鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

自分の名前を失った場合の可能性B:アリスと呼んでみて答えるものがでるまで探す(GLASS3-37)

2008-04-29 10:59:02 | Weblog
「事物に名前がない森」で自分の名前が失われるとどうなるかと考えて次にアリスは「面白いことが起こるはず」と思う。つまりアリスは「自分の昔の名前」を持っている動物を探したら面白いわと思う。要するに「アリス」という名前の動物がいるはずだというのである。一方に名前のない事物(動物を含む)世界があって他方に名前だけ(指し示す事物・動物を持たない)からなる世界があるとの想定がここにはある。しかも事物と名前は引き合うようにできていて、事物から「アリス」の名前が離れて浮遊すればこの「アリス」という名前は新しい事物をさがしだしこれに名前をつけるというのである。かくてアリスが言う。「何でも出会うものごとにアリスと呼んでみて答えるものがでるまで探すって言うのは面白いわ!」と。「それは丁度、迷子犬探しの広告に似てるわ」とアリス。例えば、「その犬は“ダッシュ”と呼べば答えます。そのときは首輪をつけてください」というような広告。
 この後、アリスが付け加える。「利口なものだったらアリスと呼ばれても答えないでしょうね!」と。ここでは「アリスと呼んでみて答えるものがでるまで探す」という面白い試みと、「答えたら首輪をつけてください」という犬探しの広告の話をキャロルが意図的に混同させて読者の笑いを誘っている。

自分の名前を失なった場合の可能性A:①別の名前、②醜い名前、③名前がないまま(GLASS3-36)

2008-04-29 10:14:00 | Weblog
 ブヨがいなくなってアリスは歩き始める。やがて深い森に至る。アリスは森の中に入るのがこわかったが女王になるためには進むほかないと思って前進する。この森は「事物に名前がない森」と言われていた。そこでアリスは「森の中に入ったら私の名前はどうなるのかしら?」と考え始める。まずアリスが思ったのは「自分の名前を失いたくない」ということだった。その理由は2つある。①人々が私に別の名前をつけるだろうがそれはいやだから。アリスは自分の名前を気に入っている。だからアリス以外の別の名前がつけられることがいやなのだ。しかも②その別の名前は醜いに決まってるとアリスは思う。自分の名前がなくなって別の名前になるのはいやだし、そのいやな名前は醜いに決まっているというわけである。しかし③自分に名前がないままという可能性をアリスは考えていない。「事物に名前がない森」では別の名前さえアリスにつかないはずである。そのとき、いったい何が起こるのだろうか。(これについては後述。)