【 PUBLICITY 】 1476 :(アンナ・ポリトコフスカヤ)殺したのは誰か

2006-10-09 20:02:04 | 世界

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■■メールマガジン「PUBLICITY」No.1476 2006/10/09月■■


■殺したのは誰か

そういえば、ロシア在住の本誌読者って今、おられます?

▼アンナ・ポリトコフスカヤ射殺を報じるBBCニュース。

http://news.bbc.co.uk/nolavconsole/ifs_news/hi/newsid_4800000/newsid_4801600/nb_rm_4801615.stm

▼バイナフ自由通信
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/

の大富亮さんの快諾を得て、同ブログから「ノーヴァヤ・ガゼ
ータ」のポリトコフスカヤ特集の日本語訳を転載する。適宜▼。

(「バイナフ」とは、チェチェン人とイングーシ人をまとめた
呼び名で、「われわれ」「わが人々」という意味だそうだ)


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ノーヴァヤ・ガゼータによる10月9日のアンナ・ポリトコフ
スカヤ特集の冒頭に寄せられた文章です。

元がロシア語のため、訳にあまり自信がありませんが、取り急
ぎお送りします。


▼彼女は美しかった。年を重ねるごとに美しくなっていった。
なぜなら・・・成熟するにつれて、彼女の魂が外面に現れるよ
うになったから。

彼女は、魅惑的な笑顔を浮かべて、ユーモアに溢れた冗談をい
い、不正に涙を流すことのできる女性だった。けれども、不正
を働く人間にとって、彼女は敵以外の何者でもなかった。

彼女は驚異的なほど勇敢な人物だった。護衛に囲まれて戦闘用
ジープに乗っているような多くの―本当に多くの―男たちより
も、はるかに勇敢だった。

▼彼らは彼女を脅迫しようとした・・・彼女はロシア当局に逮
捕され、射殺されそうになったこともあった。ベスランに向か
ったときには毒殺されそうになったこともあった。

ノーヴァヤ・ガゼータの読者でさえ、「彼女はもう充分報道し
てくれたのだから・・・」などと言って彼女を追悼しようとす
る。もう充分?彼女はいつだって真実を書いてきた。真実はし
ばしばおぞましいもので、多くの人はそれを認めようとしなか
った。だからこそ、自分の後ろめたさを隠すような反応をする
。「もう充分」だと。ときには、編集者でさえ、そんなことを
言う。

▼人間にとってもっとも困難なことは、おぞましい事実から目
を背けないことだろう。けれど、もしも不正というものを直視
すれば、そんなことは許されない。

アンナは不正を直視していたからこそ・・・もっとも弱い立場
の人間に寄り添って生きてくることができたのだ。

私たちにとって、アンナはまだ生きている。彼女の死による悲
しみが癒される日など来ない。誰が彼女を殺したのだとしても
・・・どこにいたとしても・・・私たちは彼女を殺した犯人を
見つけてみせる・・・ノーヴァヤ・ガゼータがある限り、犯人
を安眠させることはない。
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▼もう一つ、彼女の最期のインタビュー記事「カディロフはチ
ェチェンの大統領にはなれない」の翻訳を転載。大富さんの見
事な解説が光る。


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「カディロフはチェチェンの大統領にはなれない」(抜粋)
アンナ・ポリトコフスカヤ最後のインタビュー(のひとつ)

▼記事について

記事の日付によればまさに彼女の死の直前、ロシアの人権団体
の連合サイト、「カフカスキー・ウーゼル(コーカサスの結び
目)」は、アンナ・ポリトコフスカヤにインタビューをした。
その2日前の10月5日は、チェチェン親ロシア政権のボス、
ラムザン・カディロフ首相の30歳の誕生日。

親ロシア派が定めた憲法によれば、チェチェン大統領の立候補
資格は30歳以上であることだ。彼はチェチェンの大統領にな
る資格の一つを手にしたことになる。その憲法自体、眉唾もの
の国民投票で決められたものだと言うことを別にすれば。

ポリトコフスカヤは、プーチンに対する批判者であると同時に
、カディロフに対する強烈な批判者だった。その感覚はわかる。

プーチンはチェチェン戦争によって大統領に上り詰め、チェチ
ェンをぼろ雑巾のようにし、ロシアも、意味は違えど相当にひ
どい状況だからだ。

そしてカディロフは私兵集団「カディロフツィ」を率いて、ロ
シア軍とロシアからの資金供給を後ろ盾にして、同じチェチェ
ン人たちを誘拐しては拷問し、身代金を奪ってきた。

ポリトコフスカヤには10月5日に生まれた男と、7日に生ま
れた男、その二人の敵がいた。彼女が射殺されたのは7日だが
、どちらに殺されたか、あるいはまったく別なのか、まだわか
らない。(大富亮)

7/10/2006 Anna Politkovskaya: Kadyrov will never be Chechnya president

http://eng.kavkaz.memo.ru/newstext/engnews/id/1072060.html


▼「プーチンがカディロフをチェチェンの大統領に任命したが
るかどうかは知りませんが、いろいろ理由があって、任命した
がらないんじゃないかと思います。

「ラムザンはもちろん、任命されることを渇望していますよ」

ここ数ヶ月、チェチェンでの建設はラッシュに入っていた。学
校、道路、噴水、それからグロズヌイ北空港。ここは、カディ
ロフの誕生日に、おごそかに開業した。意義のある建築物を次
々と作ることで、すべてが個人の管理下にあることを宣言した
のだ。

「彼の<個人の管理>というのは、他の人たちへの脅迫-武器
によるものと、建設資金です。そうした金は、連邦予算から出
ているわけではありません」とポリトコフスカヤは言う。

「どうやって資金を満たしているかと言うと、差し押さえをし
ているんです。奪っている人みんなから。ビジネスマンだけじ
ゃありません、たとえば官僚たちからも。チェチェンの官僚た
ちは、まあロシアならどこでもそうですが腐敗しています。彼
らは正規の給料以外に、かなりな金額を<貢がれ>ているんで
す。

資料がないから細かい数字は言えませんが。いまのところ、非
常事態省の職員が検察官事務所に出した書類のコピーが手元に
あります。彼らは給料のほとんどと、それ以外に13000ル
ーブルを支払わされたと怒っています」

(ラムザンは、賄賂をとっている役人から、さらに金を巻き上
げているという意味)

「そういう差し押さえの中には、たとえばグデルメスで開かれ
たような、何人もスターが出てくるくだらないコンサートに強
制的に行かせる、あるいはショーの切符を買わせるというのが
あります。正規の4倍もの値段で、何枚も買わされたり。彼ら
はそうしているんです。その<買い手>がふたりほど、このこ
とを私に言ってきたことがあるんですが、その人たちはある省
庁の副大臣でしたね」

ポリトコフスカヤによると、カディロフは連邦予算の獲得工作
もしている。膨大な建設コストを回収したいからだが、連邦財
務省は難色を示していて、まず計画書類や、コスト計算書を出
すように要求している。

「この建設ラッシュには、そんなものはもともとないんです。
だから、カディロフはモスクワにしょっちゅう来て、そういう
文書なしでプーチンに金を出させようとしていました。でもそ
れもうまくいかなかったんです」

そういった新しい建築物の品質はとても低いと彼女は言う。

「ええと。品質なんてものはありません。どんな意味でも。私
なら、グロズヌイに行くときに、ぜったいグロズヌイ空港は使
わずに他のところを経由しますね。あそこだけは勘弁してほし
い」

カディロフが指定した日に、そうした建築物が完成しないよう
な場合、「<実力行使>がされます。もちろん、普通の労務者
がそんな目に遭うわけではないです。そういうところには多す
ぎるほど<監督>がいます。彼らは誘拐されたり、拷問された
りします。現地ではよく知られています、こういうことは」
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「彼女は生きている」とのノーヴァヤ・ガゼータの言葉は、ま
ったく正しい。

彼女は、殺されたことによって永遠に生きる。

「ノーヴァヤ・ガゼータがある限り、犯人を安眠させることは
ない」と書く勇気を、ぼくは尊敬する。


■読者から

二人の読者の声から抜粋して紹介。


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犯人が誰か分かりませんが、記者として彼女は勇敢であったと
思います。

今の日本では戦前と異なり、何でも好きなことは言え、それに
よって逮捕されることはありません。しかし、命を賭けて自己
主張するジャーナリストは見当たりません(竹山さんが、ご存
じでしたら謝ります)。

一見それなりのポーズはとりますが、逃げ道を確保しているよ
うに思えます。
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まあ、逮捕されるんだけどさ。逃げ道を確保するのも現実の知
恵なんだけどさ。


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アンナの死。

ニュースを見て絶句しました。

安倍内閣の成立や神取の当選、細野の不倫や沖縄知事選など、
気になること腹立たしいことは尽きませんが、これには叶わな
いと思います。おそらく、次の号かその次に竹山さんがお書き
になるとは思いつつ。

日本にあれほどのジャーナリストは何人いるんでしょうか。

優れたジャーナリストのための必要悪だというには今のマスコ
ミは巨大すぎ、罪が多すぎます。記者個々人の見識も狭い印象
です。かといって専門家も多いとは言えない。

オーマイニュースにも疑問を感じ、なかなか鬱屈しています。
竹山さんのようなはっきりした、感覚的でもありつつその理由
を説明するタイプの文章が少ないですよね。

自分の感覚は正しいと文章を書いているのは、若者だけではな
いと思います。それを説明されないと分からないし、批判もで
きない。
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今のマスコミの詳しい仕組みはわからんが、「何故、彼女に出
来て、ニッポンの記者にはできないのか。その理由は何か」と
問うことは重要だ。「文明国」ならば。「愛国心」があるなら
ば。

命を賭けて暴くほどの秘密は、この国には無いのかも知れない。


freespeech21@yahoo.co.jp
http://www.emaga.com/info/7777.html
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山口花能です。
ロシアの著名なジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ氏の殺害事件に
世界中が深い悲しみと、強いいかりを感じています。
モスクワ、フィンランドで追悼集会の様子など
http://www.afpbb.com/index.php?module=Search&action=Search&word=%22Anna%20Politkovskaya%22

氏のパソコンはロシア当局に押収されましたが、井上さんが書いてくださったように
チェチェンの駐留ロシア軍による暴力などの深刻な人権侵害について
ポリトコフスカヤはチェチェン現地で取材をしており、近く発表の予定だったようです。


ポリトコフスカヤ氏の死を悼む人や、
少しでもロシア、チェチェン情勢に関心を持ってくださった方は、追悼集会にお集まりください。
多くの人が集まってくださることが、日本人の問題意識を世界に見せることにつながると思います。

チェチェン総合情報などのサイトで、追悼集会に関する詳細がこれから流れると思いますが、
場所と日程のみ、先にお知らせします。
【お知らせ】 10月12日(木)夜、東京・文京区民センターにて、アンナ・ポリトコ
フスカヤ緊急追悼集会を開きます。詳しいお知らせは改めて。ぜひご参加ください。

ポリトコフスカヤ殺害に関する、
そのほかの情報はこちらをぜひお読みください。
チェチェン・ニュース (「チェチェン総合情報」より)
http://chechennews.org/chn/0621.htm


http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/da8d32f5564f94249fa2c4bc4ea43bbf

http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/d53ac88279a9fbcfa2f42a1a411293dd



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