが分かります。
乗車経路は七日町~(只見線)~西若松~(会津鉄道)~会津田島となっています。七日町駅は只見線の会津若松~西若松間の途中駅ですが、只見線の列車よりも、隣駅である西若松から会津鉄道に乗り入れる直通列車の方が本数の多い駅となっており、西若松駅で乗換えて乗車券を買いなおすことが困難であるために連絡券が設備されていたものと思われます。
ちなみに、七日町駅は地名は「なのかまち」ですが、駅名は「なぬかまち」と読み、漢字は同じでも、地名と駅名の読み方が異なる駅です。
鉄道省 天王寺駅発行 工地紋乗車券
昭和23年(?)4月に天王寺駅で発行された、森ノ宮ゆきの片道乗車券です。
まだ終戦後の物資が乏しい時代の券で、わら半紙のようなペラペラの券紙の千切り券となっています。
注目すべきは地紋であり、桃色の工地紋となっています。
工地紋は戦時中の混乱期の昭和19年に広島鉄道局で考案された印刷工程を簡素化するための省略地紋で、広島局の他に大鉄局・門鉄局・名鉄局で使用され、戦後になって仙鉄局でも使用されていたようです。
工は鉄道省のマークを組み合わせて地紋としたものであり、鉄道省以前の国有鉄道の所管官庁が工部省であったことを由来としています。
(鉄道省のマーク)
この「工」のマークは現在でも鉄道用地の境界線に建てられている杭に刻印されており、その姿を見ることができます。
ひたちなか海浜鉄道 那珂湊から勝田ゆき乗車券
今年の1月、ひたちなか海浜鉄道那珂湊駅で発行された、勝田ゆきの硬券片道乗車券です。
日本交通印刷調製のB型券で、桃色ひたちなか海浜鉄道自社地紋の一般式券となっています。
同社は数年前から那珂湊駅において硬券入場券と乗車券を発売しています。入場券は大人用1種類のみですが、乗車券は那珂湊から各運賃帯までの一般式の大人・小児用券となっており、区間によっては小児専用券も設備されています。
今回ご紹介いたします勝田ゆき券ですが、少々感じたことがありましたのでエントリーさせていただきました。
まずはこちら、数年前の鉄道フェスティバル会場で買い求めた勝田から那珂湊ゆきの券をご覧ください。通常勝田駅では硬券の発売はしていないようですが、これは同社が硬券を作成した際にコレクション用として発売されたものです。
勝田駅発の券を見ますと、発駅である勝田駅の表記や発行箇所名・小児断片のすべてが「〇社 勝田」と表記されています。
同社の勝田駅のりばはJR勝田駅島式ホームの1番線にあり、ホーム上に金網で隔てられています。そして、その入口に精算所小屋があり、両社の精算改札および自社の出札業務が行われています。
JRからの乗換でない旅客が外からの乗降の際は、JRの出札口もしくは自動券売機で乗車券を購入し、一旦JRの改札口を入って1番ホームへ行き、再度同社の精算小屋で乗車券を提示して乗車します。
「〇社 勝田」駅というのはまさにこの精算小屋のことを指していると思われ、JR勝田駅とは違う「社線の駅」として区別されているものと考えられます。
このような表記方法は全国のJRと駅構内を共有している事業者が採用している方法で、社線独自の出札窓口で発行される乗車券類に使用されています。
では、那珂湊駅発行の券に戻りましょう。
同社の列車は「〇社 勝田」駅で終着なのですが、この券の着駅は「勝田」と表記されており、「〇社」表示は一切ありません。
この券に「〇社」表記がないのは、「〇社 勝田」駅で列車を降りた旅客がJRの改札口まで行くことができることを表現するために「勝田」と表記されているのでしょうか?
それとも、ただ単に印刷段階で「〇社」表記を付けなかっただけ、あるいは付け忘れたのでしょうか?
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