◇ 先生の講話
1.文字の書体の変遷
一般的には天候や占いから文字が生まれ発達した。
- 篆書:秦の時代に生まれた。漢字の元になる文字で例えば「月」は三日月型で表現した。
- 隷書から楷書へ:隷書から楷書に移り行書へと発展した。隷書は漢の時代に、楷書は初唐、行書は東晋時代に生まれた。東晋は王羲之が生きた時代でもある。楷書は当初は同じ文字が100通りもの書き方があったが、初唐時代に3~4通りに整理された。
- 草書:唐の時代に発達。孫過庭の時代。
なお、日本では漢字は中国、韓国から入ってきた。日本での書風の変遷は奈良以降現代までに大きく3回位行われている。
- 鎌倉時代:黄檗宗が日本にもたらされるなど仏教が盛んになり、写経にあった書き方
- 江戸の初期には京都において仮名に近い柔らかい楷書
- 明治になって以後:印刷が発達してきたのに伴い、印刷に都合のよい書体。これには日下部鳴鶴が尽力し、明朝体をベースに印刷会社とタイアップして生み出した。
2.結構
文字は偏(へん)と旁(つくり)で概ね構成されていて、これを結構という。 例えば「即」の字は、印刷では左側の偏と右側の旁は同じ高さで横並びになるが、毛筆では右側の旁を下にずらして書いている。同様に「動」も筆で書いた結構と印刷された結構では違う。それから「切」の字は偏と旁からなりたっているのでこれを一つの結構と考えるのは間違いである。また「想」の結構を一つでなく3つからできているので勘違いしないでほしい。 合わせて、「可」の字も印刷物と毛筆とで形が違う。印刷物では縦画が横画の右はじから降りてきているが毛筆は右はじではない。これは書き方の違いがあり、毛筆は口を書いてから縦画を引くが印刷物は縦画を引いてから口を書いているため。なお、1つだけの結構としては「田」、「中」などがあり、縦長だったり、横長だったりする。
3.文字の基本
- 糸へん:偏として下側のムが大きいと不格好である。始筆と下側のムの右側と小の右側が合うように書く。
- にんべん(イ):にんべんの第1画の「ノ」は、右に来るつくりいかんによって、短くしたり長くしたり、或いは縦画の長さも3通り変えてみるとよい。例えば「傅」のにんべんの縦画は長くするとよい。
- ぎょうにんべん(彳):「彳」は一般的には上側の「ノ」を短くし、下側は長くする。或いは上側の「ノ」は太くし下側は細くする。また、方向も上と下で変えてみる。
- たけかんむり:毛筆では縦画の二本を真ん中に引き寄せ賑やかにするときれいに見える。
4.検定試験
- 検定の際には半紙は楷書、行書、草書の三体を縦一列にして審査を受けるので、種類の違う半紙に書いた作品は跳ねられてしまう。
- 楷書は点、画がしっかり書かれているか、行書、草書は実線と虚線について、連続して書かれているか、また自分の字が出来ているかなどが審査される。
5.「秋萩帖」:伝小野道風筆
別紙資料にて解説された。
◇ 実技指導
講話の後は実技にうつり各人の添削指導が行われた。
(出席者 10名)(因泥 記)