「私がここに呼ばれるとは思ってなくて…」
とかいう室谷由紀女流初段の声が聞こえる。しかし私に振り向く余裕はない。
私の将棋はいよいよ劣勢だ。△4四銀と角交換を挑まれた。こんなもの当然▲4二角成としたいが、△同飛のあと先手陣には△7八角や△8七角のキズがあり、とてももたない。
私は泣きの涙で▲7五歩と打ったが、自ら飛車角の利き道を止めるようではダメである。この将棋は失敗した。
直後に渡部女流初段が△3六歩と突きだしたのが下の局面。

「負けました」
「エーーッ!!」
私が戦意喪失して投了すると、渡部女流初段が頓狂な声を上げた。投了は早い、の意だろうが、▲3六同銀は△3五銀とぶつけられる。以下▲同銀△同金は次の△3六歩が受からず、下手ジリ貧。とても指してられない。昨年の鈴木環那女流二段に続き、2年連続で吹っ飛ばされた。
私が「▲3七桂がヒドかった」とボヤき、渡部女流初段が
「大沢さん、相掛かりも指されたんですね」
と返して、感想戦が始まった。渡部女流初段の感想戦は独特で、下手の疑問手を、大上段から指摘しない。下手の作戦に対しても、「私は前、こんな手を指されたことがありました…」と、さりげなく教えてくれる感じである。本局も勉強になった。
渡部女流初段はいまや押しも押されもせぬ、LPSAの顔。これからも頑張ってください。
会場ではプレゼントの抽選会が始まった。棋士が提供してくれた色紙や著書が、参加者に贈られる。といっても抽選はなく、まずは女性参加者が優先的に選ぶ。次はどうなるかと思いきや、「1月~3月生まれの参加者」だった。私はこれに該当する。渡辺弥生女流初段の「刻苦勉励」色紙をいただいた。よく分からぬが、東大に2回も入学した渡辺女流初段らしい揮毫ではないか。
Tag氏が来て、「あいうえお順でも誕生日順でも、いつも私は損しますよ」とぼやく。しかしTag氏は渡辺明二冠と井山裕太囲碁六冠のコラボ扇子をゲットし、ご満悦の様子だった。
ミス荒川放水路のMisakoさんも来た。こちらは中原誠十六世名人の色紙をもらっていた。自分の好きな賞品を選べるので、みな満足度は高いようだ。
振り向くと、室谷女流初段がひとり佇んでいる。チャンスだ…! しかし、どう声を掛ければいいのだろう。いきなり声を掛けて、「ミスインターナショナルに応募したらどうですか」などと言っては、変質者と思われる。
グズグズしていたら、森信雄七段、片上大輔六段ら一門と合流してしまった。今回も、私が室谷女流初段にお近づきになるのは難しいようである。
で、指導対局を覗いていたら、安食総子女流初段と目が合った。
「すみません、安食先生に教えていただこうと思ったんですが、すでに3人入ってしまったんで…。また連盟に行きますよ」
私は焦って弁解し、また適当なことをいってしまった。
私は神谷八段に声を掛ける。神谷八段は先日、フジテレビの「アウト×デラックススペシャル」に登場し、加藤一二三九段と丁々発止の爆笑トークを演じた。ちなみにそのときの元ネタは、以前「将棋寄席」で神谷八段から語られたものだ。
「アウト×デラックス」では入念なリハーサルでもあったと思いきや、その類はなかったという。なるほど、ぶっつけ本番の生々しさが、あの面白トークを創っていたわけか。
上野裕和五段にも挨拶する。上野五段は現在、「NHK将棋講座」の別冊付録に連載を持っているという。
「順位戦も復帰できるよう頑張ります!」
と力強く誓ってくれた。
O平氏が来た。安食女流初段に勝てた、と大喜びである。手合いを聞いたら、平手だった。それはスゴイ! O平氏のこんなエビス顔を見るのは初めてで、(女流)棋士に勝った喜びは、そのくらいのものである。
お開きの時間が迫ってきた。指導対局もここで切り上げ、安食女流初段と渡部女流初段も、壇上でスピーチをした。将棋ペンクラブはみなに平等なのである。
午後8時半を過ぎ、そろそろお開きである。毎年思うのは式の時間の短さで、今年もそうだったが、まあこのくらいの長さが味がいいのかもしれない。
締めは天野貴元氏の音頭で三本締め。今年も楽しい式だった。
というわけで、将棋関係者の皆様、この1年、素晴らしい文章をありがとうございました。これからも面白い文章を期待しております。
とかいう室谷由紀女流初段の声が聞こえる。しかし私に振り向く余裕はない。
私の将棋はいよいよ劣勢だ。△4四銀と角交換を挑まれた。こんなもの当然▲4二角成としたいが、△同飛のあと先手陣には△7八角や△8七角のキズがあり、とてももたない。
私は泣きの涙で▲7五歩と打ったが、自ら飛車角の利き道を止めるようではダメである。この将棋は失敗した。
直後に渡部女流初段が△3六歩と突きだしたのが下の局面。

「負けました」
「エーーッ!!」
私が戦意喪失して投了すると、渡部女流初段が頓狂な声を上げた。投了は早い、の意だろうが、▲3六同銀は△3五銀とぶつけられる。以下▲同銀△同金は次の△3六歩が受からず、下手ジリ貧。とても指してられない。昨年の鈴木環那女流二段に続き、2年連続で吹っ飛ばされた。
私が「▲3七桂がヒドかった」とボヤき、渡部女流初段が
「大沢さん、相掛かりも指されたんですね」
と返して、感想戦が始まった。渡部女流初段の感想戦は独特で、下手の疑問手を、大上段から指摘しない。下手の作戦に対しても、「私は前、こんな手を指されたことがありました…」と、さりげなく教えてくれる感じである。本局も勉強になった。
渡部女流初段はいまや押しも押されもせぬ、LPSAの顔。これからも頑張ってください。
会場ではプレゼントの抽選会が始まった。棋士が提供してくれた色紙や著書が、参加者に贈られる。といっても抽選はなく、まずは女性参加者が優先的に選ぶ。次はどうなるかと思いきや、「1月~3月生まれの参加者」だった。私はこれに該当する。渡辺弥生女流初段の「刻苦勉励」色紙をいただいた。よく分からぬが、東大に2回も入学した渡辺女流初段らしい揮毫ではないか。
Tag氏が来て、「あいうえお順でも誕生日順でも、いつも私は損しますよ」とぼやく。しかしTag氏は渡辺明二冠と井山裕太囲碁六冠のコラボ扇子をゲットし、ご満悦の様子だった。
ミス荒川放水路のMisakoさんも来た。こちらは中原誠十六世名人の色紙をもらっていた。自分の好きな賞品を選べるので、みな満足度は高いようだ。
振り向くと、室谷女流初段がひとり佇んでいる。チャンスだ…! しかし、どう声を掛ければいいのだろう。いきなり声を掛けて、「ミスインターナショナルに応募したらどうですか」などと言っては、変質者と思われる。
グズグズしていたら、森信雄七段、片上大輔六段ら一門と合流してしまった。今回も、私が室谷女流初段にお近づきになるのは難しいようである。
で、指導対局を覗いていたら、安食総子女流初段と目が合った。
「すみません、安食先生に教えていただこうと思ったんですが、すでに3人入ってしまったんで…。また連盟に行きますよ」
私は焦って弁解し、また適当なことをいってしまった。
私は神谷八段に声を掛ける。神谷八段は先日、フジテレビの「アウト×デラックススペシャル」に登場し、加藤一二三九段と丁々発止の爆笑トークを演じた。ちなみにそのときの元ネタは、以前「将棋寄席」で神谷八段から語られたものだ。
「アウト×デラックス」では入念なリハーサルでもあったと思いきや、その類はなかったという。なるほど、ぶっつけ本番の生々しさが、あの面白トークを創っていたわけか。
上野裕和五段にも挨拶する。上野五段は現在、「NHK将棋講座」の別冊付録に連載を持っているという。
「順位戦も復帰できるよう頑張ります!」
と力強く誓ってくれた。
O平氏が来た。安食女流初段に勝てた、と大喜びである。手合いを聞いたら、平手だった。それはスゴイ! O平氏のこんなエビス顔を見るのは初めてで、(女流)棋士に勝った喜びは、そのくらいのものである。
お開きの時間が迫ってきた。指導対局もここで切り上げ、安食女流初段と渡部女流初段も、壇上でスピーチをした。将棋ペンクラブはみなに平等なのである。
午後8時半を過ぎ、そろそろお開きである。毎年思うのは式の時間の短さで、今年もそうだったが、まあこのくらいの長さが味がいいのかもしれない。
締めは天野貴元氏の音頭で三本締め。今年も楽しい式だった。
というわけで、将棋関係者の皆様、この1年、素晴らしい文章をありがとうございました。これからも面白い文章を期待しております。