へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

秋の夜長にため息ひとつ

2015-11-20 21:30:12 | へちま細太郎

こんばんはへちま細太郎です。

野球の何とかっていうの…プレミア12とか何とかっていうの、負けちゃったね。
大谷すげえな、という印象しかない。
「本命なしの野球だしな、勝ったって意味ねえよ」
たかのりは、今回は前田・大谷以外投げる時は見ていない。メジャー出てないからつまんないんだとさ。
「何読んでんだ?」
と、さっきから熱心に本と格闘している。
「本棚からみつけた」
と、ページをめくる。
「すげえぞ、が弟ナイフで刺されるんだ」
「は?」
「で、ナイフを引き抜く」
「うわ、やだ、なんだそれ」
「高瀬舟」
「は?」
「去年上本に散々叱られながら勉強したんだけど」
「叱られたって…」
俺は呆れて、それまではるみとメールしていた携帯を放り投げた。
「この分だけ聞きゃあさ、サスペンスだべ?」
文芸作品に対してなんてことを…。
「な、森鴎外って医者だったんだよな」
たかのりは、本を閉じてテーブルに置くと、
「やっぱ医学部受けねえ?」
と真剣な目を向けてきた。
「できることならこの時代に戻ってさ、こいつら助けてやりてえ」
マジか、たかのり…。
「おまえ、じいさん、医者なんだろ?なってみたいとかおもわねえの?」
「あったことのないやつなんざ、知らん」
「そんなもんか」
たかのりはため息をつくと、
「なんかよ~、いい作品ってのは、人生変えるくらいグサッとささるんだよなあ」
と、がらにもない発言をして突っ伏した。
そんなもんか…そんなもんかだよな。
あ~あ、はるみに会いたいなあ。