大飯原発3、4号機の再稼働を巡り、小浜市で1日に行われた国の説明会は、4月26日夜に行われたおおい町での住民説明会とは異なり、全住民対象ではなかった。この日、小浜市内で大飯原発に最も近い集落を訪れ、住民の声を聞いてみた。(酒本友紀子)
小浜市の内外海(うちとみ)半島にある泊(とまり)地区。約30世帯の多くが漁業や渡船業を営む。小浜湾を挟んだ約4キロ先に大島半島があり、こぢんまりとした港から大飯原発の姿が見えた。
父の代から約50年間、渡船業を続ける深田幸宏(よしひろ)さん(51)は「放射能漏れ事故が起きた場合、風向きからして、おおい町よりも放射能被害を受ける可能性が高い」と不安そうに話し、妻の君代さん(47)は「政府の人には泊地区に足を運んでもらい、原発からの近さを認識してほしい」と訴えた。
福島の事故後、泊地区では住民の間で原発の話題が絶えないという。息子夫婦と孫2人の計5人で暮らす70歳代の女性は「事故があったらどうしよう」と不安が頭から離れず、「事故が起きても、両親の墓を残したまま避難はできないし……」とつぶやいた。孫やひ孫の世代まで、ここで無事に暮らせるのか――。住民の不安は広がる一方だ。なのに、住民に対する説明会はない。約40年前、大飯原発建設時に反対した当時の区長、波濤(はとう)弘さん(79)は悔しそうに言い放った。「事故が起きて国に頭を下げられたとしても、元に戻らんもんは戻らん。誰も責任が持てんでしょう」
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説明会は小浜市大手町の市働く婦人の家で、市議会と約50の各種団体代表らで構成する「原子力発電小浜市環境安全対策協議会」のメンバーらを対象に行われ、再稼働は慎重に判断するよう求める意見が相次いだ。
出席者は「原発がなくてもやっていける社会をつくることにコストをかけるべきだ」「京都や滋賀など隣接地の理解も得るべきだ」などと意見を述べ、「全住民が対象の説明会を開いてほしい」という声も。
市議会の清水正信・原子力発電所安全対策特別委員会委員長は「再稼働ありきの説明会だ。住民の安全、安心と電力需要を天秤にかけるべきではない」と訴えた。説明会の後、出席していた女性(67)は「再稼働を不安に思って質問された方の気持ちもよく分かる。急いで再稼働してほしくないが、働いている人の気持ちも分かるので難しい問題」と複雑な心境を語った。この日の模様は録画し、2、3の両日にケーブルテレビで放送する。