むかごの日記Ⅱ

70歳を過ぎてにわかに植物観察に関心を持ち、カメラを提げて、山野を歩いています。新・むかごの日記より引っ越しました。

ドクウツギ:毒空木(危機一髪) 

2015-08-06 12:37:09 | 植物観察記録

東北地方のツアー初日、裏磐梯五色沼周遊コースに入ってまもなく、赤と黒の丸い果実をつけた低木に出会いました。
ドクウツギ:毒空木(ドクウツギ科ドクウツギ属)です。ユキノシタ科のウツギに似て毒があるからこの名があります。
本州近畿以東、北海道の川岸や日当たりのよい道端などに生える落葉低木で、別名もイチロベゴロシといわれて、名の通り強力な毒(アルカロイド)を有しています。赤く熟果科実は一見美味しそうに見えますが猛毒で、死亡例も少なくないといいます。
葉は対生し、長さ6~8cmの卵状長楕円形で3行脈が目立ち、見極めが比較的容易ですが、これまた生葉24gが致死量といわれるほどの猛毒です。
以前植物園で見かけたことがあるものの(’9年7月31日記事)、山野で見かけることがなかったこのドクウツギ、いつもなら五感を駆使して観察などと称して見境なく葉や果実を味わう癖がある“むかご”ですが、何故か見た途端ドクウツギだと直感しました。たぶん毒々しい名前とウツギに似た木の様子などが強く潜在意識にあって、それと気が付いたのでしょう。おかげで旅の始めに危うく毒にあたることを免れました。
本科はドクウツギ属1属からなり、日本にはこの1種だけ、世界に約10種がアジアや北アメリカなどに隔離分布することでも知られています。
同様の隔離分布する植物としては、ハエドクソウ、サネカズラ、イワナシ、モクレン科のいくつかなどがあります。これらの隔離分布がどうして生じるかについては、前川文夫博士の「古赤道分布」説が有力ですが謎が残ります。