三流読書人

毎日の新聞 書物 など主に活字メディアを読んだ感想意見など書いておきたい

ドングリ小屋住人 

改革とは、社会全体の前進でなければならない

2006年02月03日 09時12分48秒 | 教育 
 暉峻淑子(てるおかいつこ)氏という経済学者がいる。岩波新書『豊かさとは何か』『豊かさの条件』などがよく知られている。今日の偽りの豊かさに警鐘を鳴らす。埼玉大学名誉教授。
 氏がある新聞に寄稿した文を紹介したい。
 
 《エコノミストは経済のマクロ数値を見て社会を見ない。遠くから森を見て木を見ていない。木が枯れれば森はなくなるのだ。・・中略・・(今日の病める社会が産んだ犠牲者ではないかと堀江問題に言及し)

 ノーベル賞の受賞者であり、世界銀行の上級副総裁でもあった経済学者J・シュテグリッツは言う。
 アメリカ型新自由主義の狂信的イデオロギーは、資本が国境を越えて自由に活動できるように、一律に民営化と規制緩和と構造改革による市場の自由化を世界に強制する。特に貿易と金融の自由化は、貧しい最下層をさらに貧しくし、経済戦死者を出して社会を破綻させることも少なくない。自由化の前に政府がしなければならないのは、情報が透明で公正・公平にすべての人々にいきわたること。経済成長を見て人間を見ない新自由主義の下では、最大の痛みは弱者にしわ寄せされるから、社会保障の整備と、とりわけ失業に備えて新しい職場を創出すること。それは公的な義務なのだ。
 改革とは、社会全体の前進でなければならない。貧困をなくすためには経済成長があった方が望ましいが、その逆は真ではない。経済成長は必ずしも貧困をなくすわけではなく、かえって悪化させ、社会を破綻させることもある・・・と。

 日本人はおとなしいので、暴動を起こすことはないかも知れない。しかし不満は潜行してニートの増加や麻薬が広がり、犯罪も増える。少子化もすすむ。
 先の国政選挙で自民党が大勝したとき、同じ国政選挙が行われたドイツでは大勝するはずだった保守党の議席は社民党をわずかに上回っただけで、左派政党「左の人々」が躍進した。ナチスに対する徹底的な反省と、キリスト教の倫理観と労組がなお力を持つ社会は、格差と差別の増大をよしとしなかっただけでなく、特に弱者へのしわ寄せを認めなかった。儲けがあったドイツ銀行やドイツテレコムなどの大企業がリストラを発表した時、新自由主義は儲けても儲けても、その富を決して分けようとしないものだ、ということを、人々は事実の中から悟った。SPD(社会民主党)がイラク参戦を拒否したことの正しさもまた、国民は忘れていなかったという。》

 儲けても儲けても分けようとせず、労働者を幸せにしない企業。税金を取っても取っても国民を幸せにしようとしない政府。消費税二桁などとふざけたことを言ってるが、もとはと言えば福祉目的税という発想であった。
 逆に、消費税を取り始めた時期と、社会福祉、社会保障をどんどん切り捨てはじめた時期が符合するような気がする。
 子どもが、お菓子を買っても、鉛筆一本買っても税金を取る。苛斂誅求のこの国の未来はどうなる。

                                                                       88