日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

夏樹静子著「てのひらのメモ」

2012-03-23 | 読書
「てのひらのメモ」夏樹静子著 文春文庫
2009年刊 2012年2月文庫化



「あなたなら、どう裁くか。」
裁判員法廷をリアルに描く 傑作サスペンス
子どもを置き去りにした結果、死なせてしまったキャリアウーマン。
次々に明かされる、思わぬ真実---
赤帯の文字

夫に死なれて女手一人でぜんそく持ちの子どもを育てている母親
広告会社のキャリアウーマン
(未だにキャリアウーマンと言われるのはどうか?)
多忙な日々の中、コマーシャルの完成前のクライアント説明日
保育園から発熱したと連絡を受けて駆けつける
どうにか小康状態になり、後ろ髪を引かれながら職場に戻る。
連絡を入れるものの、子どもは出ず「眠っている」と解釈して
アクシデントの発生した仕事を片付け、予定を大幅に越えてしまい
車で送ってもらおうと恋人の元に向かう。

大丈夫だろう・・と納得させたつもりが悪い方へと転がり続け
とうとう一人で死なせてしまった。
切ない結末が裁判に掛かると意外な展開になる。

裁判員の補欠として入廷したごく普通の主婦が主人公
裁判に補充員として列席し、裁判が長引いた結果欠員の補充になる。

被告の生活が暴かれ
裁判員の生活と同時進行となる二つの物語が交錯する。

裁判の焦点は「殺意」
私達が考える「死んだ結果」と異なる視点に驚かされる。
偶発的に死んだのなら「無実」
死ぬかもしれないと放置したのなら「有罪」
被告の弁護士は「この事が罪になるのでしょうか?」
私もそう思ったが・・

父子家庭も母子家庭も毎日が戦争状態
子どもに付き添いたいものの、気を抜くと会社では危ない状況だし
仕事に一生懸命では子どもの成長が危ぶまれる
何所の家も小学低学年までは綱渡りで日々を送っている事だろう。

小さい頃から一人でお風呂に入り、
やむおえず一人でご飯を食べ、一人で寝なくてはならない。
健康でいければ自立心を養えるが
どちらかが病気になると、一気にバランスが崩れる。

そんな綱渡りで来た母親に「有罪」と言いたくはないが、、

ジワッと、胸の奥にしみる1册でした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明治神宮90年の森 | トップ | 桜咲く »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事