三流読書人

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ドングリ小屋住人 

ごまかしのオンパレード 日本

2006年02月02日 08時41分58秒 | 教育 
 『毎日新聞』の「発信箱」というコラム好きです。愛読しています。特に元村有希子記者のファンです。


『毎日新聞』2月1日 コラム「発信箱」 
《  あべこべ眼鏡  元村由希子
 1ダースは12個、私たちにはこれが常識だ。ところが英国で「パン屋の1ダース」と言えば13個を指す。
 昔は焼き損ないを見越して1個多く焼いたのだとか、仲買人の分け前なのだとか、由来は諸説ある。共通するのは「ごまかすパン屋は厳しく罰せられる」という、当時の英国の常識である。国民の主食だけに、パン職人は責任と誠実さを求められた。
 今の日本はごまかしのオンパレードだ。耐震データ偽造に粉飾決算疑惑、違法改造、米牛肉加工場の調査の約束違反。「速度制限60㌔の道路を67㌔で走る程度」とホテル社長は語り、農相は「食の安全を守るとの趣旨は逸脱していない」と弁解した。たまにしか来ない障害者のためにスペースを確保するのは無駄。食の安全は守られているからいいじゃないか。そう居直られては身もふたもない。めったに起きないことに備える誠実さより、効率や経済性が優先される社会は危なっかしい。
 作家の瀬名秀明さんは小説を書くため「逆さ眼鏡」を着けて過ごしたことがある。この眼鏡を着けると世界は上下左右が逆さまに見える。
 歩けば空中を漂うように頼りなく、障害物を避けたいのにぶつかる。あべこべの世界に瀬名さんは混乱したという。非常識が大手を振る今の世の中も、逆さ眼鏡のように居心地が悪い。
 ただ、この眼鏡は長時間着用すると慣れてくる。不自然なはずの視界が普通に見え、眼鏡を外すと現実世界が逆さまに見えるという。人間の適応能力には驚くが、非常識にもなじんでしまえる。それが怖い。
(科学環境部) 》