へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

お寺が静かな理由

2006-08-18 23:31:37 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

おばあちゃんのうちのお墓まいりは、川で遊んだあと朝ごはんを食べて、ひとやすみしてからでかけました。
おばあちゃんのおうちは、おじいちゃんのところよりマシないなかでした。
ここは、広之お兄ちゃんのおじいちゃんの生まれたうちでもあるので、広之お兄ちゃんはおかあさんと奥さんの慶子お姉ちゃんと来ていていました。
お墓参りには、午後からみんなで出かけました。
おばあちゃんのうちのお墓はお寺の中にあって、やっぱりごちゃごちゃとお墓がかたまってありました。
「このいっかくがうちの先祖からのお墓。これがおばあちゃんたちのおじさんのお墓、戦争で死んじゃったからなんにもはいってないの」
毎年、お墓まいりにきているけど、はじめてきく話です。朝のドラマの話をしたからかなあ。
そのとき、おぼうさんがやってきて、
「やっちゃん、みっちゃん久しぶり
と、おばあちゃんたち(ぼくのおばあちゃんと広之おにいちゃんのおかあさんです)にあいさつしました。
おともだちなのかな?
「しばらくねえ」
3人はおしゃべりをはじめてしまい、ぼくは一しょについてきた、これまたおばあちゃんの方のまたいとことお墓の中をたんけんして遊んでしまいました。
「こら」
広之お兄ちゃんはぼくらをつかまえておこりましたが、おとうさんはおこるどころか、ぼくがお墓のあいだを走りまわる姿を携帯のムービーで撮っていて、死ぬほどはずかしかったです。
「おまえな、少しは親なら叱れ」
と、広之お兄ちゃんにいわれても、
「別に、担任がいるから」
と知らん顔です。
「こんな親がこどもをだめにする」
と、広之お兄ちゃんの奥さんの慶子お姉ちゃんもカンカンにおこって、ぼくらの頭をぽかりとやりました。
だったら、おとうさんをたたいてよ

「こらこら、こどものすることで腹を立てはいけない」
おぼうさんが、こちらを見て話しかけてきました。
「はあ」
「拙僧が小さなころは、このやっちゃんやみっちゃんと墓石崩しをして遊んだものだ」
「えっ
みんな、一斉ににおばあちゃんたちを見ました。
「やりかねない…
と、慶子お姉ちゃんがつぶやきました。
ぼくもそう思いました
「やだあ、求ちゃんたらあ」
おばあちゃん、照れくさそうに笑います。
あれあれ?はじらっているぞ。
ちらっとおじいちゃんを見たら、おもしろくなさそうです。
ふうん…。
「よく先代に叱られたもんだが、それに今の時期は暴れても大丈夫だ」
「なんで?」
おとうさんが、ききます。
「ほれ、耳をすましてみなさい、静かだろ?」
そういっておぼうさんは、目をつぶって手を合わせました。
ぼくたちもしぜんにそうしました。いわれてみれば、たしかにしずかですが、あたりまえのような気がします。
「昨日は迎え盆だから、お墓まいりの時にご先祖様もうちに帰っている。ふだんはぺちゃくちゃ何かとうるさい墓も、ほれこの通り静かだ」
げえええ~
それって…。
ぼくは、目をあけておばあちゃんのおじさんのお墓を見ると、墓石の上に若いへいたいさんのかっこうをした人がこしかけていて、にこにこわらいながらうなづいていました。
「あ
ぼくはまばたきして目をこすって、もう一度見ると、へいたいさんは口に人差し指をたてて、
「ないしょ」
と、口をうごかしました。思わず、
「うん」
とうなづくと、へいたいさんはすっときえてしまいました。
おばあちゃんのおじさん、ぼくたちのむかえをまっていたのかなあ。
その日の夜は、ぼくはおばあちゃんのおうちの中が、とてもこんざつしていることに気づきました。ご先祖様同士、あいさつしている人?もいれば、なぐりあいのけんかをしている人?もいました。
思わずぼくは、
「ご先祖さまもおちつかないねえ」
とつぶやいてしまいました。すると、いっせいにうんうんとうなづいてきて、ぼくはしばらくこうちょくしてしまい、おとうさんがおおさわぎをして、ご先祖さまにわらわれてしまいました。

ぼくのおとうさん、ゆうれいにもわらわれて、とてもはずかしいです

コメント
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