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「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (131) 長尾家 44

2024年07月05日 09時28分30秒 | 甲越軍記
 蔵王堂式部は遠巻きの敵に向かい「蔵王堂式部最後の働きぞ、我と思わんものは此の首取って高名を挙げよ」大音声で言うと同時に馬首巡らせ、取り巻く敵の中に走り入った。
あっという間に敵七騎を馬もろとも薙ぎ倒し、敵は蔵王堂一人に薙ぎたてられて後ずさりする中から土岐四郎五郎が大身の槍をしごいて式部めがけて突きかかる
式部はこれを軽くあしらい、大太刀で槍を跳ね上げると同時に四郎五郎の胸板をただ一刀で切り割った
四郎五郎たまらず馬から落ちて絶命する、すぐに新手が式部に挑んできた
黒股金左衛門、砂を蹴立てて式部の馬足を狙って切りかかるを、式部は眼を怒らせて「小賢しき小冠者の振る舞いや」と馬を躍らせて近づくと同時に黒股の鎧の上帯をつかみ目より上に差し上げる
金左衛門の弟、黒股雲平が兄を救わんと主従八騎で懸かってくるのを式部は「カラカラ」笑い「欲しくば汝らに得させるべし」と言って、金左衛門を頭上でくるくると回し大地にガバッと投げつけた
大力の式部にたたきつけられて黒股は目と口から血を吐いて、たちまち死んでしまった
この勢いに怖れ、黒股雲平ら主従は兄を肩にかけて引き返す。
それを見ていた犬養市郎は韋駄天の如く馬を走らせ一文字に式部に討って懸かる
式部はこれに大太刀を合わせ、上段下段と戦っていたが式部は僅かの時の間に十騎に近い敵と戦いすべて討ち果たした、さすがに無双の勇士と言えども疲労は隠せず、息も上がる
しかも敵はかわるがわるやって来て挑む、今や犬養の攻め来る太刀に苛立ち、打ち太刀を受け損じて肩口を割られ、ついに馬からどっと落ちれば犬養飛び掛かって首を獲る。

平六郎は高台にあって従士と共にしばしの休息をとっていたが、眼下にて蔵王堂の討死を見ると、もはや鋭気を養っている場合ではない「さらば最後の一戦をするまで」と主従二十余人は雲の如き敵勢の中に面も振らず喚き攻めかかる
その声は猛虎の吠えるが如し、薙ぎ立て薙ぎ立て戦えば、宇佐美の兵も西に崩れ、東に崩れ討死手負いは数知れず
されども、これを見て大将宇佐美駿河守が采配を振ると、平六郎俊景の従士は一人残らず討ち死にしてしまった
だが俊景は一騎になっても暴れまわったが、宇佐美の勇士、神辺惣藏、大原甚内、藤代孫市が槍を揃えて平六郎の正中めがけて突きいれるが、俊景は
神辺の冑を真っ向から切り割り、続いて大原の胸板を切って落とす、これを見て藤代は引のいた

ここに長尾景虎の先手番、奈弥辰蔵二十歳「この敵討って高名せん」と宇佐美の手勢に加わり、このありさまを見ていたが、槍を挙げて駆け出で俊景めがけて突きかかる
俊景は太刀を電光の如く閃かし、しばし打ちあいが続いたが、辰蔵の槍は次第に乱れ今は危うく見えた
けれども辰蔵は退く気配もなく、踏み込み踏み込みわが身の危険も忘れ身命捨てて戦えば、ついに俊景の馬の太腹を突き刺した
流石の名馬もこれにはひとたまりもなく、ドッと倒れた、俊景もたまらず馬上から真っ逆さまに落ちれば「得たり」と辰蔵が引き組み、上になり下になり三度まで逆転したが血気の辰蔵はついに疲れ果てた俊景の首を掻き切って、大音声を挙げた。
こうして三条と府中の長尾家同士の越後の騒乱は俊景の討死によって幕を閉じる
平六郎方の八条、風間らは蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、多くは照田父子の三条城に逃げ帰った。



 


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