岩波ホールで、映画「ミンヨン 倍音の法則」を観ました。
監督は佐々木昭一郎氏。
彼はこの映画の中で亡きご両親の魂とその真実を蘇らせようとしたのですね。
父親はもとジャーナリストで、戦時中に反戦活動をしたことで軍に暗殺されたそうです。当時小学生だった佐々木監督の目の前で。
監督がどうしても伝えたい主題。それは反戦です。
敗戦後の日本に流れる美しく楽しい音楽の数々は再生の歩み。
韓国人のミンヨン(本名)が澄んだ声で歌います。
ミンヨンの生きる力と夢の基調はモーツアルトのピアノ協奏曲。
モーツアルトは天才を超えた人だったのですね。
ミンヨンは翻訳や音楽界の司会者の仕事を見事にこなします。
あるシンポジウムのシーンが印象的でした。
アメリカ人が携帯電話やその他の電子音も美しい!と言います。
それに対し日本人の指揮者が猛然と反論します。
音の美しさとは何か?もちろん結論は出ません。
この辺も戦争やテロへと駆り立てる何かが隠されているように感じてしまいました。
私は最近この電子音が騒音としか聞こえないのです。
このシンポジウムの同時通訳をするミンヨンの妹は日本人の指揮者が「何とバカげたことを…」という部分を「バカ!」と伝えたことにより大変なことになります。ちょっと笑えました。
不思議な映画でした。
ここはどこ?
わたしは誰?
一瞬迷路に入り込みましたが、パンフレットを見てわかりました。
じっくりと観て、そして考える。
心の耳を澄ましてじっくりと聴く。
まさに映画のワクを超えた映画でした。
この映画をご覧になったR・Oさん!
あんまりモーツアルトが心地よかったとみえ、ずっと寝てしまった…と、笑っておられましたが、私はこの映画の存在を知らなかったので感謝の気持ちでいっぱいです。
平安を音で表現するならば倍音。
倍音は円満
どこで切ってもまた繋がる円。
人々との交流や音楽の奥深さはこの倍音(ハーモニクス)にあったのです。(荻山貴美子)