へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

赤尾の豆単

2015-11-21 17:12:02 | へちま細太郎

藤川だ。

3連休は寝連休とばかりに、部活を休みにして居候宅でもある細太郎の家で、こ~いっちゃんとオヤジさんの3人でごろごろしていた。
愛犬のシャカイとうさぎのミッフィーは、2匹並んで今はいないリカの座布団に寝転んでいる。
お袋さんは菜々子と一緒に買い物にいって留守だ。
2階にいた広之が、
「こ~いっちゃんさ、辞書ねえの?」
と、聞いてきた。
「ああ?何すんだそんなもん」
「調べもの。細太郎の部屋見てもねえし」
「今時のガキが辞書持ってるかよ、電子辞書だよ」
「にしてもあんたのあるだろ」
細太郎が辞書を持っていないはずはない、入学祝いにやったんだから。
「もう一回探してみろ、細太郎なら持ってるはずだ」
俺は広之とこ~いっちゃんの3人でまたも2階にあがり、まずはこ~いっちゃんの部屋に入った。
「一応、俺も持ってたけどねえ」
がしかし見えてる範囲にはない。
「棚か?」
と、中を開けて見りゃ段ボールの山。
「いらねえもんつっこんだ」
こ~いっちゃんは段ボールを開けると、古い教科書やら問題集やらごちゃごちゃ詰め込んである。
「辞書は日用品だろ、古くても受容はある」
俺は本を一冊ずつ取り出すと、何やら懐かしい赤い小冊子が出てきた。
「あ、赤尾の豆単」
「懐かしい~」
かつては誰も世話になった、受験生のバイブル「赤尾の豆単」だ。
「いや俺もいまだに持ってるよ、勉強したした」
広之が手にとり、パラパラとめくった。
「おまえ、何回繰り返した?」
「俺?俺は3回の途中で挫折」
こ~いっちゃんも広之の手から豆単を受け取ると、懐かしそうにめくりだした。
「俺は5回やったぞ、一応国立受験だったから」
「俺もそのくらい」
3人でパラパラ懐かしげに見ていたが、結局覚えている単語は1番最初だけ。
夕方飯をたかりにきた慶子に念のために聞いてみたら、
「私は2回めの最初で辞めちゃった。覚えてる単語?あんたたちと一緒よ」
と、せーので、
「abandon」
と全員で答えたもんだ。
アホかこいつら~。
何のために勉強したんだ~。自慢できないような受験計画ならば、
「捨ててしまえ

おあとがよろしいようで。
ちゃんちゃんw