hayashi5 blog

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マグネシウム文明論

2010-02-08 01:00:48 | 書籍

Magnesium

以前紹介した、脱「ひとり勝ち」文明論を凌ぐ、近未来の低炭素社会のお話し。東工大の矢部孝教授による、いままで、燃料としては見られていなかったマグネシウムを、太陽光レーザで精練、無限にリサイクルすると言うおはなしです。

そのシナリオはと言うと、

①太陽熱を利用した淡水化装置を使って、海水中の塩化マグネシウムを取り出す

②熱を加えて、塩化マグネシウムを酸化マグネシウムにする

③太陽光励起レーザで、酸化マグネシウムを金属マグネシウムに精練する

④マグネシウムを交通機関や発電所などの燃料として利用する

⑤燃料として利用したあとは、酸化マグネシウムが残る

⑥③へ戻り、酸化マグネシウムなどを太陽光励起レーザで再び金属マグネシウムに精練する

エネルギー効率の高いマグネシウムを海水から低コストで精練、リサイクルすることで、エネルギー問題だけではなく、水問題も解決できると言う、まさに脱ひとり勝ち社会です。

詳細は割愛しますが、個々の要素において、その実験はすすんでおり、普及のネックとなるコスト面の資産もいいことづくめ。あとは、マグネシウムの販売、回収インフラさえクリアできれば。と言う印象。

確かに夢のある話で、実現すれば、ドラえもん社会に一歩近づくのは間違いではありません。エネルギー、環境対策の選択肢の”1つ”として、必ずや実現させて欲しいもの。(本著は、他の次世代エネルギーを否定的に説明しすぎているので・・・)

ただ、既得権力(現在の電力会社、製鉄会社、素材メーカー)との調整、複数の要素技術の取り纏め、新たな法整備など、日本が苦手とする課題が山積みです。そうこうしているうちに、既存技術の改良や低コスト化が進み、新しい技術や技術者が埋もれてしまわないことを祈ります。

それにしても、こういうことにチャレンジできると言うことは、技術者としては、とってもうらやましいこと。鉄道ビジネスは安定している分、そういう技術者としてのドキドキワクワクが少ないですね。