前述したとおり、25日(土)は、東京・パレスサイドビルで第3期マイナビ女子オープン・一斉予選対局があった。
この日は夕方から所用があり行く気はなかったのだが、どうにか1回戦だけは観戦できるので、朝のんびりして、現地へ向かう。家から約40分。
私は昨年の同予選も観に行ったが、そのときは選手の入場から本戦の抽選会まで、一部始終を堪能した。今年は9時30分開場、10時対局開始だったが、10時すこしすぎに入場する。遅刻しても罰則はないので、構わない。
室内は逆U字型に対局場が組まれ、観客は各々好きな対局を巡回する。スポンサーになった人は、対局室の内側(窓側)の椅子席で観戦ができる。しかし一般観客席からの距離のほうが、盤面に近い。だからこれは「対局を見る」というより、ひいきの対局者に「応援しています」と無言のメッセージを送る意味があるのではないか。
このブログで約束したとおり、入口右側手前の熊倉紫野女流初段-中村桃子女流1級戦のスポンサーになる。左側手前の石橋幸緒女流王位-里見香奈倉敷藤花戦のスポンサーは5本集まったが、こちらも4本になった。さすがに女流棋士ファンはお目が高い。
左側手前から3つ目では、山口恵梨子女流1級-渡辺弥生女流2級戦をやっている。石橋-里見戦は黒山の人だかりで、こちらは閑散としている。こういうのを「もったいない」という。
むろん対局相手の相違もあるだろうが、同じ女子高生が指しているのに、どうしてこうも集まりが違うのかと思う。しかも山口-渡辺戦は「懸賞対局」の札すら立っていない。
山口女流1級は相変わらず可憐である。その対局姿を眺めているうち、ムラムラしてきて、いや胸がときめいてきて、彼女のスポンサーにもなることにした。本戦入りの1局まで待てなかった。
スポンサーの受付に再び向かうと、係の人に手厚く迎えられる。
「明日から食事はカップラーメンですよ」
と言って、再び新品の壱万円札をピッ、と出す。
私は昨年の予選一斉対局で2本スポンサーになったが、早くもここで去年の数に並んでしまった。予算に制限がなければ、いくらでもスポンサーになってしまいそうだ。恐ろしい。
対局室を見て回る。中倉彰子女流初段-笠井友貴アマは艶やかな一戦。中倉女流初段はふだんニコニコしているが、対局のときは凄みのある貌になる。そのギャップがよい。予想通り相穴熊になっていた。
関根紀代子女流五段-森安多恵子女流三段戦も秘かに注目している一戦。居飛車対三間飛車で、なんとなく昭和の香りを感じさせる。
山口-渡辺戦に戻る。先ほどまで山口女流1級が指しやすいと思ったが、おかしなことになっている。ちょっと攻めあぐねているようだ。
それにしても山口女流1級の制服姿がまぶしい。以前東京・将棋会館で偶然拝見した「LADIES HOLLY CUP」のときと、寸分違わぬいでたちだ。制服姿なら里見倉敷藤花や香川愛生女流2級もそうだが、彼女らと山口女流1級とは決定的な違いがある。
靴だ。山口女流1級が学生靴なのに対して、里見、香川の両女流はスニーカーである。これはよくない。
「女子高生は世界最高のブランド」なのである。頭のてっぺんから足の爪先まで、「女子高生」でなければいけない。ここも格の違いのひとつなのだ。
私は懸賞金を懸けるとき、どちらに渡ってもいいと思っている。もちろん両者への応援がキッチリ半々ということはないが、自分の手から離れたおカネなんだから、誰のところに行こうが構わない。
今回も、渡辺女流2級が勝っても後悔はない。あまり知られていないが、渡辺女流2級は、東京大学の違う学部に、2回入学している。
日本の大学生は、入学するとバカになる、と言われるが、渡辺女流2級は入学しても研鑽を怠らず、4年後も再入学を果たした。その努力はひとかたならぬものがあったろう。そんな彼女に懸賞金が行くのも悪くない。渡辺女流2級の学歴にあやかりたい。
遅れてスポンサーになったので、やっと「懸賞対局」の札がきた。しかし机の右端にポツンと置かれる。これじゃ山口女流1級が気付かないんじゃないか!? もっと中央に置いてくれよ、と心の中でつぶやく。
関根-森安戦は、関根女流五段が鮮やかな寄せで快勝。
熊倉-中村戦は、熊倉女流初段がうまく指し回し、必勝形。最後は熊倉女流初段の飛車打ちに、中村女流1級が駒台に軽く手をかけて、投了を告げた。なんだか、すごくオシャレな投了の仕種だと思った。
中倉-笠井戦は、中倉女流初段の穴熊が徐々に薄くなっていく。笠井アマの穴熊は手つかずの状態だ。やがて中倉女流初段が投了。昨年は身重のからだで伊藤明日香女流1級と激戦を演じ、終局後は大拍手を浴びた中倉女流初段だったが、今期も1回戦で姿を消した。
山口-渡辺戦は、山口女流1級がいよいよ苦しい。飛車取りに当たっているのに相手の角を取りにいったため、その角で銀を取って王手をされ、飛車を只取りされた。さらに角取りに当たっているのに相手の竜を取りにいったため、これもその竜で金を取って王手をされ、ゆうゆう角を取られてしまった。
信じられない。山口女流1級の、あの日のLADIES HOLLY CUPでの鮮やかな指し回しはどこへいったのか。
石橋-里見戦は、石橋女流王位の勝勢である。
山口女流1級の投了の場面を見るのは忍びない。ほかの将棋もあらかた終わったので、私は早めの昼食に出る。
山口女流1級は、昨年の敗退のときも、相当泣きが入ったようである。今期も早々と投了してしまうのは辛いだろう。その辛さを味わいたくなければ、将棋の勉強をするしかない。
山口女流1級は若い。これから白いキャンバスに、いくらでも自由に色を塗ることができるのだ。もっともっと勉強して、自分の将棋を描いてほしいと思う。
廊下に出て、向こう側のエレベーターを使おうと歩いていくと、見覚えのある人がこちらへ向かってくる。藤田麻衣子女流1級であった。
「LPSAマズイですよ。(たぶん)1勝5敗ですよ」
と報告する。今期の藤田女流1級は期待できた。前日、藤田女流1級が金曜サロンに所用できたとき、ほとばしる気合を会員のみんなが感じていたからだ。
LPSAには、午前の惨状を話して、緊張してしまう棋士と奮起する棋士がいるが、藤田女流1級は後者である。いつもは「愛すべき敵」だが、今回は「同好の士」と言ってもいい。
藤田女流1級も眉間にシワを寄せ、事態の深刻さを認識したようだ。ここでハッパをかけたのは、いまでも正解だったと信じている。
私は神保町まで出て、「日高屋」の中華そば(290円)と、餃子(190円)を食す。ずいぶん豪華な昼食であった。
[つづく]
この日は夕方から所用があり行く気はなかったのだが、どうにか1回戦だけは観戦できるので、朝のんびりして、現地へ向かう。家から約40分。
私は昨年の同予選も観に行ったが、そのときは選手の入場から本戦の抽選会まで、一部始終を堪能した。今年は9時30分開場、10時対局開始だったが、10時すこしすぎに入場する。遅刻しても罰則はないので、構わない。
室内は逆U字型に対局場が組まれ、観客は各々好きな対局を巡回する。スポンサーになった人は、対局室の内側(窓側)の椅子席で観戦ができる。しかし一般観客席からの距離のほうが、盤面に近い。だからこれは「対局を見る」というより、ひいきの対局者に「応援しています」と無言のメッセージを送る意味があるのではないか。
このブログで約束したとおり、入口右側手前の熊倉紫野女流初段-中村桃子女流1級戦のスポンサーになる。左側手前の石橋幸緒女流王位-里見香奈倉敷藤花戦のスポンサーは5本集まったが、こちらも4本になった。さすがに女流棋士ファンはお目が高い。
左側手前から3つ目では、山口恵梨子女流1級-渡辺弥生女流2級戦をやっている。石橋-里見戦は黒山の人だかりで、こちらは閑散としている。こういうのを「もったいない」という。
むろん対局相手の相違もあるだろうが、同じ女子高生が指しているのに、どうしてこうも集まりが違うのかと思う。しかも山口-渡辺戦は「懸賞対局」の札すら立っていない。
山口女流1級は相変わらず可憐である。その対局姿を眺めているうち、ムラムラしてきて、いや胸がときめいてきて、彼女のスポンサーにもなることにした。本戦入りの1局まで待てなかった。
スポンサーの受付に再び向かうと、係の人に手厚く迎えられる。
「明日から食事はカップラーメンですよ」
と言って、再び新品の壱万円札をピッ、と出す。
私は昨年の予選一斉対局で2本スポンサーになったが、早くもここで去年の数に並んでしまった。予算に制限がなければ、いくらでもスポンサーになってしまいそうだ。恐ろしい。
対局室を見て回る。中倉彰子女流初段-笠井友貴アマは艶やかな一戦。中倉女流初段はふだんニコニコしているが、対局のときは凄みのある貌になる。そのギャップがよい。予想通り相穴熊になっていた。
関根紀代子女流五段-森安多恵子女流三段戦も秘かに注目している一戦。居飛車対三間飛車で、なんとなく昭和の香りを感じさせる。
山口-渡辺戦に戻る。先ほどまで山口女流1級が指しやすいと思ったが、おかしなことになっている。ちょっと攻めあぐねているようだ。
それにしても山口女流1級の制服姿がまぶしい。以前東京・将棋会館で偶然拝見した「LADIES HOLLY CUP」のときと、寸分違わぬいでたちだ。制服姿なら里見倉敷藤花や香川愛生女流2級もそうだが、彼女らと山口女流1級とは決定的な違いがある。
靴だ。山口女流1級が学生靴なのに対して、里見、香川の両女流はスニーカーである。これはよくない。
「女子高生は世界最高のブランド」なのである。頭のてっぺんから足の爪先まで、「女子高生」でなければいけない。ここも格の違いのひとつなのだ。
私は懸賞金を懸けるとき、どちらに渡ってもいいと思っている。もちろん両者への応援がキッチリ半々ということはないが、自分の手から離れたおカネなんだから、誰のところに行こうが構わない。
今回も、渡辺女流2級が勝っても後悔はない。あまり知られていないが、渡辺女流2級は、東京大学の違う学部に、2回入学している。
日本の大学生は、入学するとバカになる、と言われるが、渡辺女流2級は入学しても研鑽を怠らず、4年後も再入学を果たした。その努力はひとかたならぬものがあったろう。そんな彼女に懸賞金が行くのも悪くない。渡辺女流2級の学歴にあやかりたい。
遅れてスポンサーになったので、やっと「懸賞対局」の札がきた。しかし机の右端にポツンと置かれる。これじゃ山口女流1級が気付かないんじゃないか!? もっと中央に置いてくれよ、と心の中でつぶやく。
関根-森安戦は、関根女流五段が鮮やかな寄せで快勝。
熊倉-中村戦は、熊倉女流初段がうまく指し回し、必勝形。最後は熊倉女流初段の飛車打ちに、中村女流1級が駒台に軽く手をかけて、投了を告げた。なんだか、すごくオシャレな投了の仕種だと思った。
中倉-笠井戦は、中倉女流初段の穴熊が徐々に薄くなっていく。笠井アマの穴熊は手つかずの状態だ。やがて中倉女流初段が投了。昨年は身重のからだで伊藤明日香女流1級と激戦を演じ、終局後は大拍手を浴びた中倉女流初段だったが、今期も1回戦で姿を消した。
山口-渡辺戦は、山口女流1級がいよいよ苦しい。飛車取りに当たっているのに相手の角を取りにいったため、その角で銀を取って王手をされ、飛車を只取りされた。さらに角取りに当たっているのに相手の竜を取りにいったため、これもその竜で金を取って王手をされ、ゆうゆう角を取られてしまった。
信じられない。山口女流1級の、あの日のLADIES HOLLY CUPでの鮮やかな指し回しはどこへいったのか。
石橋-里見戦は、石橋女流王位の勝勢である。
山口女流1級の投了の場面を見るのは忍びない。ほかの将棋もあらかた終わったので、私は早めの昼食に出る。
山口女流1級は、昨年の敗退のときも、相当泣きが入ったようである。今期も早々と投了してしまうのは辛いだろう。その辛さを味わいたくなければ、将棋の勉強をするしかない。
山口女流1級は若い。これから白いキャンバスに、いくらでも自由に色を塗ることができるのだ。もっともっと勉強して、自分の将棋を描いてほしいと思う。
廊下に出て、向こう側のエレベーターを使おうと歩いていくと、見覚えのある人がこちらへ向かってくる。藤田麻衣子女流1級であった。
「LPSAマズイですよ。(たぶん)1勝5敗ですよ」
と報告する。今期の藤田女流1級は期待できた。前日、藤田女流1級が金曜サロンに所用できたとき、ほとばしる気合を会員のみんなが感じていたからだ。
LPSAには、午前の惨状を話して、緊張してしまう棋士と奮起する棋士がいるが、藤田女流1級は後者である。いつもは「愛すべき敵」だが、今回は「同好の士」と言ってもいい。
藤田女流1級も眉間にシワを寄せ、事態の深刻さを認識したようだ。ここでハッパをかけたのは、いまでも正解だったと信じている。
私は神保町まで出て、「日高屋」の中華そば(290円)と、餃子(190円)を食す。ずいぶん豪華な昼食であった。
[つづく]