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集中力ってどんなもの

2017-11-17 | 健康・スポーツ心理学

「集中力ってどんなもの]

●集中力は「あるけど見えない」
 小学生でも集中力という言葉は知っているし、集中しなさいと言えば、それなりの工夫さえできます。
 しかし、では、集中力そのものを「みせてほしい」といわれれば当惑することになります。
 集中力に限らず、心のほとんどの機能はこのように、「存在は実感として認めるが、見ることはできない」という性質を持っています。
 こんなときにその機能を説明したり考えたりするために便利な仕掛けが、「たとえ」でです。
心理学では、何かにたとえて心を研究するという研究方略を、これまでしばしば使われてきました。
 というわけで、集中力ってどんなものという話をするために、集中力をエネルギーにたとえてみたいと思います。
もっとも、たとえには、過剰に一般化してしまう危険性はあります。それでも、わかりやすさには代えがたいところがありますので、随所で使ってみたいと思います。

●集中力は心身のエネルギーである
 およそ動くものには、エネルギーが必要です。車にはガソリン、水車には水、電車には電気という具合です。
人の心身を動かすのに必要なのが集中力です。集中力は心身のエネルギーなのです。
エネルギーなので、それがなければ心身は動きません。たくさん使えば、心身も活発に動きます。
さらに、車のエンジンを心身の機能、集中力をガソリン、そのコントロールをアクセルにたとえて、集中力の特徴を指摘してみます。
①枯渇する
 長時間ドライブではガソリンがなくなってきます。集中した状態が長時間続くと、どこかでガス欠状態になります。長時間でなくとも、心身の不調などで補給がうまくいかないと枯渇します。ガソリンタンクに穴があくようなものです。
②補給が必要
 したがって、補給が必要となります。補給は、ガソリンの場合は外部からですが、集中力というガソリンの補給は内部からもできます。「集中!」の声かけが外部からの補給の例、「がんばるぞ!」の気合を入れるのが内部からの補給の例です。
③変動する
 エネルギー満タンでも、その使い方、使われ方によって集中力の発揮には時間変動があります。それは、ドライブと同じで、状況ややるべきこと、さらに心身の状態によってアクセルの踏み具合が異なるのに似ています。
④容量は人さまざま
 集中力を蓄えることのできる容量、補給や使い方は人によって異なります。集中力の高い人、低い人がいますし、その発揮の仕方のうまい人、下手な人もいます。
⑤質がある
 集中力はその高低だけではありません。ハイオクガソリンのようなものも、レギュラーのようなものもあります。
⑥コントロールできる
 ハンドルで方向を、アクセルでスピードをコントロールできるように、集中力もその方向や程度をある程度コントロールできます。

● 集中力を考える枠組み
 集中力を車のエンジン系にたとえてみました。これで大雑把なイメージは伝わったのではないかと思います。
 このイメージを本連載の理解のためのベースにしていただくことになります。
その上で、連載の前半(第2回から第7回)では、次の枠組みで、ミス防止との関連での話をすすめていきたいと思います。
 集中力を2X3の枠組みで考えます。
① 集中力の3つの機能――選択、配分、持続
 集中力には、何に向けるか(選択)、それにどの程度集中するか(配分)、さらにそれをいつまで持続させるか(持続)、の3つの機能があります。
② 受動的集中力と能動集中力
集中力はみずからコントロールできる能動的な側面と、否応なしに集中させられる受動的な側面とがあります。車の運転で前方に集中するのは前者、点滅信号に一時的に集中させられる後者になります。
 本連載の前半(2回~7回)では、これを組み合わせて2x3の枠組みのもとで、集中力によるミス防止の話をしてみます。





表 集中力の「3x2」特性<<表にしてください
     選択    配分   持続  
能動的  TVを見る 前方注意 休む
受動的  大音響に  歩きなが 騒音の
     びっくり  らの携帯 中の作業