パリ大学での「君が代不起立」上映/佐々木有美(レイバーネット)

2009-02-20 11:07:03 | 世界
パリ第七大学の教員の方から、スト中の大学での「君が代不起立」上映の報告を
送っていただきました。
今回の教員ストの原因である、サルコジの新自由主義的大学「改革」の内実につ
いても詳しくふれられています。
「競争」と「評価」を生み出す教育「改革」は日本とまったく同じです。


転載ここからーーーーーー

日本でも報道されているかもしれませんが、3週間程
前からフランスの各地で大学がストに入り、私の所属
している学部(東アジア言語・文化学部)も総会でス
トを決議しています。
この運動との関連で、「君が代不起立」を学生達と一
緒に見ることになり、その報告を、と思い、ご連絡さ
せていただいている次第です。

大学でのスト、と申しますと、フランスではいわば年
中行事、といった感もあるのですが、今回は教職員・
研究者が中心になって運動を展開しているところが特
徴です。
ざっと事情をご説明いたしますと、以下のようなこと
が言えるのではないかと思います。

2年前にサルコジ政権になってから、大学の「改革」
が進められています。
スローガンは大学の「自立」。今までは、それぞれの
大学の専任のポストが必要であるかどうか等の判断
は、すべて文部省がしてきました。
その裁量を学長に譲渡し、人事権をそれぞれの大学に
移す、などの方針を打ち出し、 2007年の夏に
「大学改革法」が成立しました。
文部省の束縛から多少でも解放される、という意味で
は評価するべき点もあり、成立当時は教員・研究者か
らの反対運動は特にありませんでした。

しかし実際に「自立」へと移行する過程において、さ
まざまの問題や疑問が出てきました。

1)ひとつには、大学間の競争が激しくなるのではな
いかと、という危惧です。
競争が激しくなれば、入試制度の導入(フランスでは
大学入学資格を持っていれば、誰でも入学できま
す)・授業料のアップ(授業料は原則無料です)へと
繋がり、フランスの高等教育を貫いている共和制の原
則が崩れてしまう可能性が取りざたされています。

2)もうひとつには、学長の権限と教員・研究者の評
価の問題があります。
今回のストは、この二点目との関連で、文部大臣が事
前の話し合いもなく、教員の評価システムの変更を目
的とした政令案を発表したことが発端となっていま
す。
強引に要約しますと、「研究活動が十分ではない教員
には,教育活動(授業)をもっとしてもらう。4年に
1度評価を行い、学長の判断で各教員の授業時間数を
決める」ということです。
ここで批判の対象になっているのは3点。
イ ー 研究成果の評価はだれが、なにを基準にして
行うか。4年というサイクルに根拠はあるのか。
ロ ー 教育は「罰」なのか。
ハ ー 学長に権力が集中し、民主的な大学運営が困
難になるのではないか。

ストの当面の目的は、政令案の撤回にあります。
教授・准教授の身分に関するこですから、現時点では
学生達の反応はいまひとつ鈍い、と言ってもいいので
はないかと思います。
私としては、「スト中であるが、授業はする」という
スタンスをとることにしました。
出席は取らないし、試験に際して、スト中に話したこ
とからは出題しない、しかし授業はする、という方式
です(大学は封鎖されていません)。

火曜日にスト続行が決議されたことを受けて,今週は
「君が代不起立」を見る授業にしようと決めました。
きのう水曜日のことです。
ドキュメンタリーを理解するには予備知識が必要だと
思い、授業の前半では1)君が代・日の丸を巡る問題
の説明と「戦後」の意味、2)石原慎太郎の経歴と政
治思想、都知事としての発言や政策 3)教育委員会
の成り立ち、この3つのテーマを中心に話をしまし
た。

後半は上映会。
持ち時間の3時間を大幅に超えてしまい、感想は来
週、ということになりました。
普段は70人前後の学生がいるのですが、来ていたの
はちょうと半分ぐらいではなかったかと思います。
君が代・日の丸について話した時に、過去の歴史との
連続、ということでは、フランスの植民地主義を連想
させる、という反応がすぐに出ました。
しかし、第二次世界大戦では、一応ナチに対する戦勝
国ということになっている国の学生達ですから、日本
で国旗・国歌がこれほど問題になる、ということ自体
が一瞬ピンと来ないようです。
良きにつけ、悪しきにつけ、フランス革命以降、国は
「普遍主義」を標榜する連続体として存在していると
いう意識がとても強いのでしょう。

転載ここまでーーーーーーーー


佐々木有美
--
Sasaki Yumi <at3y-ssk@asahi-net.or.jp>

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コリンです。

フランスも1月29日の数百万のデモに続いて、海外県
でのゼネストの高まりと緊張の影響もあり、各地で
デモやストが続いています。
大学関係も、自立改革が日本と同様進行し、とりわ
け教職員の地位をめぐって、現行の改革案に反対す
る動きが高まり、各地の大学でデモやストが続行さ
れています。
その動きに学生たちも合流し、昨日の全国デモ(パ
リで4-5万人のデモ)の後、ソルボンヌでは、200人ほ
どの学生によって、占拠が昨夜から行なわれていま
す。機動隊による排除は、まだありません。動画が
下記で見れます。68年5月を想起させます。学生たち
は、「警官だらけ!正義はどこにもなし!」と叫ん
でいます。
http://www.lemonde.fr/societe/article/2009/02/19/deux-cents-etudiants-occupent-un-amphitheatre-de-la-sorbonne_1157867_3224.html


また、このスト中の大学で、私も参加しているNPO
『エコー・エシャンジュ』の働きかけで、自主講座
の一環として、ボルドー大学とパリ第7大学で昨日
上映がありました。
前者では100人ほどの学生がみて、根津さんたち教員
の闘いに共感し、盛んに拍手をしていたとのことで
す。とりわけ彼女たちが被っている処分が不当だと
感じた学生が多かったようでした。こうした東京都
教育委員会のやり方は、フランスの植民地主義と同
じだと。

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ソルボンヌの学生占拠は、昨夜一時過ぎに機動隊が
入り、排除されたとのことです。
コリン
Global Watch/Paris <globalwatch@wanadoo.fr>

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コリンです。


BDS運動および、フランスのISMは、3月30日にイスラ
エル・ボイコットの国際デーをしようと呼びかけて
います。

http://www.bdsmovement.net/?q=node/303

http://www.ism-france.org/news/article.php?id=11205&type=campagne&lesujet=Boycott, j


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