11月メール通信「人民の平和への権利・名古屋宣言草案」/池住義憲

2011-11-09 19:22:35 | 集会情報
<11月メール通信>

 2011年11月8日
                  池住義憲

 平和の問題は、主権国家間の安全保障政策の問題としてではなく、全世界の人々(人民)の基本的人権の問題として捉えなおすことが大切です。公正で平和な社会を構築していくために必要不可欠です。

 今、「人民の平和への権利」(The Right of Peoples to Peace)を国連総会の宣言にまでもっていこうとする運動が続けられています。そして今回、この運動を世界的に進めているスペイン国際人権法協会のカルロス・ビヤン・デュラン会長とデヴィッド・フェルナンデス・プヤナ事務局長を招いて、名古屋でも下記のとおり集会を開催することになりました。ご都合のつく方、是非ご参加ください。

           記

【集会名】 平和への権利(平和的生存権)国連宣言キャンぺーン名古屋集会
      ~~ス ペイン国際人権法協会会長、事務局長を囲んで
【日 時】 12月3日(土)13:15~17:00 (13:00開場)
【場 所】 名古屋国際センター 3階第2研修室
      (地下鉄桜通線『国際センター』駅下車すぐ)
【資料代】 500円
【主 催】 平和への権利国際キャンペーン・日本実行委委員会
【共 催】 自由法曹団愛知支部、東海労働弁護団、青年法律家協会あいち、
       日本国際法律家協会東海支部
【連絡先】 東海法律事務所(中島さん 電話:052-961-0651)
       E-Mail: nakajima@tokai-law.jp

 集会の最後に、「名古屋宣言」を採択する予定です。名古屋の準備委員会メンバーで最終草案を作成しました(日本語版と英語版両方)。ご参考まで、添付ファイルで事前にお送りします。

 宣言は「人民の平和への権利」の国連宣言実現の動きに賛同・支持を表明することが趣旨です。同時に、①日本国憲法の平和主義とくに「平和的生存権」を広く世界に発信すること、②今日の情勢下にあって「人民の平和への権利」の意義・必要性・重要性を指摘することも目的としています。

 宣言のなかで平和的生存権に関する部分は、長沼訴訟第一審判決(福島判決)からはじまって、2007年3月の名古屋地裁判決(田近判決)、2008年4月の名古屋高裁判決、2009年2月の岡山地裁判決を記述し、広く世界の人々に知らせようとするものです。

 長文ですが、事前にお読みください。これまでの経緯や国連総会での宣言の意義など、なるべく簡略に表現しました。お気づきの点などありましたらご教示ください。

 同様の集会は、名古屋の他にも、大阪(12月5日18:30~、エルおおさか南館101号室)、東京(12月10日13:00~17:00、明治大学リバティタワー1114教室)で開催されます。

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「人民の平和への権利」名古屋宣言(案)

Ⅰ.平和の世紀と謳われた21世紀に入っても、戦争・内戦・民族紛争など、平和を破壊する動きが絶えない。経済のグローバル化は、途上国と先進国間および各国内において、貧困と飢餓、貧富の格差を拡大させている。世界の多くの人々の生活と生命は脅かされ、不均衡、不平等、不正義の社会のなかで生きることを余儀なくされている。生態系の破壊は進み、人々が「平和のうちに生きる」ことがますます困難になってきている。
平和を脅かすこうした直接的・構造的暴力が常態化するなかで、圧倒的軍事力を背景にした国家による軍事的“解決”の試みは、更なる暴力と対立を生み出し、情況を悪化させてきた。
この状況を根本的に転換するために、平和の問題を主権国家間の安全保障政策の問題としてではなく、全世界の人民の基本的人権の問題として捉えなおすことは、21世紀における公正な平和を構築していくうえで必要不可欠である。「人民の平和への権利」の国連宣言はその意味で、国際平和の構築にとって決定的に重要な一歩となる。

Ⅱ.スペイン国際人権法協会は、2006年以降世界各地でNGO会議を開催し、平和を求める世界の市民の声を集約してきた。その集大成がルアルカ宣言(2006年10月)、ビルバオ宣言(2010年2月)、バルセロナ宣言(2010年6月)、サンチアゴ宣言(2010年12月)に結実している。
1984年の国連総会の「平和に対する人民の権利に関する宣言」を出発点とし、その後のこうしたNGOの動きを受けて国連は、2008年から2011年にかけて人権理事会で人民の平和への権利の促進決議を毎年連続して採択してきた。2010年8月には平和への権利宣言の起草委員会が設立され、2011年8月に人権理事会諮問委員会で宣言草案に関する審議が行われた。このように約5年にわたるNGOによる議論の積み重ねと、NGOの動きを受け止めてきた国連人権理事会の努力により、2012年6月には国連人権理事会で平和への権利宣言が採択されようとしている。
私たちは、全世界の市民の平和への要求を受け止め、それを現実化してきたスペイン国際人権法協会と国連人権理事会に敬意を表する。

Ⅲ.日本国憲法は、アジア太平洋戦争における悲惨な戦争体験と戦争についての深い反省、とりわけアジア諸国の人々に対する加害責任の自覚に基づいて制定された。そして憲法9条は世界に先駆けて、戦争の放棄、戦力の不保持、及び交戦権の否認という徹底した平和主義を採用した。
この「非武装平和主義」の基底にある政治原理を、世界の諸国民に向けて宣明したのが憲法前文である。そこでは、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることを許さないとの決意のもとで国民主権を採用したことが宣明されている。戦争を開始するのは政府だが、戦争の惨禍を被るのは人民であるという歴史の教訓を踏まえて、政府に対する市民の監視こそ、戦争に対する最善の防壁であるという考え方を示すものである。
 憲法前文はまた、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有すること」を確認している。この「平和的生存権」の決定的な意義は、平和を人間の生存にとって必要な不可欠な基本的人権として捉えたこと、そしてこの権利は、日本国民のみならず、全世界の国民に保障されるべきものであると宣言した点にある。
 
Ⅳ.平和的生存権は、単なる政治的理念の表明ではない。このことを明らかにしたのが、長沼訴訟第一審判決(福島判決)である。航空自衛隊のミサイル基地建設のための保安林の指定解除処分の違法性を地域住民が争った事件において、札幌地方裁判所は、ミサイル基地は「有事」の際の攻撃目標となりうるから、地域住民の平和的生存権が侵害される危険性があるとして、地域住民が本件処分を争う法的利益を認め、そのうえで自衛隊を違憲無効と判断した。
 平和的生存権はさらに、「戦争に巻き込まれない権利」という消極的・防御的な性格の権利から、海外での戦争に日本政府が加担することを許さない「戦争に加担しない権利」へと発展してきた。この発展の過程において決定的に重要な意義を有するのが、自衛隊イラク派兵差止訴訟にかかわる諸判決である。2007年3月の名古屋地裁判決(田近判決)は、「平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利」であり、9条違反の政府の行為によって個人の生命・自由が侵害されない権利は具体的権利としての性格をもつと判示した。
そして2008年4月の名古屋高裁判決は、9条違反の政府の行為によって、①個人の生命・自由が侵害された場合、②現実の戦争等による被害や恐怖にさらされる場合、③9条に違反する戦争への加担・協力を強制される場合、裁判所に対して損害賠償請求等をできるから、その限りで平和的生存権に具体的権利性が認められるとして、自衛隊イラク派兵の一部を違憲無効と判示し、確定したのであった。
平和的生存権の裁判規範性は、岡山地裁判決(2009年2月)でも認められており、2008年名古屋高裁判決は画期的な判決ではあるが、決して孤立した判決ではない。そして、このような平和的生存権の発展を促したのが、政府の行為によって戦争の惨禍が繰り返されることに抗議する市民の活動であったことも、併せて確認しておくべきである。

Ⅴ.日本国憲法は「人権としての平和」という考え方を先駆的に表明し、私たちは政治運動・裁判運動の中で、その考え方を発展させてきた。自衛隊イラク派兵差止訴訟・名古屋高裁判決はその一つの到達点であり、そこに示された考え方をさらに発展させ、「全世界の人民の平和的生存権」の確立のために努力していくことが私たちのこれからの課題である。
私たちは、平和的生存権にもとづいて、自衛隊イラク派兵違憲判決を獲得した名古屋の地から、「人民の平和への権利」に関する国連宣言に対して心から賛同し、その実現のために最大限の努力を行う覚悟であることを、ここに宣言する。

2011年12月3日

「人民の平和への権利」国連宣言キャンペーン名古屋集会
参加者一同



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