三流読書人

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「恨み雪」

2006年01月18日 09時03分21秒 | 教育 
 『毎日新聞』コラム「発信箱」1月18日は、「恨み雪」 元村有希子記者(科学環境部)。
 私はこの記者のファンです。
「発信箱」というコラムは記者の本音が吐露されているというか、自由に思ったことを書いている。エッセイと言ってもいいか。

《「恨み雪」 
 降りしきる雪にため息をつき、寒さが緩めば緩んだで恨めしい。
 この冬、落雪や屋根からの転落、雪による家屋倒壊などで亡くなった人が100人を超えた。本誌集計によると、平均年齢は65歳を超える。
豪雪地帯の多くは山あいの、いわゆる「過疎地域」にある。子ども世帯は仕事を求めて街へ出て行き、老夫婦や一人暮らしという世帯が少なくない。過疎地域の高齢者比率は、全国平均17%をはるかに上回る28%(04年度、総務省)だ。4㍍近い積雪を記録した新潟県津南町も3人に1人が高齢者。「雪には慣れているが、今冬は雪が早かった。長びけば体力や注意力も衰える。二次災害が心配です」と役場の担当者は言う。
 若い世代が必要なのは雪かきにとどまらない。若年層の減少は、少子化と税収不足を招く。財政力が弱いと社会基盤整備が滞る。医療や福祉へも影響が出かねない。非常事態はその不安を浮き彫りにした。
 といって私たちは、積もった雪をたちどころに解かす知恵も、雪雲を追い払う技も持たない。雪は降り続くだろう。せめて通信や輸送や先端技術で、お年寄りの孤独と不安を癒せたらと思う。
 一人暮らしの祖母を家族で訪ねた正月を思い出す。小雪の舞う朝だった。別れの挨拶を済ませて車は走り出し、私は後部座席から手を振った。曲がり角に差し掛かったとき、笑顔で両手を大きく振っていた祖母が、その両手で顔を覆ったのが見えた。
 今も忘れない。祖母は泣いていた。そろそろ両親が、その祖母の齢に近づく。 (科学環境部)》



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