高齢者の『足の確保』を目指す公共交通の充実は緊急の課題である

2018-01-04 10:42:13 | 日記

  高齢者の『足の確保』を目指す公共交通の充実は緊急の課題である

 

 若干古いが、1年半前に男子高校生をはねる事故を起こした90代の女性に対する取材の記事を取り上げる。「女性が居住する地域は公共交通が乏しく、車を手放し難かった事故前の暮らしを明かにした。女性の運転歴は事故時まで約50年間。農家でミカンを作っていたため『リヤカー代わりに』と40代で免許を取得した。また最寄りの鉄道の駅は直線で7キロ以上先にあり、近くのスーパーも歩いて片道1時間の距離。そこで農作業以外にも車を使うようになり、買い出しなどは車がなくてはならない存在になっていた」と老女は語っている。(毎日新聞・2017年5月6日)

 今や、高齢者の運転事故が社会問題にまで発展している。そこで幾つかの自治体は、高齢者の免許返納を促進する支援として返納申請者に対し1回、あるいは3年間を限度としてバス・タクシー利用券などの交付を行っている。しかし多くの自治体は1回のみ○○円のバス・タクシー利用券の支給というのがほとんどである。しかしそれでも車を手放すことのできない生活環境にある住民も少なくない。その事例が前記の90代の運転事故であり、さらに老々世帯、独居世帯の増加の中で「外出の足」がなくなっている事実も見逃すことができない。

 福島県喜多方市は(人口8万人・ラーメンと蔵屋敷が有名)返納者に対し、申請時に1回のみ400円のタクシー補助券を100枚支給している。同時に公共交通の見直しをはかり「デマンド交通」(予約型乗合交通)を取り入れた。その内容は、喜多方市内を5つのエリアに分類し、そこに住む住民が自分の自宅前から「乗合バス」に乗車しJR駅前に集中するコースとなっている。

 以下一つの例示を紹介したい。石堂地区に住むAさんの一日である。Aさんは喜多方市役所に行くため前日に予約センターに電話をして予約を取り付ける。

 ◆当日自宅前を7時30分に乗車する。喜多方市役所前での下車は8時03分。時刻は、基準ダイヤによるものであり、利用者の   自宅の位置とコースにより乗車・下車時刻に一様ではない。当然遅れは発生する。

 ◆喜多方市役所で所用を済ませる。喜多方市役所前の11時37分の乗車時刻に合わせて買い物などをする。そして石堂地区行き12時07分のバスに乗車、自宅前下車となる。

 ◆時刻表によると住民地区からJR駅方面が午前2便・JR駅から住民地区方面が午後3便となっている。

 ◆利用料金は次の通りである。(市内共通)

 乗車券「1回大人400円、子ども250円」・回数券「大人20枚つづり7.000円、子ども4.300円」・定期券「大人1ケ月13.300円、子ども8.000円」 

 ◆利用件数 平成28度2.6000件 ◆利用者数 利用登録者1500名 ※高齢者の8割が通院利用となっている。

 喜多方市のみならず、高齢者にとって「足の確保を目指す公共交通の充実」は緊急の課題となっている。しかし高齢化の進行の中で、しかも団塊の世代が一斉に後期高齢者となる2025年問題を前にして、政府は高齢者福祉にかかわる財政的締め付けを強めてきている。当然にして自治体も右ならいとなっている。かつての「高齢者寄りの要求」がそれなりに実現した時代ははるか遠くのものとなりつつある。だが「高齢者の足となる公共交通の充実」は緊急な課題であることは間違いない。「高齢者の『足』がなくなった。日本死ね」の世論を高める必要があるのではないか。

 遅ればせながら、私たちの市でも「市民の会」を立ち上げ第一回の行政交渉に入った。是非全国的なうねりが作れないか。この紙面を通して提起したいと思う。


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