シンポ 「現代世界 ― 欧州・中東 ― を 《文学》 から考える」 3 月19 日・京都大学(追記あり)

2016-03-01 15:53:00 | 世界
岡真理さんから

シンポジウム
「現代世界 ― 欧州・中東 ― を 《文学》 から考える」


2008年に中東現代文学研究会を立ち上げて、かれこれ8年ほど、活動を続けています。
その中東現代文学研究会の主催で、3月19日(土)、京都大学を会場に、シンポジウム「現代世界――欧州・中東――を《文学》から考える」を開催いたします。

プログラム http://www.h.kyoto-u.ac.jp/topics/2016/02/319.php
フライヤー http://www.h.kyoto-u.ac.jp/jinkan/topics/20160319.pdf

昨年2015年は、パリのシャルリー・エブド襲撃事件で始まり、夏には、中東から欧州に押し寄せる難民たち――その大半がシリア内戦による難民たちです――の問題が連日、マスメディアで報じられ、そして11月には、パリで同時襲撃事件が起こりました。
シリア内戦では、この5年間に、すでに25万人が殺され、人口2400万のうち半数が国内外で難民となっています。

このような事態を前に、私たち、文学研究者にできることがなにか、あるでしょうか。

現在、中東や欧州で現在進行形で生起している出来事自体を著した長編小説はまだ書かれてません(それが書かれるとしたら、まだまだ先のことになるでしょう)。
しかし、短編小説であれば、包囲下の街で書かれ、ネットで発信されています。
また、すでに書かれた作品を通して、現在、起きている出来事の背景や、これらの苦難を今、生きている者たちがどのような人々であり、どのような思いで生きてきたのかを知ることができます。
一言で言えば、私たちは文学を通して、「人間としての」彼らに出会うことができる。
現代世界でいま、起きている出来事を、《文学》を通して、《人間の》経験として考えることができるのです。

人間として出会うこと――
人間性を踏みにじり、人間を間化する出来事を生きている者たちであるからこそ、今、その彼らに、私たちが「人間として出会うこと」が何にも増して必要であり、そして、それゆえに、現代世界で生起していることを私たちが理解する上で、政治学的、社会学的な分析と同じくらい――あるいは、もしかしたら、それ以上に――、私たちは文学を必要としているのではないかと思量いたします。

そのような思いで、今回のシンポジウムを企画いたしました。
クルディスタン、シリア、ドイツ、フランス…、今、問題の舞台となっているこれら地域に焦点を当て、クルド文学、アラブ文学、ドイツ文学、フランス文学の翻訳・研究に携わる5名が、それぞれに、具体的な文学作品をとりあげて、それらを通して、マスメディアの報道等では触れ得なかった新たな視点からこれらの問題について語ります。問題を、ニュースや情報として消費するのではなく、人間の問題として受け止めるために――。

今こそ文学を。
みなさまのご来場を心よりお待ち申し上げております。

以下、シンポジウムの詳細です。
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シンポジウム
「現代世界 ― 欧州・中東 ― を 《文学》 から考える」
http://www.h.kyoto-u.ac.jp/topics/2016/02/319.php
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日時:2016年 3 月19 日(土曜日)13:30 -17:30 (13:30開場)

会場:京都大学(吉田南キャンパス)人間・環境学研究科棟地下講義室
   会場マップ http://www.h.kyoto-u.ac.jp/access/

※案内表示などはとくに立てませんので、キャンパスマップで建物の位置をじゅうぶんご確認の上、ご来場ください。
※地図には反映されていませんが、グランドの南側に新しい建物ができました。会場は、その新しい建物の南側の建物です。
※正門および西南門の入り口にもキャンパスマップがあります。

参加費 無料(申し込み不要) 

プログラム
※講演タイトルの下は、講演でとりあげる作家・作品名です。

Ⅰ.総論 13:30‐14:00
岡 真理(京都大学、アラブ文学) 「文学、この迂遠なるもの」  

Ⅱ.各論(1)―中東編 14:00‐15:00
1.トルコのクルド人  
磯部加代子(トルコ語クルド文学翻訳家)
「囚われの故郷で  ―忘却の民の叫びと沈黙 」 
ブルハン・ソンメズ『イスタンブル、イスタンブル』

2.シリア ― 民衆蜂起と内戦 
森 晋太郎(アラビア語通訳・翻訳者、東京外国語大学)
「牢獄の壁の落書 ― 包囲下の街で」
ムスタファー・ムーサー「なんていい人たち」『虐殺の花瓶』など

Ⅲ.各論(2)―欧州編 15:15-16:15
3.ドイツの中東移民
鈴木克己(東京慈恵会医科大学、ドイツ文学) 
「もうひとつの冬物語 ―望郷、追われし者の心の疼き」
ラフィク・シャミ『ゾフィア、すべての出来事のはじまり』 
 
4.フランスのマグレブ系移民 
石川清子(静岡文化芸術大学、フランス文学) 
「〈憎しみ〉や〈服従〉から遠く離れて―はざま、亀裂としての〈郊外〉を読む」  
レイラ・セバール『ファティマ、辻公園のアルジェリア女たち』、ヤミナ・ベンギギ『移民の記憶』

Ⅳ.パネルディスカッション 16:15‐17:30

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2月22日(火)、日本のシリア人留学生たちのグループ「シリアンハンド」の主催で、京都大学にて、SEMA(Syrian Expatriate Medical Association 在外シリア人医療協会)のバハー・キーラーニー医師による講演会「シリアの今」がありました。

PJ21(京都大学 岡研究室の略称です)は今回、会場提供という形でご協力いたしました。以下、同講演会のご報告と、わたくしの感想です。

講演会(2時間)は、前半、バハー医師がスライドを見せながらSEMAの活動についてお話され、後半、参加者との質疑という形で進行しました。

現在のシリアは、政府軍の支配下にある地域、反政府軍の勢力下にある「解放区」、そしてIS支配下の3つに大別されます。

SEMAは、反政府軍の勢力下にある「解放区」で活動しています。
しかし、「解放区」という言葉がもたらすイメージとは裏腹に、政府軍による空爆が行われているのが、これらの地域です。

政府軍は積極的に医師や医療関係者、医療施設を攻撃の標的にしており、2日に1度、医者が殺され、病院が爆撃されています。
(医療関係者や医療施設を攻撃するのは国際法違反です。)

そのため、洞窟の中や、地下深くに医療施設を設けざるを得ない状態にあります。

危険なため、SEMAは現在、シリア人以外の医師をシリアに派遣することはしていません(外国人医師は、周辺国のSEMAの施設で治療や、医療スタッフの指導に携わっています)。
バハー医師のようなシリア人医師が、シリアに入って、命の危険を冒しながら解放区=戦闘地域での医療活動に当たっています。
SEMAとは、こういう状況のもとで、人命救助のために活動している団体です。

講演後、個人的にお話して分かったのですが、バハー先生はこういう場で、ご自身の経験を聴衆にアピールするような話芸でお話しする、ということにまったく慣れていらっしゃらない方で(今回の講演会も、学会参加のため来日することになり、それを知ったシリアンハンドのたっての願いで、急きょ、講演が決定しました)、そのため、講演では、SEMAが作成したスライドに沿うという形でしかお話できなかったようです。

SEMAについては、HPがありますので、詳しくはそちらをご覧ください。
https://www.facebook.com/sema.en

バハー先生の京大講演会については、京都新聞にも掲載されました。
http://www.kyoto-np.co.jp/sightseeing/article/20160224000032

SEMAを支援している在日シリア人留学生の会「シリアンハンド」のHPはこちら。
https://www.facebook.com/Syrian-Hands-549330535184326/

シリアンハンドは、アレッポ石鹸や刺繍製品などを販売して、その収益をSEMAに寄付したり、孤児院に寄付したりしています。
日本の人々に協力・サポートを呼びかけています。

岡 真理

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主 催:中東現代文学研究会 / 人間・環境学研究科 学際教育研究部
科学研究費基盤研究(C)「中東現代文学における「ワタン(祖国)」表象とその分析」
問合せ: PJ21kyoto@gmail.com
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