◆先生の講話
1.書体の変遷(その2)-楷書
①楷書の初期の書体は龍門碑(龍門石窟に刻まれた碑文。始平公造像記、牛橛造像記などがある)、張猛龍碑などに見られる。龍門碑、張猛龍碑の書体を図に示す。なお張猛龍碑の書体は、碧雲先生が六段当時に書かれた書作品(半紙)の中の1文字。
②その後王羲之、智永などを経て初唐の三大家(虞世南、欧陽詢、褚遂良)の頃に楷書体が完成する。これら書家の楷書は、それぞれの書家による特徴はあるもののいずれも「きれいな楷書」である。日本でこの頃書かれた「天平写経」はこれらの書体に倣った影響が現れている。その書体は暖かく柔らかい。
③中唐の頃に顔真卿が現れ、それまでの王羲之流とは異なる顔真卿流とも言うべき書法をものした。特徴は王羲之流が外側に払うのに対し、内側に取り込む書法(図参照)。
2.条幅作品の書き方
①字を並べただけでは書作品にならない。「見せ所」など自分なりの表現に工夫を凝らす必要がある。
②条幅の基本は、「上下のスペース」、「文字の中心」、「作品になっているか」の三つ。このうち前二つは指導できるが、三つ目の「作品になっているか」が大事。「私ならこう書く」という手本を書くことは出来るが、作者自身が自分流に何をどうしたいのか考えることが重要。
③それには、先ず「見せたい文字」を決める。そして次にその文字の横・上下の文字をどうするか、を考える。太い/細い、大きい/小さい、墨付け/かすれ字など強弱・緩急を付ける工夫が必要。
◆実技指導
今回は「中」、「由」、「花」の草書体で、筆を一旦止めるところ、走らせるところについて指導を受けた。またひらがなの「は」、「ほ」、「ま」、「よ」の最後の筆を返して丸く書く箇所の書き方の違いについて指導を受けた。
(出席者5名 荻野記)