ほめ言葉「ほめ上手は誰からも好かれる」
●あめとむち
人を手っ取り早く動かすには、あめ(賞)とむち(罰)を使います。
信賞必罰という言葉があるくらい、賞罰は、人を動かす手段としては、非常に有効です。
あなたの毎日を考えてみてください。いかに、賞罰の仕掛けがあちこちに、しかも巧みに用意されているかを発見してびっくりするはずです。
たとえば、
・ 一月働いたら月給がもらえる
・ 業績を上げたら昇進
・ 失敗したら叱られた
いくらでも挙げることができるはずです。何が賞で何が罰か、おわかりですね。そしてまた、それがどのように次のやる気の程度に影響してくるかも、おわかりですね。
私たちは人間ですから、動物とは違って、賞罰に言葉も使うことができます。
ほめ言葉と叱責言葉が使われます。これが、あまりに有効なので、つい動物にも使ってしまうくらいです。
さて、そのほめ言葉。どうしてそれほど有効なのでしょうか。どう使えばよいのでしょうか。
その前に、あまりに有名なのでご存知かと思いますが、山本五十六連合艦隊司令長官1節を紹介しておきます。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
さらに、
「せじ食わぬ馬鹿はおらん」
なんてものあるそうです。
● 言葉の働きは多彩
さらに、本題に入る前に、もう一つ。言葉の4つの働きを確認しておきます。
言葉には大きく、認識の道具としての役割と、コミュニケーションの道具としての役割
があることを確認しておきます。
認識の道具としての言葉にも、自分の外の世界を知るためのものと、自分の心や振る舞い
を知るためのものとがあります。
外の世界を知るための道具としての言葉とは、たとえば、初めて行った外国旅行。第一日目に、その日、目にした事柄を日記に書くことを考えてみてください。
たいていのことは言葉で表現できるはずです。
それがその世界を知ることに他ならないのですが、しかし、よくよく考えると、言葉にならない世界も見聞したはずです。ほとんどの場合は、言葉にならない世界は無視されたまま(認識されないまま)にされてしまっていることにも気が付くはずです。
言葉が認識の道具として使われるというのは、こういうことです。言葉がないと見える世界も見えなくなってしまうこともあることは知っておいていいことです。
このことは、自分の心や振る舞いを知るための道具としての言葉でも同じです。
心や振る舞いの複雑かつ微妙な動きのすべてをあなたは言葉で表現できるでしょうか。
たとえば、青年期まっただ中くらいの年頃になると、表現できない心や行動の世界が急速に拡大します。そのもやもや、不愉快さが青年期特有の心や振る舞いの混乱をもたらします。
もうひとつ、コミュニケーションの道具としての言葉の役割については、項をあらためて考えてみます。
● ほめ言葉が威力を発揮するのはなぜ
コミュニケーションを、何をねらってコミュニケーションするのか、という観点から分けてみると、次の3つになります。
①カウンセリング場面でのそれのように、気持ちに対して働きかけるもの、
②説明場面でのそれのように、頭の中の知識に対して働きかけるもの、
③指示場面でのそれのように、相手の振る舞いに対して働きかけるもの
ほめ言葉が威力を発揮するのは、言うまでもなく、この中で、気持ちと振る舞いに対して働きかけるコミュニケーションの場合です。
どうしてこうした場合に、ほめ言葉は威力を発揮するのでしょうか。
これに適切に答えるのは、なかなか難しいのですが、こんな説明ではどうでしょうか。
たとえば、営業の成果を上司に報告したとします。
上司から「すばらしい」「よくやった」「さすが」などなどほめ言葉があなたに投げかけられとき、そのときその場にあるもの、あるいは心の動き、状態を考えみてください。
上司がいます。
上司の笑顔があります。
営業の成果があります。
ほめられてうれしいあなたの気持ちもあります。
周囲の仲間の賞賛の笑顔もあります。
ほめ言葉がこうした多彩な場と結びついているはずです。こうした結びつきをこれまでたくさん経験してきているはずです。これが、ほめ言葉の学習になります。
ほめ言葉の意味がわかるのは、そして、ほめ言葉が、うれしい気持ち、心の元気と結びついて威力を発揮するのは、こうした学習の賜物なのです。
ほめ言葉の威力が発揮されるのは、当然、過去にこうした学習をどれだけしているかにかかってきます。
不幸にして、こうした学習をする機会のなかった人、少なかった人には、ほめ言葉の威力はあまりないことになります。
ほめられ体験なしで育った人はほめられてもその威力はあまり感じないことになってしまいます。
なお、乳幼児期の親からのほめられ体験の効果は、これ以外にも、主体性や思いやりなど社会適応力の高い子に育つことも最近の筑波大学教授・安梅勅江氏の大規模な調査でわかっています。
● ほめ言葉のさまざま
今、手元に、本間正人ら著の「すぐに使える! ほめ言葉ハンドブック」(PHP)という本があります。その末尾には、ほめ言葉の一覧が次のような3つのカテゴリー別に6ページにわたって360個ほど挙げられています。
・見た目、外見をほめる言葉 例「愛想がいいね」「挨拶がハキハキしているね」
・内面、性格をほめる言葉 例「アクティブだね」「アグレッシブだね」
・能力、成果をほめる言葉 例「アイディアが豊富だね」「相手の立場にたてる人だね
その豊富さ、多彩さには驚かされます。これほどの語彙を身につけないと、ほめ上手になれないのかと自信を失ってしまうほどです。
でも、心配はいりません。ほとんどの語彙は、すでにあなたの頭の中にあるものばかりだからです。ただ、それがタイミングよく使えないだけだからです。
なお、蛇足になりますが、一つだけ付け加えておきたいことがあります。
それは、ほめ言葉には、ポジティブな評価を伝える役割と同時にポジティブ感情を伝染させる役割もあるということです。
「――がすばらしい」「―――は良いことだ」「―――は美しい」「――が上手」「よくがんばった」「うまい」などなどのほめ言葉を分析してみてください。
一生懸命にやっている、あるいはやり終えたことに対するポジティブな評価がそこにありますね。それに加えて、その結果として、ほめた人のポジティブな気持ちがほめれた人にも伝わって(伝染して)共に、良好な関係が作り出せます。
● 効果的なほめ言葉の使い方
① ほめるタイミングが大事
一番大事なことは、ほめ言葉をどんな場でどんなタイミングで発するかです。
これは、自分の過去のほめられ体験を思い出しながら、さらなる体験を積み重ねていくしかありません。でもこの経験の積み重ねは、それほど難しいことではありません。
なぜなら、ほめ言葉の効果は、その言葉を発したとたん、相手が反応してきますから、効果のほどを実感できますし、伝染して自分もうれしい気持ちになりますから、学習も気持ちよくできるからです。
それでも、いくつか、ほめる場とタイミングについておすすめをしておきます。
まず、場ですが、皆のいるところでほめることです。これは、ほめられた人の自尊心を一層高めることになりますし、周りの人への模範を示すことになります。
なお、叱るときも、人々がいるところでやれば、そんなことはいけないのだということを周りにも同時に知らせる効果はありますが、叱られている人に自尊心へのダメージが大きいので慎重にしたいものです。
ほめるタイミングは、その時その場で、が原則です。とりわけ、新人、若い人など学びの途中の人々には、この原則は極めて大事です。なぜなら、ほめられたその場で経験したことが強化されるからです。そうした一つ一つの積み重ねで成長していくからです。
もっとも、この原則は、叱責のタイミングについても言えます。
②ほめ言葉を言葉単独で無雑作に使わない
言葉ですから、いくらでも使うことができますが、場とタイミング、とりわけ相手や自分の気持ちを無視してしまうと、空虚なものになってしまいます。相手の心をまったく動かすことのできないほめ言葉ほどむなしいものはありません。
gooニュース(2013年2月14日)に、異性からほめられて素直に喜べない言葉の調査結果(社会人608人対象)が紹介されていましたので、参考までに。
1位 いい人だね 27%
2位 個性的だね 20%
3位 今日はキレイ(かっこいい)だね 18%
4位 健康的だね 12%
5位 いいパパ・ママになれそう 9%
③いつもいつもほめ言葉はだめ
子育ての場で言われているのが、「7つほめて、3つ叱る」です。
3つ叱るからこそ7つのほめ言葉が対比的に効果を持つことになります。
ほめ言葉には、前に述べたように、評価が含まれています。
いつもほめ言葉ばかりだと、その言葉の信ぴょう性が疑われてしまうということもあります。「本当にほめてくれているの?」となってしまっては、効果も半減してしまいます。
「3つ叱る」中に、まっとうな評価をした上でのほめ言葉なのだ、という暗黙のメッセージがあります。
さらに、「7つほめて、3つ叱る」にこめられている大事なことがあります。
それは、叱られ耐性、つまり叱られても大丈夫という心の強さにかかわることです。
最近の若者の特徴の一つとして、「叱るとすぐにめげてしまう」ということが挙げられます。
ほめて育てることの良さはもちろん言うまでもないのですが、同時に、3つくらいの真剣な叱責によって育つ心の仕掛けが貧弱になってしまったようです。
このことは、またほめすぎの危険性をも暗示しています。
ほめられると舞い上がってしまいます。心をきちんと働かせて事態を認識するよりも、舞い上がった気持ちのほうに気をとられてしまいます。こいうことが続くと、どうでしょうか。
厳しさが欠けた甘い人間になってしまいます。
話のバランスをとるために、老婆心から追加しておきました。
④ほめ言葉よりもほめる心が大事
これは、対人関係で言うなら、相手の言動や特性のポジティブな面のほうにバイアスをかけてみるということです。
・勉強ができなくとも人柄が良い
・口下手だが、言う内容は凄い
あるいは、ちょっと難しいところもありますが、現実のもろもろを一見するとネガティブではあっても、それをあえてポジティブにみてみるということでもあります。
・あと5分しかないではなく、まだ5分ある
・これしかないではなく、これがまだあった
⑤ほめ言葉のシャワーを浴びせよう
最後に、今日の朝日新聞の夕刊(2010年3月13日づけ)で、小学校教諭・菊池省三先生のこんな試みが紹介されていました。
1人の子どもを教室の前にたたせて、級友がその子を次々とほめるのだそうです。あまり仲のよくない友達もほめることで多面的な人間観を持たせることもできるし、クラスの絆も深まるようです。
会社などの朝礼でも活用すると効果がありそうですね。
ついでにもう一つ。ほめ上手になるための検定試験、称して「ほめ達」も紹介しておきます。短所を長所に言い換える、失敗をプラスに考えるなどができるかどうかが試されるようです。
関連して?、ほめられサロンというサイトhttp://homeraresalon.com/ を紹介しておきます。
アクセスした人を徹底的にほめてくれます。ただし、こちらのほうは、まったくあなたは関係のないほめ言葉ばかりです。それでも、ほめ言葉の語彙を増やすには少しは役立ちますし、不思議にそれでも心がちょっぴり元気になります。
ポジティブ心理術トレーニング@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
どちらかと言うと、あなたが敬遠したくなる、あるいは嫌いな人を一人、思い浮かべください。そして、「でも、こういう好いところはある」という点を3つ列挙してみてください。