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日本語教師のための心理学

2008-10-13 | 認知心理学
海保’*01/8/11
日本語教師のための心理学 新曜社
海保博之(筑波大学「心理学系」)

1章 知の心理学エッセンス

1節 知の世界を成り立たせているもの
●知識と知力---知の内容
●情報処理モデル---知の構造と機能
●注意--知の資源
●メタ認知---知の世界のモニタリングとコントロール

2節 知識の獲得と運用
●異文化での知的活動を支えるもの
●知識の獲得過程

概要*************
 日本語学習者の知の世界を知るために役立つ認知心理学的な視点と基本的な知識を紹介する。まず、知の世界を成り立たせている機構と機能を、家とそこに住む人々というアナロジーを使って説明する。ついで、知の世界で中核的な役割を果たす知識の獲得過程について、日本語学習者の知識獲得を想定して考えてみる。
****************

1節 知の世界を成り立たせているもの

●知識と知力---知の内容
 たとえば、「外国人が日本語を操る」ときに展開される知の世界を成り立たせているものを考えてみる。
 まずは、日本語についての知識(宣言的知識)が必要となる。コップを前にして、「コップ」という語彙が知識として頭の中にないと、「コップ」とは言えない。
 もっとも、そのためには、物としての「コップ」が、「コップ」であるとする認識の成立が前提である。その認識を支えているのが、コップの表象である。表象とは、外界についての抽象的なシンボル世界で、イメージや命題(注1)から構成されている。乳幼児では、表象の形成が未熟であるが、日本語を学ぶ外国人では、表象はほぼ完全に構築ずみと考えてよい。
 知識と表象があっても、「コップ」と発声するためには、もう一つ、コップとその表象とを照合して、日本語の対応する語彙を引き出して、声帯を動かす力が必要となる。この力を支えているのが、手続的知識である。
 手続的知識は、行為を支える暗黙かつ自動化された技能にかかわる知識である。俗に言う、記憶力や思考力など「---力」を支えている知識である。「cupをカップと言う」は宣言的知識であるが、コップを目の前にしてコップと言えるのは手続的知識があるからである。
 母語の運用のほとんどは、手続的知識によって支えられているが、外国語の運用の初期段階は、理解、発話などすべての言語活動において、宣言的知識が支配的である。外国語の習得の主流は、宣言的知識の運用訓練を繰り返すことで、それを手続的知識とすることである。
                             
             宣 言 的 知 識
   コップの絵--->命題表象    イメージ表象
             丸い
           硬い
             凹んでいる

   発話/コップ/<----  手 続 的 知 識
               身体的表象? 
      

図1-1 知の世界を構成するもの          

 さらに宣言的知識と手続的知識とについて話を続ける。
 宣言的知識は、エピソード的知識と意味的知識とに分かれる。エピソード的知識は、体験を通して身につける知識であるところから、体験知とも呼ぶにふさわしい。異なる文化では異なる体験をするので、我彼の知識は、この体験知において異質性が顕著になる。
 これに対して、意味的知識は、普遍的かつ真理性基準を満たしているもので我彼の違いは程度問題に過ぎない。体験知に対応させて、これを論理知と呼んでおく。
 手続的知識にも、「いかに--するか」というルールの形で提供されるルール・ベースの宣言的知識に基づくものと、モデル(師範)の模倣という形で提供されるものに基づくものとがある。いずれも、長期間にわたる、認知的および運動的な技能訓練を経ることが必須である。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (サトシ)
2008-10-13 16:18:18
拝見させていただきました!
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