◆演目について
これは 何度か上演されているようですが、私はやはり初見です。
◆配役
大石内蔵助(吉右衛門さん)
内蔵助奥さん:おりく(芝雀さん)
内蔵助長男:大石松之丞(種太郎くん)
逃げ出す国許家老:大野九郎兵衛(芦燕さん)
内蔵助と家臣の板ばさみな番頭:奥野将監(東蔵さん)
九郎兵衛ストーカー?:岡島八十右衛門(松江さん)
From江戸の好戦派その1:奥田孫太夫(歌六さん)
From江戸の好戦派その2:堀部安兵衛(歌昇さん♪)
From江戸の好戦派その3:高田群兵衛(由次郎さん)
好戦派に遅れて到着From江戸の内匠頭お小姓組その1:片岡源五右衛門(信二郎さん)
好戦派に遅れて到着From江戸の内匠頭お小姓組その2:磯貝十郎左衛門(亀寿さん)
この話では奥さんの方が活躍な潮田又之丞(吉之助さん)
徳兵衛にからまれた潮田奥さん:お遊
外部からの城明け渡し説得要員:戸田権左衛門(彦三郎さん)
内蔵助幼馴染で元浅野家家臣:井関徳兵衛(富十郎さん)
徳兵衛息子:井関紋左衛門(隼人くん)
最後の場面で内蔵助を迎えに来た大石家郎党:瀬尾孫左衛門(梅蔵さん)
◆あらすじもどき
第四幕:播州赤穂城下大石内蔵助屋敷玄関/同 中座敷/同 元の玄関
城明け渡しか、篭城か、その議論は長く平行線の一途。
しかし、明日にも城明け渡しの使者が到着しようというそんな日。
今日の評定では、どうあってもその結論をださなくてはならない
という状況です。
そんな中、内蔵助の代参で 旧主の供養に寺に赴いた内蔵助の次男坊と長女に、
道中で絡んできたのは、奇妙な家紋の鎧櫃を背負い、槍をもった井関徳兵衛。
徳兵衛は、内蔵助を前名の喜内で呼ぶ幼馴染。
元は浅野家家臣であった井関徳兵衛は、扶持を離れた身ではあれど、
旧家浅野家の一大事と聞き、息子:紋左衛門と駆けつけ、内蔵助に会うために
その子供たちに絡んだのでありました。
徳兵衛は内蔵助に城を明け渡すのか、篭城はしないのか、と詰め寄りますが
内蔵助は「それはこれからの評定できまること」とかわし、篭城するにしても
浪人させた徳兵衛を城にいれるわけには、世間体の上からもできることではない。
と井関親子をつっぱねます。
第五幕:赤穂城内表座敷竹の間/同 黒書院の間
竹の間では、江戸から赤穂にはせ参じた
堀部安兵衛や片岡源吾らが 内蔵助との面会を奥野将監に訴え、
内外の調整外交に忙しく安兵衛らに面会する時間もとれない内蔵助は、
今も黒書院で城明け渡しの説得にきた浅野家親戚筋の家臣に応対しています。
それでも最後の評定を前に安兵衛らはようやく内蔵助に面会がかないます。
安兵衛・源吾らがどうしても内蔵助に会いたかった理由。
それは吉良がピンシャンしてる事実を内蔵助に伝えること。
肝心の内蔵助はその報告にも「吉良が息災、それが?」とはぐらかすものの、
安兵衛の
「20~30人あれば、吉良邸への討ち入りは可能」
との言葉に鋭く反応をしめしたりもします。
しかし、内匠頭の弟:浅野大学による御家再興の話をもちだし、安兵衛らの
吉良への仇討ちの気持ちをなぶります。
そんな中、「小禄の大名だろうが 大大名だろうが、御家を再興したところで、吉良を討ち取らない限りは、浅野大学の武士道は立たない。吉良の安穏な姿を尻目にした御家再興など 自分は嫌だ!!」と訴える若い磯貝十郎左衛門に 内蔵助の眼が輝き、
いよいよ最後の大評定が始まります。
そして最初は300人はいようかという 人数が最後は60人弱まで減った家臣。
彼らの連名状の血判を前に、ついに内蔵助の本心が明かされます。
第六幕:赤穂城大手御門外/赤穂城外往還
お城の外では徳兵衛さん息子にあれこれ 赤穂の街を案内していますが、
どうも息子の言動では、「なにか」を実行しようとしていることがある様子。
そんな中、通りがかりの実は間者の中間から、城を明け渡すことが決まったことを
知った井関親子は、その「なにか」の実行を決意し、道を急ぎます。
お城から出てきた内蔵助が見つけたのは、すでに事切れた徳兵衛さんの息子:紋左と
その脇に座り込む徳兵衛さん。
こういう事態も想定の範囲にいれていた内蔵助は、避けられなかった結末に
息子と同い年の徳兵衛さんの息子の死をいたみます。
徳兵衛さんは そんな内蔵助に本心を明かせと詰め寄りますが、
なおも口をとざす内蔵助に、「それなら」と脇差を腹に突き立て、
「死出の旅路についた自分だ、遠慮なく話せ」と内蔵助にせまります。
これには内蔵助も口を割りますが、まだ、はっきりとは言わない。
徳兵衛さんは、さらに脇差で腹をかききり、「耳が遠くなった。はっきり言え」
とせまり、ついに内蔵助からはっきりと仇討ちの意志を聞きだした徳兵衛は
穏やかに息絶えます。
徳兵衛に家紋入りの白幡を、息子:紋左には鎧をかけてから歩き出した内蔵助は
ふと振り返り、遠くに赤穂の城を望んで、涙にむせびますが、それも暫時のこと。
城に背を向け、これからの長い道のりに向かって静かに歩き出します。
◆のたりの眼
内蔵助の幼馴染で元浅野家家臣である井関徳兵衛の登場が、
ドキュメンタリーからドラマになったとでも言えばいいでしょうか、
そんなこれまでの場面と違う趣を この場面にもたらしてます。
今月の3話の中では、やはり、一番、見ごたえがあるのはコレかと
思われます。
【役者さん】
・吉右衛門さん
腹のそこから出るような声が、太く、でも柔らかに響きます。
昼行灯で一生を終えたかった という前の話でのセリフを思い出すと、
卒なく外部の連中や九郎兵衛と次々と対談を果たす内蔵助の心中は
いかばかりかと思い グッと来ます。
吉右衛門さんの内蔵助には、私にそう思わせる何かがありました。
・芝雀さん
艶っぽい! 武家の奥さんなんでもっとこてこての白塗りの
厳格な奥方のイメージだったんですが、芝雀さんの奥さんは
顔の拵えも赤みを帯びてて、艶っぽいです。
でも、それでも武士の妻らしい威厳といいましょうか、
凛としたところがあって、ステキでした♪
九郎兵衛を追いかけてきた松江さんの岡島をぴしゃりと言い負かしたのは
気持ちがいい場面でした♪
・歌昇さん
安兵衛~ 髪型のせいでしょうか、なんとなく若いというか、
若衆風に見えてしまいました(^_^;)
が、歌昇さんの眼は、安兵衛と聞いて納得できるそれです。
内蔵助の話を身を乗り出して、じっと眼をみて聞いている姿は、
歌昇さんが一番顕著でした。
・歌六さん
血判状に署名するときの筆さばきが美しく、さぞや達筆であろう という感じです。
内蔵助の話を聞いているときの態度では、歌昇さんの安兵衛と対極に、
背筋をピンと伸ばして、うつむいて、耳だけで聞き入っている姿に年長者の
落ち着きが光ってました。
・内蔵助の次男坊
声の通りもセリフのキレもよく、眼に留まりました。
梅丸君かと思いきや、劇団の子なんですね。
【その他】
・女形の華やかさ
しかし、この話に来て、はじめて「今までの話には男衆しかでてこなかった」
ことに気がつきました(^_^;)。
そして、女性の存在がいかに舞台に華をもたらすか、ということも
はからずも よくわかったようなきがしました(^_^;)
・内蔵助の家族
次男坊の子は、大きくなったら、さぞいい父親の補佐役に
なれたんじゃないかと思うくらいのいい子に感じましたが
その後、どうなったんでしょうねぇ。
確か、三男坊は、後年、名誉回復で仕官もかなったものの、
父親のイメージに押しつぶされて、ヤサグレた(^_^;)というのを
沢村ふじ子さんの小説だったかで 読みました。
その小説は内蔵助の奥さんを主人公にしたお話だったと思いますが
それを読んでから、内蔵助という人の統制力・計画力・実行力など
すごい人だったとは思うものの、家族への態度を思うとどうにも
人間としてどうよ、それは。と思ってしまうことが。
今回もお芝居観てて、「内蔵助さん!これだけ、旦那に理解のある
奥さんなのに、その態度はつれなかろうよ!!」と思ってしまいました(^_^;)
・最後のセリフ?
新聞の評なんかを見ると、今回の上演は、原作に忠実にして、
いつも上演時に言うお決まりのせりふを言わずに終わる
というのをよく見かけるのですが、この「お決まりのせりふ」って
なんなんでしょう?気になります。
もし、ご存知の方、いらしたら、ぜひ、教えてくださいませ。
・「先に行くぞ」「やがて行くぞ」
虫の息の徳兵衛さんと内蔵助が交わす言葉です。
男の友情ってやつですねぇ♪
しかし、最後の徳兵衛さんの言葉
「道草を喰うな 内蔵助」
これは見事に無視されたってことですかねぇ(^_^;)
・一ヶ月。
最初の刃傷のあった日が3月14日
江戸から第一・第二の使者が到着したのが3月19日
城あけわたしが4月19日
これだけのドラマが一ヶ月の間に展開されたというのが
長いような気もするし、短いような気もします。
当事者たちにとっては、やはり短い一ヶ月だったんでしょうねぇ。
◆花道度:低
ラストに内蔵助のひっこみがありますが、いいところは3階からでも十分
見えます。やっぱり国立ってありがたい♪
【1】江戸城の刃傷 へ
【2】第二の使者 へ
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