一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

香織、三番勝負(前編)

2023-05-10 00:05:15 | LPSA麹町サロンin DIS
1月12日のLPSA麹町サロンin DISである。中倉彰子女流二段に教えを請うたあと、中休みにTod氏と、階下のドトールコーヒーに入った。Tod氏は上川香織女流二段との予約はないが、私が強引に付き合ってもらった。
私はコーヒーのほかに、お店オススメのローストビーフサンドを注文する。私の辞書にはないメニューだが、たまにはいい。
将棋関係の友人としゃべるのは楽しい。店には悪いが、長居してしまった。
麹町サロンに戻り、上川女流二段との対局である。
上川女流二段の回も満席だった。上川女流二段とは2ヶ月ぶりの顔合わせだが、きょうも魅力的である。本日2度目の指導料を払って対局開始だが、上川女流二段が「たまには先手で指したい」と言う。女流棋士相手にそれは畏れ多いが、従うことにした。

初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲6六歩△8四歩▲7八飛△6二銀▲7五歩△6四歩▲5八金左△6三銀▲4八玉△4二玉▲1六歩△3二玉▲3八銀△4二銀▲3九玉△4四歩▲4六歩△4三銀▲1五歩(第1図)

上川女流二段は三間飛車。私は相手に石田流に組ませ、それを中央から反撃するのが好きなので、あえて飛車先の歩を決めず、△6二銀と上がった。
上川女流二段は当然▲7五歩。そう来なくちゃいけない。
13手目▲1六歩に、私は前局と同じく受けない。心の余裕がないのだろう。
上川女流二段が▲1五歩と伸ばし、次の手は、私としては当然。

第1図以下の指し手。△5四銀左▲4七金△4五歩▲同歩△同銀▲4六歩△5四銀引▲6八銀△4二飛(途中1図)▲6五歩△8八角成▲同飛△6五歩▲8六歩△3三角▲7七銀△8二飛▲2八玉(第2図)

私は△5四銀左。ここ「右」だと、のちに▲7四歩を狙われる。本譜▲4七金には△4五歩と角道を通しつつ、1歩を手にして気持ちいい。
そして▲6八銀に△4二飛(途中1図)が狙いの一手。飛車の横利きがなくなったいまが唯一のチャンスで、次に△4五歩▲同歩△同銀からの進撃を見ている。

「そうかあ……。大沢さんて、そういう鋭いところあるよね」
と上川女流二段が感心してくれる。
ぐずぐずできない上川女流二段は▲6五歩と暴れてきたが、私は角交換に応じ、じっと△6五歩と歩得を果たす。
▲8六歩にはもったいないが、△3三角と手放してみた。
▲2八玉に次の手は。

第2図以下の指し手。△7四歩(途中2図)▲6八飛△7五歩▲9八香△5二金右▲3六歩△6四銀▲3七桂△4二金上▲5六歩△8五歩▲4五歩△8六歩▲4六角△6三金▲5八飛△8七歩成(第3図)

第2図から△7四歩(途中2図)と突いたのが、当然とはいえ自慢の一手。狙うは2手先の△7六歩で、これが実現すれば後手が勝つ。果たして上川女流二段も「それ、よさそうな手に見える」とつぶやいた。

まさに△7四歩さまさまだが、これは1972年8月23日・24日に指された第13期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)第3局、▲内藤國雄八段VS△大山康晴王位において、内藤八段の指した手を参考にしている(参考図)。

こちらはちょっと高度な桂頭攻めだが、棋譜並べをしてプロの指し手がインプットされていると、稀に応用が利くことがあるのだ。
上川女流二段は▲6八飛と回ったが、私は△7五歩と取り込む。また1歩得して気分がよく、今後の指し手が分かりやすくなったのもよい。
しかし▲9八香には一転、△5二金右とした。玉の守りを強化して、この手は相当に価値あると思った。事実上川女流二段も、「そういうじっとした手が指せるのはさすがね」と感心してくれた。
私はさらに自陣を整備し、△8五歩。とにかく慌てないことを心掛けた。

第3図以下の指し手。▲2五桂△2四角▲5五歩△4五銀▲2四角△同歩▲1三桂成△4六歩▲5六金△6七角▲4五金△同角成▲8三歩△5二飛▲2三銀(第4図)

「あれー、大沢さんって、こんなに強かった?」
と上川女流二段。▲2五桂と跳ねたが、私は手順に△2四角と交換を迫る。結果それが実現したが、これは後手が若干儲けた。
先手は▲4六歩と銀を殺す1歩がないので、▲1三桂成とする。その寸暇を割いて△4六歩と抑え、後手ますます好調である。
数手後の▲2三銀に、玉をどこに逃げるか。

第4図以下の指し手。△4三玉▲6一角△1三桂▲5二角成△同玉▲8二飛△6二金▲5四歩△7一金▲6八銀△3五歩▲5三歩成△同銀▲5四歩△6四銀▲1四歩△2五桂▲1三歩成△3六歩▲4八金△1三香▲同香成△1七角▲1八玉△3九角成(投了図)
まで、96手で一公の勝ち。

第4図で△4一玉と逃げるのがふつうだ。しかしそれだと取れそうな▲1三成桂を▲2二に入られるのがイヤだ。
そこで△4三玉と逃げれば、上川女流二段は▲6一角と準王手飛車を掛けてくるだろう。そこで△1三桂と桂をはずせば、後手がさらによくなると思った。
果たして本譜もそのように進み、後手はさらによくなった。
▲8二飛には△6二金がいい引き締め。「それ、すごくいい手」と上川女流二段が褒めてくれた。
▲5四歩に△同馬は▲同飛△同歩▲8一飛成がある。そこで△7一金と飛車を殺した。これが負けない手で、これで行けそうな気がした。
上川女流二段は▲6八銀。25手前に銀取りに歩を成られてから、やっと逃げた。
私は△3五歩と急所を衝く。これが銀取りと同時に先手玉のコビンを攻めた、一石二鳥の好手。
上川女流二段は構わず▲5三歩成△同銀▲5四歩とした。これに△同銀は、▲3四銀不成△同馬▲5四飛のような狙いが生じて、やや危険である。黙って△6四銀と逃げた。
▲1四歩に△2三馬と銀を取ってもしょうがない。△2五桂と跳ねて寄せを目指した。以下、△3九角成に、上川女流二段が投了した。
上川女流二段の焦りもあったが、わりとうまく指せたと思う。
簡単に感想戦を済ませ、すぐに2局目が始まった。

(つづく)
コメント (2)
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