福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題で、安全性を技術的観点から検証している県原子力安全専門委員会(委員長、中川英之・福井大名誉教授)の報告書原案の概要が、複数の関係者への取材で分かった。東京電力福島第1原発事故後、同委などの求めで関電が大飯原発で実施した安全対策を列記し、3、4号機を「安全」とした政府判断を追認。原子力規制庁の早期設置なども「要望事項」として盛り込んだ。内容を微調整した上で、来週にも会合を開いて審議し、報告書を西川一誠知事に提出する。西川知事はその後、県議会やおおい町長の判断を聞き、再稼働容認を決断する。
同委員会は原発事故直後の昨年3月25日に会合を開き、地震・津波や原発の被害状況、県内各原発の対応などを把握。その後も委員と県幹部による安全対策検証委員会を設置し、原発の安全対策を検証してきた。
関係者によると、報告書原案には、これらの一連の議論や安全対策を示し、(1)再稼働を巡って政府が決定した「安全性の判断基準」を容認する(2)大飯3、4号機はこの基準を満たしている(3)要望事項として、規制庁の早期設置や、海外の原発の規制状況を政府が調査し今後に反映させるよう求める−−などの内容が盛り込まれたという。
政府の判断基準は、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚が4月6日に開いた会合で決定した。野田首相らは同13日、3、4号機は基準を満たしていると確認。翌14日に枝野経産相が福井県を訪れ、西川知事らに説明して再稼働への理解を要請した。
県は要請を受け、委員会で政府の判断基準などを検証すると決定。同16日から議論を重ね、委員らが大飯原発の現地視察も行った上で、今月8日に実質的に審議を終了し、報告書のまとめ作業に入っていた。原案は、委員会事務局の県原子力安全対策課が、公開で行われた議論や委員らからメールなどで直接聞いた意向を踏まえて作成した。
野田首相は30日、関西広域連合から再稼働への理解をおおむね得られたと判断し、福井県とおおい町の了承を得てから最終判断する意向を表明した。県は既に、委員らの6月上旬の予定を把握し日程を調整中で、来週にも会合を開いて原案を審議する。
大飯原発が立地するおおい町では、町議会が今月14日に再稼働容認を議決。時岡忍町長も従来、再稼働に積極姿勢を示しており、委員会の報告書を待って最終判断する方針。県議の大半も、毎日新聞の取材に対して、条件付きながら再稼働を容認する考えを示している。【畠山哲郎】
(5月31日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/select/news/20120531k0000e010193000c.html
大阪市の橋下徹市長は31日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働について、「基本的には認めない」としていた前日の発言を翻し、「事実上、容認する」と明言した。ただ、「期間限定(の再稼働)は言い続けていく」として、秋ごろをめどに運転停止を求める考えを示した。
橋下市長は市役所で記者団に、「上辺ばかり言っていても仕方ない。事実上の容認です」と語った。これまで大阪府・市のエネルギー戦略会議などでは、再稼働しなくても電力は足りるとする趣旨の議論が展開されてきたが、「足りるというのは個人の意見だ。きちんとしたプロセスで確定した数字は前提にしなければならない」とも発言。政府が今夏、関西で15%の電力不足が生じると試算していることを踏まえ、「この夏をどうしても乗り切る必要があるなら、再稼働を容認する」と述べた。また従来、「安全が不十分な状態での再稼働はあり得ない」と繰り返していたが、「机上の論だけではいかないのが現実の政治だ。最後は有権者に判断してもらったらいい」と説明した。
ただ、「2年も3年も動き続けるのはあってはならない」と期間限定であることを強調し、「大飯原発は例外」として、他の原発の再稼働は認めない考えを示した。家庭用の電力自由化やピーク時の料金値上げなど「電力供給革命が起こった」と、自身らの取り組みの成果も示した。
橋下市長は30日、関西広域連合が再稼働について政府に「限定的な」判断を求める声明を出したことについて、「(再稼働は)政府の判断で、僕は基本的には認めない。(夏だけ稼働させるという)動かし方もあるんじゃないかという問題提起だ」と述べていた。【茶谷亮】
(5月31日付け毎日新聞・電子版)
http://mainichi.jp/select/news/20120531k0000e010167000c.html
全国の僧侶・牧師ら約八十人が三十日、県庁を訪れ、関西電力大飯原発3、4号機(おおい町)の再稼働に反対する要望書を提出した。
原子力行政を問い直す宗教者の会(事務局・兵庫県)の呼び掛けで、浄土真宗、浄土宗、曹洞宗、キリスト教など宗教、宗派を超えて参加。要望書は同会県世話人の中島哲演さん(70)=小浜市、明通寺住職=が、岩永幹夫県原子力安全対策課長に手渡した。
福島県南相馬市から、永平寺町に家族で避難中の僧侶田中徳雲さん(37)は「福島で何が起きたのか知ってほしい」と語った。岩永課長は「原発の怖さをイメージしながら(事故発生の可能性を)抑え込もうとしてきた。怖さがあるから止めるのではない」と、福井県の安全確保の考え方を説明。宗教者側は「自然災害は人間の想像を超える」「“綱渡り”の安全対策は国民を危険にさらす」と訴えていた。 (尾嶋隆宏)
(5月31日付け中日新聞福井版・電子版:同日付け朝日・福井版なども報道)
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20120531/CK2012053102000019.html
http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000001205310002
週内にも原発相来県、早期判断へ
関西広域連合が30日、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を事実上容認したことを受け、福井県の手続きは一気に加速しそうだ。細野豪志原発事故担当相は早ければ週内にも来県し、大飯原発の特別な監視体制などを県に説明する見通し。県原子力安全専門委員会は近く会合を開いて報告書をまとめるとみられ、西川知事は県会と時岡忍おおい町長の意向を聞いた上で、早ければ6月上旬には再稼働の是非を判断する見通しだ。
同日夜の関係3閣僚との会合で野田佳彦首相は「原子力は引き続き重要。立地自治体の同意が得られれば、最終的には私が判断する」と明言。原子力の重要性や再稼働に向けたリーダーシップを国民向けのメッセージとして発信するよう求めていた西川知事の意向に応えた形だ。
関西圏の理解が得られず県内の手続きも膠着(こうちゃく)状態となっていたが、関西広域連合は声明で「福井県は常時厳しい監視体制を取ってきた。関西の発展は、こうした取り組みがなければあり得なかった」と明記。県の石塚博英安全環境部長は「関西では原発について今まで議論はなかった。(原発の電力が関西を支えてきたことに)思いが至ったということ」と述べ、関西の理解はおおむね得られたとの見方を示した。
県は、大飯原発の特別な監視体制について細野担当相からじかに説明を受ける方針。その後、県原子力安全専門委が開かれる運びとなるが、国が示した安全基準の枠組みを超える範囲で審議をほぼ終えており、大飯原発の安全性を妥当とするとみられる。
課題がクリアされた場合に県は、県会や時岡町長の意向を聞くなど一連の手続きを時間をかけずに進める方針だ。
(5月31日付け福井新聞・電子版)
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/34970.html