2011年7月13日のLPSA芝浦サロンで、私は指導の船戸陽子女流二段に痛い黒星を喫し、ワイン勝負は2勝7敗となった。つまりあと1つ負けると、船戸女流二段へのワイン進呈が決まる。
そこで船戸女流二段は
「もう1局行っちゃいますか」
と言った。
まだ時間があったということもあるが、こんな勝負、早く終わらしちゃいましょう、というニュアンスがあった。
以前も記したが、ワイン勝負の途中から船戸女流二段は、この勝負を嫌悪しているフシがあった。しかし私は気付かないフリをしていた。もちろん私は2局目を受け、お代わり代1,000円を払い、再び対局開始となった。
私の居飛車明示に、船戸女流二段は中飛車穴熊。これは船戸女流二段の裏芸で、中飛車と穴熊はセットにするのが陽子流だった。
私は左美濃に組み、船戸女流二段の攻めをいなす。ちょっと金銀がバラバラだが、戦っているうちに歩得し、指しやすい形勢と思った。
中盤、▲2八飛と回って△2六の角取り。船戸女流二段は△2五歩と受けた(第1図)。

第1図以下の指し手。
▲2二歩△3九銀▲8八飛△4八角成▲2一歩成△5七馬▲7八金△4六馬▲1一と△4八銀不成▲7五香△同金▲同歩△同飛▲5三成銀△5七銀成(第2図)
ここで私は▲2二歩と打った。着実な攻めだが、飛車の侵入を邪魔する可能性もあり、一長一短である。
船戸女流二段は△3九銀。指された瞬間の正直な気持ちを記せば、
「こんなイモ手を指すなんて…」
と悲しくなったものだった。
私は▲8八飛と横っ飛びしたが、いまなら▲2七飛とひとつ浮くと思う。これで上手にこれといった手がない。
私は得した香で金と交換し、好調。ただし飛車の動きを自由にしたキライもある。
船戸女流二段も巧妙に銀を働かせ、食いついてくる。ここで私が間違えた。

第2図以下の指し手。
▲6五金△7七飛成▲同桂△6七成銀▲同金△7六歩▲7四桂△7七歩成▲同金△7六歩▲同金△6七銀▲7七金打△6九角▲7八歩△7六銀不成▲同金△6七金▲8二桂成△同金
▲4二飛△7八金▲同飛△同角成▲同玉△7九飛▲8七玉△7一香▲7四歩△8四桂(投了図)
まで、132手で船戸女流二段の勝ち。

▲6五金がつまらなかった。△4五飛と回られる手を防いだものだが、船戸女流二段によろこんで△7七飛成とされ、▲6五金がスカタンになってしまった。
動揺した私は▲7七同桂と取ったがこれも疑問で、まだ▲同金と取るところだった。
本譜は△7六歩以下快調に攻められ、ここでは負けた気分になっていた。最後は△8四桂と打たれて、投了。その場の空気が、どんよりした。
すかさず船戸女流二段が、
「私は1回断ったんだからね」
と困惑気味に言った。
私はうなだれて、言葉も出ない。とりあえず、感想戦らしきものをする。△2五歩(第1図)の局面、私は
「勝ったと思ったんだが…」
と言うと、船戸女流二段は
「たしかに大沢さんのほうが優勢かもしれないけど、まだまだ勝負は先でしょう」
と返した。
まあ感想戦をやったところで勝敗がひっくり返るわけでなし、私もそれ以上は食い下がらなかった。
これでワイン勝負は終わったが、その星を書けば、「●○○●●●●●●●」である。連勝後の7連敗とはヒドく、まさかこんな星取りになるとは思わなかった。
別に言い訳をするつもりはないけれど、勝負の後半は、気持ちがこもっていなかった。とにかく、ここ何か月かのふたりの雰囲気が悪すぎた。何でこうなってしまったのか分からぬが、これは修復不可能だと思った。そして何となく、船戸女流二段とはもう指導対局を指さない予感がした。
賞品のワインは、船戸女流二段の所望のものを、翌週の「木曜ワインサロン」のときに進呈した。
しかしこのワインも、ソムリエの目から見ると、あまりコンディションがよくなかったようである。素人にワイン選びは難しかった。
その翌月、船戸女流二段は結婚を発表。私は同年9月1日の「木曜ワインサロン」に参加し、これが船戸女流二段との最後の対局となった。
いま、当時の将棋を並べ返してみて、投了の局面は、何か受けがあるように思える。その前の▲7四歩でも、もう少し気の利いた手があるように思える。
また、私が優勢と思った△2五歩(第1図)の局面は、次に▲6五歩△同金▲1一角成があるようだ。
もっとも△2五歩の局面で当時考えたのは、▲3七金(参考図)と打つ手である。これに△6二角なら、▲2五飛とさわやかに走り、飛車で桂を取る手を見る。「▲3七金」だったら、船戸女流二段はどういう見解を述べるだろうか。
もし船戸女流二段にどこかで偶然お目にかかったら、聞いてみたいと思っている。
そこで船戸女流二段は
「もう1局行っちゃいますか」
と言った。
まだ時間があったということもあるが、こんな勝負、早く終わらしちゃいましょう、というニュアンスがあった。
以前も記したが、ワイン勝負の途中から船戸女流二段は、この勝負を嫌悪しているフシがあった。しかし私は気付かないフリをしていた。もちろん私は2局目を受け、お代わり代1,000円を払い、再び対局開始となった。
私の居飛車明示に、船戸女流二段は中飛車穴熊。これは船戸女流二段の裏芸で、中飛車と穴熊はセットにするのが陽子流だった。
私は左美濃に組み、船戸女流二段の攻めをいなす。ちょっと金銀がバラバラだが、戦っているうちに歩得し、指しやすい形勢と思った。
中盤、▲2八飛と回って△2六の角取り。船戸女流二段は△2五歩と受けた(第1図)。

第1図以下の指し手。
▲2二歩△3九銀▲8八飛△4八角成▲2一歩成△5七馬▲7八金△4六馬▲1一と△4八銀不成▲7五香△同金▲同歩△同飛▲5三成銀△5七銀成(第2図)
ここで私は▲2二歩と打った。着実な攻めだが、飛車の侵入を邪魔する可能性もあり、一長一短である。
船戸女流二段は△3九銀。指された瞬間の正直な気持ちを記せば、
「こんなイモ手を指すなんて…」
と悲しくなったものだった。
私は▲8八飛と横っ飛びしたが、いまなら▲2七飛とひとつ浮くと思う。これで上手にこれといった手がない。
私は得した香で金と交換し、好調。ただし飛車の動きを自由にしたキライもある。
船戸女流二段も巧妙に銀を働かせ、食いついてくる。ここで私が間違えた。

第2図以下の指し手。
▲6五金△7七飛成▲同桂△6七成銀▲同金△7六歩▲7四桂△7七歩成▲同金△7六歩▲同金△6七銀▲7七金打△6九角▲7八歩△7六銀不成▲同金△6七金▲8二桂成△同金
▲4二飛△7八金▲同飛△同角成▲同玉△7九飛▲8七玉△7一香▲7四歩△8四桂(投了図)
まで、132手で船戸女流二段の勝ち。

▲6五金がつまらなかった。△4五飛と回られる手を防いだものだが、船戸女流二段によろこんで△7七飛成とされ、▲6五金がスカタンになってしまった。
動揺した私は▲7七同桂と取ったがこれも疑問で、まだ▲同金と取るところだった。
本譜は△7六歩以下快調に攻められ、ここでは負けた気分になっていた。最後は△8四桂と打たれて、投了。その場の空気が、どんよりした。
すかさず船戸女流二段が、
「私は1回断ったんだからね」
と困惑気味に言った。
私はうなだれて、言葉も出ない。とりあえず、感想戦らしきものをする。△2五歩(第1図)の局面、私は
「勝ったと思ったんだが…」
と言うと、船戸女流二段は
「たしかに大沢さんのほうが優勢かもしれないけど、まだまだ勝負は先でしょう」
と返した。
まあ感想戦をやったところで勝敗がひっくり返るわけでなし、私もそれ以上は食い下がらなかった。
これでワイン勝負は終わったが、その星を書けば、「●○○●●●●●●●」である。連勝後の7連敗とはヒドく、まさかこんな星取りになるとは思わなかった。
別に言い訳をするつもりはないけれど、勝負の後半は、気持ちがこもっていなかった。とにかく、ここ何か月かのふたりの雰囲気が悪すぎた。何でこうなってしまったのか分からぬが、これは修復不可能だと思った。そして何となく、船戸女流二段とはもう指導対局を指さない予感がした。
賞品のワインは、船戸女流二段の所望のものを、翌週の「木曜ワインサロン」のときに進呈した。
しかしこのワインも、ソムリエの目から見ると、あまりコンディションがよくなかったようである。素人にワイン選びは難しかった。
その翌月、船戸女流二段は結婚を発表。私は同年9月1日の「木曜ワインサロン」に参加し、これが船戸女流二段との最後の対局となった。
いま、当時の将棋を並べ返してみて、投了の局面は、何か受けがあるように思える。その前の▲7四歩でも、もう少し気の利いた手があるように思える。
また、私が優勢と思った△2五歩(第1図)の局面は、次に▲6五歩△同金▲1一角成があるようだ。
もっとも△2五歩の局面で当時考えたのは、▲3七金(参考図)と打つ手である。これに△6二角なら、▲2五飛とさわやかに走り、飛車で桂を取る手を見る。「▲3七金」だったら、船戸女流二段はどういう見解を述べるだろうか。
もし船戸女流二段にどこかで偶然お目にかかったら、聞いてみたいと思っている。
