滋賀市民運動ニュース&ダイジェスト

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【0612/62:内部告発問題】内部告発の窓口、外部は2割、45自治体は内部に、滋賀県は窓口なし

2006-12-26 02:44:19 | Weblog

談合や汚職などの不正や違法行為の内部告発者を報復人事などから守る公益通報者保護制度に関して、弁護士らによる「外部窓口」を設けている自治体が、都道府県と政令指定都市のうち2割の14自治体にとどまっていることが朝日新聞社の調査でわかりました。「内部窓口」のみの自治体の大半は人事・総務担当課が窓口と調査責任者を兼ねており、前知事が逮捕された福島県を含む2県1市は窓口そのものがありませんでした。多くの自治体で知事や幹部職員の不正を防ぐ仕組みが機能していない実態が浮かび上がりました。

11月下旬から12月上旬にかけ、47都道府県と15政令指定都市に文書や電話で質問し、すべての自治体から回答を得ました。

それによると、59の自治体が2002年11月~2006年11月にかけて通報窓口を設置しています。このうち神奈川県や大阪府、名古屋市、福岡市など11自治体が、内部窓口に加えて弁護士事務所にも窓口を設置していました。横浜、広島の両市は窓口を弁護士事務所に一本化しています。東京都は現職の総務局長が理事長を兼ねる関連団体を「外部窓口」と回答しました。

外部窓口を設けていた計14のうち9自治体で、実際に職員の通報がありました。大阪市の266件を筆頭に、静岡県と横浜市が31件など、総件数は375件に上ります。

通報が不祥事の発覚につながったケースもあります。通報の受け付けに加えて調査も弁護士に依頼している大阪市では、今年11月、300人以上の職員による総額約5000万円に上る住宅手当の不正受給などが判明しました。横浜市では今年8月、2001~2005年度にかけてバス事業で赤字が出たように装って、各年度に約1億5000万円~約4億円の補助件を不正に受給していたことがわかりました。このほか、手当ての不正受給(長野県)、出張費の不正受給(静岡県)、勤務中の飲酒(神戸市)などが明らかになっています。

外部窓口がない45の自治体は、主に人事・総務担当課が通報を受け付け、その後の調査も担当しています。埼玉、山形両県など、情報を通称対象の職員の所属部署に提供し、調査を「依頼」したケースもありました。これらの自治体では通報の実績も乏しく、34自治体ではゼロで、不正行為の摘発につながった事例もほとんどありませんでした。

前知事が逮捕された和歌山県は、知事公室秘書課で知事の裏金を管理していました。秘書課に勤務経験のある職員は「制度は知っていたが、実名で通報すれば必ず名前が漏れて県庁で名前が特定されるし、匿名だとうわさ話で片付けられる。外部の第三者機関がないとどうしようもない」と話しています。

現在も制度を設けていない自治体の場合、福島県は「10月に役所内の窓口のみで始めるつもりだったが、前知事の逮捕を受けて再検討している」、滋賀県は「実効性のある制度にしようとして長引いた」、北九州市は「外部窓口の必要性を考慮し、今夏から制度を再検討したため」などと説明しています。いずれも年度内に策定する予定としています。

《新藤宗幸・千葉大学教授(行政学)の話》
制度ができて時間が短いこともあり、実効性のある制度が整備されていないのが現状だ。内部のことは内部で始末し、外部に調査機関を設けたくないというのが自治体の本音だろう。だがそんな状況では、通報する側もその後の不利益処分を恐れて通報をためらう。自治体側と契約関係などの利害関係を持たない人を外部通報窓口や調査責任者に据え、第三者機関としての姿を確立することが必要だ。自治体のトップもそうした制度整備をすることが、自らの権威を高めるという認識を持たなければならない。

■ 外部窓口のある自治体

千葉県(弁護士1、相談程度、通報数1)
東京都(都福利厚生事業団、調査に関与せず、通報0件)
神奈川県(弁護士1、調査に関与、通報5件)
長野県(弁護士2、調査に関与、通報5件)
静岡県(顧問弁護士1、調査に関与、通報31件)
大阪府(顧問弁護士2、調査に関与せず、通報0件)
徳島県(弁護士2、調査に関与、通報0件)
千葉市(弁護士1、調査に関与せず、通報0件)
横浜市(弁護士3、調査に関与、通報31件)
名古屋市(市の代理人ら弁護士2、相談程度、通報11件)
大阪市(弁護士2、公認会計士1、調査に関与、通報266件)
神戸市(顧問弁護士1、市OB1、相談程度、通報17件)
広島市(市の代理人ら弁護士2、調査に関与、通報0件)
福岡市(弁護士1、調査に関与せず、通報8件)

(通報件数は外部窓口と内部窓口の合計で、設置から11月末までの公表分の累計)

■キーワード:公益通報者保護法
企業や行政機関の職員らが、組織内の不正行為を勤務先や報道機関などに通報したことを理由に、解雇などの不利益な処分をすることを禁じた法律。今年4月に施行された。通報窓口設置は任意だが、内閣府は7月にガイドラインを作成、各自治体に外部窓口設置に努めるよう求めた。各地で知事が逮捕された一連の事件を受け、全国知事会も今月、自治体の顧問弁護士などを除く外部の第三者などによる窓口設置を改革指針として確認している。

(12月22日付け朝日新聞が報道)