今月、1番の話題の「京鹿子娘二人道成寺」。
玉三郎さんと菊之助さんという、今、これ以上はなかろうという
美麗コンビの花子でございます。
初演の時も見ています。が、「二人出てた。」「きれいだった」
くらいしか、覚えてません(^_^;)
で、今回、前回みれなかった花道見たさに3階A席最前列を奮発!
が、七三が見えない~ スッポンも見えない~_| ̄|○
やはり、花道の玉さん・菊さんを堪能するには、もう少し、張り込まないとダメなようです…
気を取り直して。
なんせ、踊りですんで、ツラツラと。書いていきます。
まず、所化さんたちが登場。総勢23名。
座る姿は既に悟りを開いてるかのごとくに見えた門之助さんを筆頭に
「花子生娘」説を唱える亀蔵さん
頭ひとつ下がって、横幅ひとつ増やした猿弥さん
坊主になると、飛びぬけた清清しさがわかりにくくなる
美男子コンビの松也さんに薪車さん
前列に入った延夫さん
折り返しちょっと後ろで残念後列組の猿四郎さん
その次に並んだ錦弥さん
今回、筋書きかわなかったんで、このくらいしか確認できなかったんですが、
確か、欣也さんもいたはず。見逃したな~。<(ーー;)
この日のマイマイ尽くしは吉之助さん。
長兵衛の舞台番と同一人物とは思えないほど、柔和な、いい表情だったので、
ほんとに同じ人?と思ってしまいました(すみません、吉之助さん)
【2/17追記】
どうも、マイマイ尽くしは吉之助さんではなった。ことが判明(^_^;)
中村勘之丞さん が正解だったようです。
でも、イヤホンガイドの解説で「中村吉之助」と言ったと思ったんですが・・・
私の勘違いか イヤホンガイドの解説違いか・・・
ま、どちらにせよ、どうりで、舞台番と同一人物とは思えなかったわけです(^_^;)
吉之助さん、勘之丞さん、まちがえちゃって すみませんでした~m(__)mm(__)m
ここで、ふと「菊之助さんが出てるのに、菊市郎さん・菊史郎さんご兄弟の
お姿がない??」と思ったら、いました、いました。お二人は菊之助さんの
裃後見で登場でした。あー よかった。
さて、花子の出です。
揚幕から出てきたのは菊之助さんのみで、玉さんはスッポンから。
いずれも、私の席からは見えませんが。(T_T)
花道の入り口にやってくるのを一生懸命双眼鏡で見ますが、
どうにも視界は1~1.5人が限界。二人フルには見えないんですよねぇ・・・
それでも、1人づつ何回か来てくれたので、見ているうちに、つい間違い探し。
全く一緒の拵えなんですが、こうなると、見つけたくなるんです。違うところを♪
というわけで、さがしましたら、一箇所、簪の真ん中についてる模様だけが違ってました。
玉さんは水色とピンクのお花で、菊之助さんは丸に扇。
どうも、イヤホンの解説聞いてる限りでは、お二人の定紋にちなんだものだったように
思いますが・・・さて?
玉さんはスッポンに退場して、本舞台へは菊之助さん1人の道行き。
入り口のしおり戸をはさんで 所化さんたちと問答に入ります。
ちなみに花子を見つけた所化さんたちの間で「白拍子」か「生娘」か
の論争が起きるんですが、この「生娘」に観客の反応が。
(私も反応しちゃいましたが(^_^;)
でも、この「生娘」って、素人娘 くらいの意味・・・なんじゃないのかなぁ
と思って、gooの国語辞書引いてみましたが・・・が・・・生臭坊主め・・・。
えっ、ナニ?反対語に「生息子」なんて言葉、あるの??
これは、発見。でも、IMEはさすがに「キムスコ」で一発変換はしてくれませんでした
・・・一太郎ならいけるかな。
すみません、脇道にそれました。
で、問答の末に白拍子に烏帽子を渡して踊ってもらうことになります。
烏帽子を三方に載せて花子に渡すのは門之助さん。
三方を持って花子が下手に引っ込んだあと、
役目を終えた所化さんたちも下手へ入って行きます。
台詞の多い筆頭所化さんたちは、実は、これで出番はお終い。
さて、烏帽子をかぶって花子が出てきました。二人います。二人います。
玉さん花子が菊さん花子の背後に引っ付いています。
イヤホンガイドによると蛇を思わせるという蛇行ルートをたどり、花道についた二人は
鐘を振り返り扇で指します。
ここ、玉さんしか見えなかったんですが、この時の玉さん、オートフォーカスのピントがサッと合ったように気配が鋭くなり、手首を返す動きも鋭く、鐘をキッと見据えた
その姿は、とてもカッコよかったです。
ちなみに花道は最初とここだけです。(たしか。)
同じ赤い着物で踊り狂うお二人。
「違いはないか~」とナマハゲ状態で探しているうち、
菊之助さん花子の方が 大分幼く見えることに気がつきました。
で、玉さん花子はちょっと薹が立ちすぎてるような気も。
この場面のお二人を見てると、
「母親の怨念の亡霊にとりつかれた娘」
という構図に見えます。
鞠つきをするところの鞠は、菊之助さんは 袂から隠し玉を
玉さんは桜の花びらを集めてハンドメイドします。
鞠つき自体は 菊之助さんが若さで しゃがんだまま すばやいリズミカルなつきを
繰り出しながら舞台を一周すれば、
玉さんは、大人の貫禄で、ほとんど動かず、つく回数も少なめですが、
そのつく手先の美しさにうっとり。
烏帽子を取る場面は、玉さんが鐘の釣紐にひっかける「成駒屋型」
菊之助さんは 三方に載せて 三方ごと掲げる「音羽屋型」
なるほどね~二人でやると、一度で二種類の型が楽しめていいですね~
いっそ、各自がお家の型を持ってきて一度に踊る「踊比八人道成寺」
なんてやったら、面白いかも。
それとか歌舞伎座で「道成寺歌舞伎」と称して、ノーマルな道成寺から
この「二人道成寺」や「紀州道成寺」、道成寺つながりで「日高川入相船」とか、
いろんないわゆる「道成寺モノ」を一挙上演するって興行は、どうでしょう?
松竹さん。
こうやって考える限りは、結構、楽しそうに思えるんですが♪
広がる夢はおいといて。
赤い枝垂桜の模様の縫い取りの衣装から引き抜いて薄い浅葱色の衣装。
わりとすぐ引っ込んで、その後は、浅葱色の衣装の上だけむいてその下の
朱鷺色の着物をみせた菊之助さんが、三重笠を持って登場。
これにからむ所化さんが、これまた、私のご贔屓そろい。
延夫さんに 猿四郎さんに 錦弥さん・・・ でもね、最大の難点は
菊さん花子を真ん中にはさんで左右に分かれてくれたこと。
花子も見たい。左右の所化さんも見たい。
あぁ、ドラえもん、私にもうひとつ目を頂戴。
そんな嘆きはほっておいて、今度は玉さん花子が登場して
手拭をたくみに使った「恋の手習い」になります。
これは、途中から菊さん花子も参入。
ここの場面では、二人の花子が、赤い衣装の時とはまた違った構図に見えてきます。
さっき赤い衣装の時は 幼い印象だった菊之助さんは、
ここでは、柔らかさの奥に強さを秘めた印象の傾城に、
玉さんは 高尾太夫のような、知性と凛とした雰囲気の漂う傾城に
見えてきて、
二人して、定員一名(ってことはないとは思いますが)の松の位の太夫の座を
狙って、けん制しあってるように見えてきます。
この場面で使う手拭は、真ん中に菊之助さんと玉さんの定紋がならんでいるもの。
場面の最後に、後見の座に下がった二人が、振り向き様 ピシュピシュッと
直線を描くように手拭を客席に投げます。
これ、1階前方の席にお座りの方、もし、手拭撒きがあるなんて知らなかったら
いきなりで、怖くなかったかな。
その後、花子たちに続けて、両脇で辛抱強く座ってた所化さん 左右
(たしか)7名づつが、袂から同様の手拭をだして、客席にバラまきます。
内心、
「根性あったら、ここまで飛ばしてみぃ」
「いや、無欲だ。無欲の勝利だ」
「もしかしたら、ご贔屓さんお手投げの手拭ゲットってことも??」
という千地に乱れる私の心なんかお構いなしに、あっけなく手拭まき終了。
この夜の最長不倒距離は2階上手の袖だったんでしょうか?
2階上手の袖は二人の花子の視線もよく行く用で、あそこもなかなかこの演目には
お勧めかも。
さて、花子たち着替えの合間は、十丁十枚の 唄い方さんに 三味線さんに
傳左衛門さんを筆頭に太鼓が二人、笛が二人とパワーアップしてる囃子方さん
も加わって、耳にここちよいリズミカルな演奏がつなぎます。
この後、鞨鼓を使った踊りが入り、その次に出てきたのが、
藤の柄が印象的な衣装を着た菊之助さん。
この藤の柄の衣装は、今回の数々の花子の衣装の中でも、私の印象に
とても鮮やかに残る衣装でした。
ちなみに、この踊りは普段の道成寺では あんまりかからないとか。
そんな貴重な踊りだというのに、耳にここちよいリズミカルな演奏に
私の意識は飛んでいこうとします。(^_^;)
というわけで、この前の鞨鼓の踊りあたりから、
この次に続く振り鼓の場面あたりは、完全に意識は飛ばなかったものの、
大分、私自身が揺れてたみたいです(^_^;)
さて、これらの場面を経て、いよいよクライマックスの鐘入りに向かいます。
が、その前に花子さんひとつ脱皮。
最後の衣装は白地に薄墨で花を書いたような シンプルなモノクロの世界。
この書かれてる花ってのが、なんの花かというところまでわからなかったんですが、
あれは桜? でも桜とか梅のような丸い感じの花びらというより、菊や薊のような
細長い花びらの図柄にも思えました。
あれ?たしか最後って、キンキラで▼←こんなウロコ模様のお着物に
なるんじゃなかったっけ? と思っていたんですが、今回のお着物の図柄が、
遠目にみると、ちゃんとウロコが随所に見得る白蛇っぽく見えてくるから
なんとも不思議。
このデザイン、思いついた人、すごいです!
◆その他
・二人の花子の意味するところ。
ブログにいろんな方のいろんな意見がでてて、面白いです。
「道成寺強化月間」実施中!(^^)!のasariさんとこのブログ(Riddle me this!:
http://1234asari.jugem.cc/)が、asariさんの感想と、色々な方のご意見をまとめてくださる以下の記事を書いていらっしゃいます。助かります。便利です♪
京鹿子娘二人道成寺 纏(2006/2/13)
で、私は 深く考えるのはあまり得手ではないのですが、
私もそれなりに考えてみました。
今回の、二人のうち、玉さんは、最初は菊さん花子の残像のような、
あるいは、菊さん花子に取り付いた 幽霊のような、そんなおぼろげな存在
だったのが、踊り進めていくうちに、今度は菊さん花子の
鏡に映る姿:鏡像になります。
そして、最後の鐘の上に上る場面では、阻止しようとする所化さんたちを
「がぁっ!」と威嚇しかける菊さん花子の手を引くように鐘の後ろに
引っ込みます。
つまりこの時点は、玉さん花子は、菊さん花子と、全く別個の存在に
なってるわけで、
さらに、この時点で、二人のいる次元も、今までの現実と幽界、
現実と鏡の向こう という違いがなくなり、同じになっているのではないか
と思います。
ただ、菊さん花子が玉さん花子サイドに行ったのか、
それとも玉さん花子が残像→虚像を経て、ついに実像になり得たのか、
そのへんは、どうにもわかりませんが。
考えれば考えるほど、ミステリアスな「道成寺」であります。
・二人道成寺
元々、二人道成寺というのは、二人で踊る場面を役割分担して行うものだったらしいです。
で、体力低下を補ったり、芸の継承なんかにも役立ててたようです。
玉さんの場合も、両方の理由にあてはまるところがあるんでしょうが、
転んでもただでは起きず、これだけの話題の舞台にしたててしまうところが
さすが玉さんです。
これを参考に、勘三郎さんとこで「三人道成寺」なーんて、できないでしょうか?
結構、面白そうなんですが。