一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

新橋駅前の名人戦解説会(前編)「藤森女流四段のかわいらしさ」

2016-04-10 11:15:24 | 将棋イベント
名人戦七番勝負が4月5日に開幕した。対局者は羽生善治名人と佐藤天彦八段。
私はモバイル会員ではないので、名人戦の記譜はネットで確認することができない。しかも今期からNHKが中継を撤退してしまったので、なお不便なことになった。
その時ネットで、名人戦解説会の告知を見た。東京・新橋駅前で2日目の午後6時半より行われる。解説は大内延介九段、聞き手は藤森奈津子女流四段。入場無料の、おなじみのやつだ。
この催しがいつごろから始まったか記憶にないが、毎年第2局だけ行われていた気がする(記憶違いかもしれない)。私は毎年行ける環境にあったのだが、解説を聞くためだけに外出するのは面倒と、敬遠していた。
しかしプロの解説を無料で聞けるのはありがたいことだし、何より勉強になる。将棋ファンなら行く一手だと思った。
当日は仕事を6時で終えると、すぐに新橋に向かった。
家を出てから3分後、カメラを忘れたことに気付いたが、もう引き返すわけにはいなかい。そのまま最寄り駅に向かった。
新橋に着いたのは6時42分。SL広場口に出ると、C11系蒸気機関車の前で、大盤解説会が行われていた。
余談だがこのC11系は、企画列車で現在もJR北海道等を走っており、私は1999年5月1日、留萌本線を走る「SLすずらん号」に乗ったことがある。
SLの前の急造ステージに大盤が置かれ、向かって右で大内九段が、パイプ椅子に座って解説していた。
左手には藤森女流四段。現在、現役女子高生アイドルとして竹俣紅女流初段が売り出し中だが、藤森女流四段こそその元祖だった。その愛くるしさは、竹俣女流初段に勝るとも劣らない。現在はやや薹(トウ)が立っているが、藤森女流四段は、永遠のアイドルなのだ。
駒操作氏はずいぶん若いが、奨励会員だろうか。だが彼も手練れに違いない。
現在は2日目夕休までの局面を軽く解説しているようだった。
客の入り、というか集まり具合はどんなものだろう。大盤の前には折り畳み式のミニ腰掛が数脚用意されており、ほとんどが埋まっていた。その後方に私たち立ち見の客がいるのだが、パラパラッと3~4列ぐらいで見物していた。
ただ、ここSL前は恰好の待ち合わせ場所で、時間つぶしに眺めている人も少なくなかったと思われる。
大内九段の口調はゆっくりだった。大内九段の生解説を聞くのは1990年12月9日、新潟県民会館で行われた第11回将棋日本シリーズ決勝戦・谷川浩司竜王対中原誠名人戦の解説を拝聴して以来だ。その時大内九段は弁舌なめらかだったが、やはり大内九段も人の子、歳を取ったということだろう。かくいう私だってあっちこっちにガタが来て、もう立派な中年だ。
「ショーシ時間は…」と大内九段がいう。もちろん消費時間のことで、大内九段は江戸っ子なのである。現在羽生名人が1時間、佐藤八段が30分ほど残しているという。
局面が現在に追いついたが、早くも指し手が入ってきた。まだ夕休時間と思いきや、1時間の休みがあったのは3年前までで、現在は30分と短くなったという。
「(厳しい終盤で)のんびり食事なんかできませんもんね」
と藤森女流四段。薹が立ってはいるが、声は若い頃と変わらない。ああ、カメラを取ってこなかったことを後悔した。
先番の羽生名人、銀取りに▲3六歩と突く。これが平凡ながら好手で、大内九段の解説によれば、銀がどう動いても先手の技が掛かってしまう。
佐藤八段はやむなく△4六銀。4筋の歩が切れたので、大内九段は▲4三歩からの攻め筋を示す。どうもこれで先手が一手勝ちのようだ。
テレビ将棋の解説などを聞くと、形勢判断を容易に下さない棋士がいるが、大内九段のそれは明快である。解説はこうでなくてはいけない。
「ハブ…」とつぶやく待ち合わせの会社員がいる。一般人にも、羽生名人の知名度は絶大だ。
私の前には妙齢の女性が、静かに大盤を見ている。室谷由紀女流二段のような絶世の美人が将棋を指す時代だ。彼女だって腕に覚えがあるのかもしれない。
羽生名人は▲4七歩と銀を殺した。
「なるほどこう指すものですか。私は直線的な指し手を好みますが、羽生名人は曲線的な指し方をしますね」
と大内九段。
佐藤八段、△2八歩。「梶浦君…」と大内九段が言う。あの青年は、梶浦宏孝四段だった。たしか2014年デビューの気鋭で、彼も大内一門なのだろう。
名人戦の解説会といえば、昔は朝日新聞社前で行われ、多くの見物客がいたらしい。解説・木村義雄十四世名人、聞き手・佐藤健伍六段のコンビが有名で、河口俊彦八段の著書によれば、とくに佐藤六段の駒捌きが絶品だったという。
もちろん私は拝見したことはないが、梶浦四段のそれも大内九段の指し手に素早く呼応し、キビキビしている。
羽生名人は▲4六歩と銀を取り、△2九歩成に▲6六角と飛車取りに打つ。大内九段によれば、さっきまでは佐藤八段が有利に見えたが、いつの間にか逆転している…とのことだった。
さて▲6六角に△7四飛は、どの変化も羽生名人が勝つ。相変わらず大内九段の解説は明快である。ではこれで大勢決すか…。
7時24分、ここで解説会のほうがいったん休憩となった。
(つづく)
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2 コメント

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Unknown (Og)
2016-04-10 18:55:37
藤森奈津子さんのことを「トウが立つてゐる」
といふ表現はあんまりではないでせうか。

私は藤森さんのファンではありませんが、
この表現は残念です。

「トウが立つてゐる」はやや悪意を含む表現と
解釈してゐます。

ただ、大沢さんに悪意が無いことは判ります。
だからこそ不適切な表現と思ふのです。

私が藤森さん本人なら、このやうに書かれたら
相当なショックを受けることでせう。

話は変わりますが、藤森さんの妹君で、
高校選手権で優勝した中瀬尚美さんは
かわいかつたですね。

将棋世界か近代将棋に掲載された写真で
一度拝見しただけですが、
当時十代だつた私は一目惚れして仕舞ひました。

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 (一公)
2016-04-10 23:23:06
>Ogさん
おお、マズイ表現でしたか?
藤森先生なら、笑ってすませてくれると思います。
藤森先生に妹さんがいらしたとは、初めて知りました。
女流棋士になってくれたらよかったのに、残念なことでした。
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