窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

今年は金沢大会!-第39回燮(やわらぎ)会

2018年09月18日 | 交渉アナリスト関係


  9月15日、第39回燮会が石川県金沢市のしいのき迎賓館(旧石川県庁舎)で開催されました。燮会は日本交渉協会が主催する交渉アナリスト1級会員のための勉強会で、昨年福岡市で行われた第33回燮会に続き、二度目の地方開催となります。また、今回は初めての試みとして、新設された交渉アナリスト3級会員の皆様も加わっての会となりました。



  第39回燮会を進行していただいたのは、交渉アナリスト1級会員の谷口則彦様。準備から懇親会まで大変お世話になりました。



  今回は3級会員の方もいらっしゃるということで、開会にあたり日本交渉協会常務理事の安藤雅旺様より、改めて我が国に交渉学を伝えた藤田忠先生から連なる同協会の系譜と、標榜する交渉学に対する考え方についての説明がありました。



  第二部は、事例発表会。初めに谷口さんより「スポーツ界における価値交換」と題してお話しいただきました。

  ご自身がバスケットボール歴35年というスポーツマンでいらっしゃる谷口さん。また、若い頃スポーツ用品の小売販売に8年間携わられたご経験から、当時のスポーツ用品業界の裏話なども交え、興味深いお話を頂きました。

  発注から納品まで半年かかるという長いリードタイム、仕入チャネルの違いによる利幅や返品可否等の優劣。突然起こった、あるスポーツ用品の爆発的ブームとその終焉。時流を読む判断力、交渉力、リスク管理力など様々な能力が一人の担当者に求められ、まさに徒手空拳で激変する業界に立ち向かわれたお話は圧巻でした。ご本人もおっしゃっていたように、そうした経験があるからこそ交渉学を学ぶことの大切さがより身に染みるのかもしれません。交渉学を多くの人に知って欲しいとおっしゃっていました。

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  さて、スポーツの世界で「交渉」というと思い浮かべるのが、プロ野球の契約更改などで見かける年棒交渉。日本では選手が直接球団と交渉するのが主流ですが、メジャー・リーグでは代理人を立てて交渉するのが主流です。お話の中で紹介されたのが、その代理人を主人公にした映画『ザ・エージェント』(原題: Jerry Maguire)。高額な年棒を巡る丁々発止の世界に疑問を持ち、自ら会社を立ち上げて苦労していく中で「本当に大切なものは何か」に気づいていくという映画だそうです。察するに、奪い合いの分配型交渉から価値交換による統合型交渉へと移行していくプロセスを描いた作品と言えそうです。僕はこの映画は観ていませんが、早速DVDを注文したので観てみようと思います。

  日本では法的な理由もあり、アメリカのようなエージェント制度はできないのだそうです。谷口さんもスポーツ界ではありませんが、別の世界で事業承継を巡る経営者と後継者の価値交換を支援されているそうで、求めていることは同じなのだと思います。



  次の事例発表は、3級会員の宮本陽子様。宮本さんは現在石川県の人権啓発のセミナーでお話しされているそうですが、3級講座を受講した際、交渉学の考え方と非常に重なる部分が多いということに気づかれたということで、そのことについてお話しいただきました。

  まず、交渉学を通じて「あり方」についてのヒントを得られたということ。キャリアカウンセラーとしてご活躍される宮本さんですが、クライアントを弱者と見、「同情」という姿勢で接していては、相手の本当の良さは見えてこないということです。交渉も同じで、統合型交渉を目指すには、相手との対等な関係、すなわち「イコール・パートナーシップ」がなければ価値を創造することはできません。つまり交渉も人権啓発も「人の尊重」というてんで共通しているということでした。逆に昨今話題になっている「ハラスメント」とは、信頼関係の欠如であり、対策を云々する前に「あり方」に問題ありということになります。

  人権を守るとは、人の安心・自信・自由を守ること。それらを尊重することによって、その人が本来持っている「力」を最大限に活かすこと。これは交渉リソースをいかに活用するかということに通じると言います。

  また、あり方を正してもコミュニケーションに失敗しては、信頼感を上手く醸成できないということもあり得ます。このミス・コミュニケーションをいかに防止するか、この基本も交渉の基本と同じだそうです。交渉はコミュニケーションの一部ですから、確かに信頼感を醸成するために交渉理論はもっと活用できるかもしれません。

  だだし、コミュニケーションとはそもそも上手くいかないもの。その理由は、人がそれぞれ違うから。しかし、違うからこそ、相違には価値創造の可能性があるというのは交渉学でも強調されている点です。そしてそれを可能にするのは、元に戻りますが相手との協働関係であるということ。協働関係の第一歩は「言葉の力」で、「人柄と事柄を分ける」というお話がありました。これは『ハーバード流交渉術』(原題:Getting To Yes)の著者であるR.フィッシャーとW.ユーリが唱えた「立場と原則の分離」に通じると思いました。

  宮本さんのお話は、改めて交渉を行うということの根本に立ち返ることに気づかされると共に、交渉を「人権」という枠組みで捉えたことがなかっただけに、新鮮な学びでもありました。



  第三部は、座談会が行われました。テーマは「北陸三県(福井・石川・富山)の特徴と県民性について」。参加者の中には日頃県外で商談を行っている方、あるいはこれまで各地を赴任してきた経験をお持ちの方などがおいでで、言われてみないと分からない様々な特徴があるということが分かり、なかなか興味深かったです。これも地方大会ならではといえるでしょう。



  最後に。この度は金沢の皆様に大変お世話になりました。今後もぜひ「交渉」を通じて学び合えることができればと思っております。3級の皆様もぜひ1級を目指して「燮会」の仲間に加わっていただければ嬉しいです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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