へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

思いがけない電話

2009-08-29 20:36:21 | へちま細太郎
こんばんは、へちま細太郎です。

暑い一日、今日もぼくは家の中で過ごした。
熱もないし咳も出ていないから、インフルエンザには感染していないと思うんだけど。 広之おにいちゃんたちには、菜々子が心配だからとアパートに帰ってもらったから、退屈でしょうがない。 おとうさんは、
「テニスに行ってくるから」
と、今までぼくを誘っていたのに、一人で出かけてしまった。
なんなんだ、くそおやじ。
と、部屋でぐだぐだしていると、2階の居間にある電話が鳴った。
ぼくんちは、おとうさんが結婚してもいいように、2階にも簡単なキッチンとトイレ、狭いけどお風呂がある。階段を上がって目の前のスペースの左側にバス・トイレ、右側にキッチン、そして反対の南側に6畳くらいのスペースが、居間がわりだ。 ここに藤川先生が居座っている。 隔てるものは、家から持ち込んできた屏風ぐらいで、夏の今は簾でできたついたてに変わっていた。そこに、ぼくとおとうさんのための電話がある。ほとんど連絡網にしか使わない、その電話が鳴ったんだ。
誰だろう。
「もしもし?細太郎くん?」
あ…。
「よかった、電話に出られるってことは、インフルエンザじゃないのね」
りょうこちゃんだ。
「あ、ありがとう、大丈夫だから…」
「うちから出られないんでしょう?だから、電話なら大丈夫かなって思って」
「う、うん、ありがとう」
ぼくは、電話の向こうのりょうこちゃんの声に、ドキドキと胸がときめいた。 りょうこちゃんの心遣いも嬉しいけど、でもそんなことより声が聞けたことの方が大きかった。
「あ、うちの学校の部活は大したことないんだけど…」
ぼくとりょうこちゃんは、こうして午後いっぱい長電話をして過ごしたんだ。