【毎日新聞特集「波紋の現場から」:高校再編計画を巡って/4 小規模校の挑戦】
◇教諭「なぜつぶす」疑問の声
05年度に普通科で66%だった卒業率(中退や留年を除く卒業者の割合)が83%に改善した県立高校がある。今回の再編計画原案で統廃合の対象となった彦根西だ。1学年4学級の小規模校ながら、08年度に県内で初めて導入した「学びの共同体」という取り組みが効果を上げている。
米国のグループ学習の利点を生かした取り組みで、日本の高校でも取り入れられ始めている。大きな狙いは教師が一方的に説明する授業からの脱却。教壇を囲むように机をコの字に並べ、生徒同士が意見を交わし、教え合う雰囲気を作り出すのが特色だ。
この方法を導入した夏原常明教諭(55)は「落ちこぼれる生徒を出さないことが目的。授業を進める上で、教師の力量がより問われる」と言う。アンケートでは全校生徒の約6割が「学習に意欲が出た」と回答し、2年の女子生徒(17)は「分からなかったら人に聞くようになった。質問し合えるのがいい」と評価する。
◇ ◇
今年度の全日制46校の平均規模は1学年5・57学級で、全国平均(5・55学級)と大差はない。再編において県教委は「大津市が7・8学級に対し、湖北は4・6学級、湖東は5・1学級だ」と地域間の格差を強調し、湖北と湖東にまず統廃合のメスを入れた。
県教委が「6~8学級の適正規模」にこだわる理由の一つが、部活動の活性化だ。彦根西野球部は今夏の県大会後、部員が2人だけになった。男子部員(16)は取材に「統合したら部活動は活発になる。後輩のためにも統合に賛成です」。サッカー部の男子部員(17)も「ぎりぎりの人数なので替えがきかない」と部員増を望んでいる。
ただ、取材に応じた彦根西の生徒10人のうち8人は「規模が小さいから不便だと感じたことはない」とも話した。
◇ ◇
夏原教諭は「学びの共同体」を担当の数学の授業から始め、他の教諭とも勉強会を重ねて10年度から全校実施に広げた。今では県内外の教育関係者が視察に訪れる。
大津市の大規模校で10年間教えた経験もある夏原教諭は「教員の意思疎通がしやすい小規模校だからこそ導入できた」と語り、原案で統廃合校として名指しされたことに「革新的な取り組みをしている学校をなぜつぶすのか」と疑問を投げかける。
【関連ニュース番号:1110/245、10月27日;1110/229、10月26日;1110/215、10月24日】
(10月27日付け京都新聞・電子版)
http://mainichi.jp/area/shiga/archive/news/2011/10/27/20111027ddlk25100530000c.html
◇教諭「なぜつぶす」疑問の声
05年度に普通科で66%だった卒業率(中退や留年を除く卒業者の割合)が83%に改善した県立高校がある。今回の再編計画原案で統廃合の対象となった彦根西だ。1学年4学級の小規模校ながら、08年度に県内で初めて導入した「学びの共同体」という取り組みが効果を上げている。
米国のグループ学習の利点を生かした取り組みで、日本の高校でも取り入れられ始めている。大きな狙いは教師が一方的に説明する授業からの脱却。教壇を囲むように机をコの字に並べ、生徒同士が意見を交わし、教え合う雰囲気を作り出すのが特色だ。
この方法を導入した夏原常明教諭(55)は「落ちこぼれる生徒を出さないことが目的。授業を進める上で、教師の力量がより問われる」と言う。アンケートでは全校生徒の約6割が「学習に意欲が出た」と回答し、2年の女子生徒(17)は「分からなかったら人に聞くようになった。質問し合えるのがいい」と評価する。
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今年度の全日制46校の平均規模は1学年5・57学級で、全国平均(5・55学級)と大差はない。再編において県教委は「大津市が7・8学級に対し、湖北は4・6学級、湖東は5・1学級だ」と地域間の格差を強調し、湖北と湖東にまず統廃合のメスを入れた。
県教委が「6~8学級の適正規模」にこだわる理由の一つが、部活動の活性化だ。彦根西野球部は今夏の県大会後、部員が2人だけになった。男子部員(16)は取材に「統合したら部活動は活発になる。後輩のためにも統合に賛成です」。サッカー部の男子部員(17)も「ぎりぎりの人数なので替えがきかない」と部員増を望んでいる。
ただ、取材に応じた彦根西の生徒10人のうち8人は「規模が小さいから不便だと感じたことはない」とも話した。
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夏原教諭は「学びの共同体」を担当の数学の授業から始め、他の教諭とも勉強会を重ねて10年度から全校実施に広げた。今では県内外の教育関係者が視察に訪れる。
大津市の大規模校で10年間教えた経験もある夏原教諭は「教員の意思疎通がしやすい小規模校だからこそ導入できた」と語り、原案で統廃合校として名指しされたことに「革新的な取り組みをしている学校をなぜつぶすのか」と疑問を投げかける。
【関連ニュース番号:1110/245、10月27日;1110/229、10月26日;1110/215、10月24日】
(10月27日付け京都新聞・電子版)
http://mainichi.jp/area/shiga/archive/news/2011/10/27/20111027ddlk25100530000c.html