窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

地産地消のお店、その②-安兵衛(郡山)

2024年06月25日 | リサイクル(しごと)の話


 (昨日の続き)翌11月24日は福島県郡山市へ移動し、福島食材のメニュー(もちろんお酒も)が豊富な「安兵衛」さんへ行きました。まず、お通しが中通りの郷土料理「いかにんじん」。その名の通り、スルメイカと細切りにしたニンジンを醤油、みりんなどで味付けしたものです。



 ジャンボなめこ天ぷら。こんな大きななめこ、初めて見ました。大きなきのこだと、大雑把な味がしそうですが、なんの、肉厚で歯ごたえがあり、旨味もたっぷり。これは美味しいです。



 人気メニュー、山芋とチーズの「ビンビン焼き」。ビンビン焼きの発祥自体は福島ではないようですが(大阪?)、まさに居酒屋のためのメニュー。



 福島県三春町、愛(めご)にんにく(芽子にんにく)の天婦羅。普通のニンニクのような強烈な臭みがない上、天ぷらにして熱を通しているので、百合根のようにほくほくと美味しく食べられます。



 阿久津曲りねぎ焼き。郡山市のHPによれば、阿久津地区は粘土質で作土が薄いため、夏にネギを一度抜き、斜めに植え替える(「やとい」)のだそうです。その結果、曲がったネギが出来上がりました。うまみ成分が豊富で普通の長ネギより糖度が高いため、シンプルに焼いて塩だけでいただきます。確かに、甘いです。

 

 会津鶏の串焼き。左から、モモ、つくね、皮、レバー。メニューにあるのを一通り頼みました。

 

 以前、郡山にある鯉料理の専門店、「正月荘」をご紹介しましたが、そこでもお話ししたように、かつて郡山では冬場の貴重な蛋白源として、鯉の養殖が盛んでした(現在でも生産量日本一)。郡山と言えば、ということで鯉の刺身(上)と唐揚げポン酢(下)。イメージと違い泥臭さは全くなく、むしろ淡白で上品な味です。



 最後は、福島食材ぜいたくピザ。小ぶりのピザですが、きのこがゴロゴロのっていて嬉しい。

 郡山に来たときの定番にしたくなるお店です。

居酒屋 安兵衛

福島県郡山市大町1-3-12



繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
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地産地消のお店、その①-郷土料理味治(秋田)

2024年06月24日 | 食べ歩きデータベース

 地元食材にこだわったお店を2日続けてご紹介します。1軒目は、昨年11月23日にお邪魔した、秋田市の「郷土料理味治」さん。秋田2日目のこの日は、夜になって急な雷雨に見舞われました。ところが、祝日の18時ごろだったにもかかわらず、どこの居酒屋も満員。飲食店が立ち並ぶ大町をうろうろした末、外観から少し敷居が高いように見えた、こちらのお店に入りました。雨に濡れましたが、結果ここで本当に良かったです。



 地元の食材をふんだんに使った割烹料理。冒頭の刺身盛り合わせを見てもそれは分かります。実はこの日、この店に来る前に時間潰しのため焼肉屋にも寄った関係で、頼んだものはそれほど多くありません。まずお通しはブリ大根。



 初めて食べましたが、これは熊の煮込みです。熊は臭みがあると聞いていたのですが、そんなことはなく、思いの外柔らかく美味しかったです。たくさん食べるものでもないと思いますが。



 比内地鶏の串焼き。



 こちらは旬の天然金茸の天婦羅です。香りがよく、とても旨味があって美味しかったです。



 鍋は前日がきりたんぼだったので、「しょっつる鍋」にしました。「しょっつる」というのは、ハタハタの塩漬けを発酵させた魚醤だそうです。魚醤と聞くとクセがありそう気がしますが、さっぱりとして出汁の旨味の効いた、温まるお鍋でした。野菜やきのこもたっぷりです。

 今後秋田に行く機会があるか分かりませんが、「だまっこ鍋」というのも食べてみたいです。

郷土料理 味治



秋田県秋田市大町5-2-7



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厚木方面のおすすめーじょ里ぃ(本厚木)

2024年06月21日 | 食べ歩きデータベース


 訪れたのは昨年10月12日なのですが、厚木方面の複数の方がお勧めしていて、以前から言ってみたいと思っていたお店、「西洋懐石 じょ里ぃ」さんです。

 下のサムネイル画像からお店の外観を見ていただけると分かりますが、住宅地の中に佇む、二世帯住宅のようなお店。一見して、レストランとは分からないかもしれません。

 お肉料理が評判の和洋創作料理のお店で、冒頭の写真は「オーストラリア産ひれステーキ にんにく醤油で」です。以下、この日のコースを順々にご説明していきます。



 オードブル3種。左から「里芋の寄せもの」、「姫さざえのサラダ仕立て 酢味噌で」、「甘海老にトマトソースを添えて」。前菜から見事な和洋折衷です。



 続いて、「和牛ローストビーフのにぎり」。かつては生肉で、人気メニューだったようです。



 「鰹をおろしポン酢ゼリーとともに」。



 「メンチカツ」。蟹クリームコロッケとの選択でした。上品なメンチカツです。



「飛子のお茶漬け」。飛子とは、名前の通り、トビウオの卵です。



 デザートは、「チョコレートのタルトとかぼすのシャーベット」でした。

 どのメニューも一捻りしてあり、楽しさという点でも魅力的なお店でした。内装も本当にちょっとお金持ちの住宅といった感じで、豪華すぎず、カジュアル過ぎず。なかなか難しいですが、ランチの時間も来てみたいですね。太陽の降り注ぐ明るい部屋で、おしゃれで楽しい時間が過ごせると思います。

 この日は車だったので、お酒は抜きでした。

西洋懐石 じょ里ぃ

【IMG_9121】

神奈川県厚木市旭町1-32-14



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こちらは横浜の町中華ーCook Face(羽衣町)

2024年06月20日 | 食べ歩きデータベース


 昨日に続き、町中華。尤もお邪魔したのはさらにさかのぼること4ヶ月、昨年11月なのですが、一見中華屋とは思えないお店(ピザ屋かと思いました)の「Cook Face」さんです。ご夫婦二人で切り盛りされているため、不定休、予約制となっています(お店の入口に掲示された携帯番号で予約します)。

 こちらのお店、後で見るように単品単品はどこにでもあるありふれた料理なのですが、それだけにその美味しさに驚かされました。



 冒頭の前菜と海老の香草焼きはもちろんのこと、上の焼き餃子も何の変哲もないのですが、うまい。



 ただでさえ好きなよだれ鶏ですが、このタレなど絶品です。



 あまりに美味しいので、次に来たお肉の詰まった焼売も醤油ではなく、よだれ鶏のタレで食べました。



 小松菜とイカのピリ辛炒め物も普段なら普通すぎて手を付けないのですが、こんなに旨味のあるものだったとは…。



 エビチリは、見た目で察しがつくかと思います。



 酢豚も。これは美味しいよ…。



 炒飯もネギと卵だけで、叉焼も入っていないのですけどね。普段なら締めのご飯って面倒なので食べないのですが、食べてしまいました。

クックフェイス

神奈川県横浜市中区羽衣町2-6-7



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京都で評判のよい町中華のようですー四川料理 駱駝(京都・北白川)

2024年06月19日 | 食べ歩きデータベース


 京都は意外と町中華が多いそうです。小雪の舞う3月20日、京都芸術大学そばにある「駱駝」さんにお邪魔してきました。四川にラクダがいるのか疑問ですが、横浜にも四川料理なのに「敦煌」というお店がありますしね…。町中華と呼ぶにはややお洒落なお店で、ちょうど外苑前の「シャンウェイ」のような雰囲気です。

 辛さについては主観なので、比較的辛いものが好きだということをお断りした上での話になりますが、さほど辛くはないです。唐辛子よりは山椒が利いた辛味で、辛さのあまり旨味まで殺してしまっているということもありません。むしろ、旨味を上手に引き出しているかと思います。

 冒頭の野菜の唐辛子炒めの他は、四川料理で必ずと言っていいほど頼む好物ばかりになってしまったのですが、



 四川料理の定番、麻婆豆腐。



 宮保鶏丁(鶏とカシューナッツの辛味炒め)。



 中でも大好物の、水煮牛肉。



 少しお腹を満たすため、水餃子も頼みました。結構ゴロッとしたボリュームのある水餃子です。

 寒かったこともあり、なおさら四川料理で良かったと思います。京都に来て中華というのもなかなかない経験でした。

四川料理 駱駝

京都府京都市左京区北白川瀬ノ内町27-4



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今年も事例発表三本立てー第64回燮(やわらぎ)会②

2024年06月18日 | 交渉アナリスト関係


第3部:「実践的交渉戦術と実例」 



 第3部は、いつも交渉関連の書籍に取り上げられているトピックから、それに合った交渉事例をお話しいただいている、篠原祥さん。今回の関連書籍は以下の通りです。









 今や広く知られていますが、ダニエル・カーネマンによると、人間の脳は情報を処理する際に直感的思考であるシステム1と、論理的思考であるシステム2という二つのモードを使い分けているそうです。冷静な交渉者は、システム2を使って交渉していると思いますが、交渉が難航している時、とりわけ①平行線であることが明らかな時、②立場による違いの隔たりがある時、③交渉が長引き、感情的な対立が発生している時などは、なるべく交渉相手にシステム2を使わせたくない時があります。

 では、人はどのような時、システム1に頼りがちになるのか?①疲れている時、②情報量・選択肢が多い時、③時間がない時、④モチベーションが低い時、⑤情報が簡単で見慣れすぎている時、⑥気力や意志の力がない時などが挙げられます。ということは、その様な状況を作り出せば、相手はシステム1に頼る傾向が強まるわけです(逆も然りであることは、頭に入れておかなければなりません)。交渉学においても、相手をシステム1のモードにするための戦術や陥りがちなバイアスが取り上げられています。例えば、

・時間のプレッシャー(Deadlines):相手の決定に一方的に期限を設ける戦術。
・口車戦術(Snow Job): 相手がどの情報が重要で、どの情報がそうでないか判断しかねるほど多くの情報で圧倒する戦術。専門用語の多用もこれに含まれる。相手には非常に高い認知負荷がかかるため、無抵抗に合意してしまうことがある。
・利用可能性ヒユーリースティック:簡単に想起できる情報に頼って判断してしまう傾向のこと。

などがそれにあたります。システム1に頼らせたいのは、システム1には騙されやすい、認知バイアスにより判断を誤りやすいといった欠点があるためです。篠原さんの経験では、口車戦術(Snow Job)は欧州の交渉者が使ってくる戦術として3本の指に入るほど頻繁に見られるものだそうです。

 そのような戦術に対する対処として、

1.理解していないことには同意しない
2.要約を求める(最近では、オープンAIも使える)
3.口車戦術(Snow Job)で返す

といった方法があるということでした。

第4部:「『コミュニケーション』と『広報』・『報道』」 



 第4部は、中沢則夫さん。1.広報(コミュニケーション)の基礎、2.よい広報(=よいプレゼン)のために留意すべきこと、3.報道対応上注意すべきこと、についてお話しいただきました。情報が盛りだくさんでしたので、ここでは要約してお伝えしたいと思います。

1.広報(コミュニケーション)の基礎

1.「広報」と「報道」の違い
・広報対応業務…情報を分かりやすくお知らせする仕事
・報道対応業務…取材者の関心事項に応える仕事

2.その他
・公聴…広く意見や問い合わせを受ける
・情報公開…「行政文書開示制度」に矮小化されていることは多い
・パブリック・アクセプタンス…社会的受容性、社会的合意形成。戦略的に行う必要がある。
・広告…通常は商業広告を指す

3.「広報」の英語訳と使い分け
・Public Relation…若干表面的
・Communication…広報対象への情報伝達(通常は望ましいものを指す)
・Disclosure…公表が義務化されている情報の開示
・Media Handling…報道対応を指すことが多い
・Advertisement…商業広告

4.Communication の諸タイプ
・コミュニケーションの概念は広い…指示、報告、伝承、交渉、調整、すべてコミュニケーション
・情報発信者、受信者も幅広い

5.コミュニケーション・ループ


6.コミュニケーションの事故
・伝言ゲームの悲劇
・受信者の理解不十分による悲劇
・情報の第三種過誤による悲劇
・情報の毀損、憶測や曲解による悲劇

7.広報意図
・政策広報
・世論形成……特定の世論を形成するために広報することがある
・存在の誇示
・アドバルーン…世の中がどう思っているのかを調べる、不都合な情報を小出しにしておくことでガス抜きをするなど

2.よい広報(=よいプレゼン)のために留意すべきこと

1.プレゼンの目的と手法
・プレゼンのタイプ
① 正確な事実を伝える
② 受信者の共感を得る
③ 受信者を説得し、行動を起こさせる

・どのプレゼンをしているのかを意識することが重要
① 数字、5W1H 簡潔
② ムードを盛り上げる仕掛け
③ 受信者が主体的に考えられる材料の提供

2.プレゼンで心掛けるべきこと
・受け手の関心を的確に把握する…関心を向けさせるための仕掛けが有用
・広報情報の伝達経路、伝達速度を理解する…ビジュアルも重要(話し手の見た目、資料の見た目)、情報が伝達される過程で正確さは減衰する、一般に悪事は伝達速度が速く、浸透度が高く、かつ不正確に伝わる、単純な話ほど浸透度は高い
・TPOに合った話題、論法、資料を使う…第一受信者のTPOだけに注力しないよう注意
・明確なメッセージを持つ…受け手に沿う論法、メッセージは明確かつ簡潔に(多くて3つ)
・分かりやすい言葉の使用を心がける…専門用語を使わなければならない時は、分かりやすい解説で補う。
・単純な論理を用いる…せいぜい三段論法ぐらい、論旨展開は、「起承転結」または、「序破急」
・安定感を持った口調・文体を用いる(つまり、平易)…話すスピードは一定に。A4用紙4行を30秒が目安。準備・トレーニングが必要。 
※参加者が上司から言われた教え:「プレゼンをする時は、相手が酔っ払いだと思え」

3.「分かり易さ」と「正しさ」のトレードオフ
・正しくても伝わらなければ意味がない
・正確であること≒全てを開示すること、を理解する
・一般的には正しいことより分かりやすいことの方が大事
・脚注の活用、予め限界に言及しておく

3.報道対応上注意すべきこと

1.報道対応の現場= 事件・不祥事対応
・どこまで情報を公表するか?
・緊急記者会見…適切な方法と対応者、内容の正確さ
・経済部記者の動きと社会部記者の動きはまるで違う
・会見前の利害関係者への根回し

2.報道対応で気を付けるべきこと
・窓口の一本化
・電話取材は録音されているものと心得る
・会見における注意事項…これまで述べてきた、適切な対応者、会見で伝える範囲、見た目、感情的にならない
・悪い情報はエスカレートするので、直ちにラインに共有、
・悪い情報の公表の可否・要否の判断
・公表する際は、時間を空けない、嘘をつかない、想定問答を用意

 最後に、今回のお話しに関連して、参加者から出たヒントの幾つかを挙げます。

※(簡潔にまとめさせるために)わざと小さなフォントの使用を禁止する。
※資料のまとめとプレゼンの練習を繰り返す(その過程で、論理の矛盾に気づいたりする)
※上記と同じように、スタートアップではプレゼンの訓練をすることが多い。それよりビジネスモデルが磨かれてくる
※会見で、自由にしゃべりたい上司とリスクを回避したい部下(第2部の話であったように、内部調整が必要)
※マンガのようなビジュアルと簡潔な言葉でまとめるという考え方も有効
※プレゼンは場数 練習 重要なプレゼンならビデオを撮って確認するのも有効

 今回のお話しの結びに、中沢さんの考える「知的活動」を構成するのは、「予測力」と「伝達力(つまり、コミュニケーション力)」であるということでした。



 懇親会は、当社からわずか240mのところにある割烹「仙や」で行われました。マンションが立ち並ぶ下町の中にポツンと現れる美しい日本庭園が魅力のお店です。ちょうど庭の紫陽花が満開でした。

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今年も事例発表三本立てー第64回燮(やわらぎ)会①

2024年06月17日 | 交渉アナリスト関係


 6月15日、今年も弊社会議室にて第64回燮会を開催しました。燮会は交渉アナリスト1級会員のための交渉勉強会です。昨年は5月開催でしたが、今年は6月に戻りました。今回で8回目の横浜開催、過去の開催内容は、下記をご覧ください。

【過去の横浜開催】
第60回燮会
第55回燮会
第48回燮会
第42回燮会
第37回燮会
第32回燮会
第27回燮会

 さて、今年は全部で4部構成。いつもの理論研究と、通常の燮会より多くの時間が取れることを活かしての、1級会員による事例発表3本立てでした。



第1部:「交渉理論研究」第23回「統合型交渉の理論(3)」 

 第1部は、定例の「交渉理論研究」、第23回。「統合型交渉の理論(3)」と題して、お話しさせていただきました。



 本題に入る前に、岐阜大学の佐藤幹晃氏、寺田和憲氏、南カリフォルニア大学のジョナサン・グラッチ氏による論文“Teaching reverse appraisal to improve negotiation skills”を要約したスライドをご覧いただきました。というのも、前々回「統合型交渉の理論(1)」において、統合型交渉における合意可能範囲(ZOPA)が何故扇形になるのを示しましたが、当論文の実験で使われた交渉シミュレーション(最後通牒ゲーム)のサンプル動画が、これをビジュアルで理解するのに非常に分かりやすかったからです。論文も非常に興味深いものでした。



 さて、本題です。前回までで統合型交渉の理論的基礎は終わりましたので、今回は以下の点についてお話ししました。

1.(交渉ロールプレイの合意の分布から)現実の交渉では多くの交渉者がテーブルに価値を残してしまう
2.対策:「合意後の合意」による価値創造
3.統合型交渉を阻むバイアスについて(ゼロサムバイアス、反射的価値下げ、社会的効用、根本的帰属の誤り)

第2部:「南大洋州島嶼国でのインフラ構築提案における交渉」



 第2部からは1級会員による事例発表。まず、北川敬司さんより、「南大洋州島嶼国でのインフラ構築提案における交渉」と題して、大規模なプロジェクトをめぐる国際交渉の事例についてお話しいただきました。

 ある南の島に対し、北川さんの会社では大規模な太陽光発電施設の提案を行いました。その島は、南洋の小さな島国であるがゆえに、不安定な電力供給に悩まされていました。しかし、これといった資源は持たないものの、太陽光だけは豊富であったので、提案に至ったという訳です。「授人以魚 不如授人以漁((飢えた)人に魚を与えることは、漁を教えるのに及ばない)」という格言がありますが、北川さんらは、ただインフラを整備するのではなく、その島がその先も自立的に運用できるよう、「島の人たちが自ら成長できること」をテーマに、

① 可能な限り現地の資材を使う
② できるだけ現地の人を雇う
③ 問題が発生しても、現地の人だけで縮退運転(フォールバック(※))できるようにする

※システムなどに障害が起きた時、性能の低いシステムに代替したり、機能を限定して運用したりすること。

などの提案を行いました。

交渉ポイント1:社内説得

 さて、本交渉を通じて北川さんが感じられたことのポイントの一つ目が、「社内説得の難しさ」です。しばしば、「外部交渉より内部交渉の方が難しい」と言われますが、本件も例外ではなかったようです。交渉の初期段階では、社会的意義こそ理解されるものの、経済合理性やリスク面などで疑問が呈され、その説得に苦労したそうです。中期段階では、交渉のセオリーに則り、キーマンの関心事を探りながら説得を進めましたが、これまたキーマンによって関心事が異なるため、その調整も容易ではありません。一枚岩になるのは難しく、そのため部分的に承認を得ながら進めていきました。後期段階においては、キーマン同士の不仲が露呈。問題解決の成否と直接関係のない要因が意思決定に影響を及ぼすという不合理も現実の交渉ではままある話です。北川さんは、キーマンの関心事に基づき、それぞれが受入れられやすい切り口で説得を試みました。因みに、ハーバード大学のジェームズ K.セベニウスは、このようなやり方を「アコースティック・セパレーション」と呼んでいます。後になって振り返ると、第三者やさらに上層部に働きかけることもできたのではないかと、ご本人は分析されています。

ポイント☞交渉相手の選択、交渉相手の事前プロファイリング

交渉ポイント2:仲間集め

 複雑な交渉では、誰と組むか、あるいは組まないかの判断が重要になります。また、誰からどの順番で交渉していくかも重要になります。なぜなら、ある当事者との交渉結果が別の当事者との交渉に影響を及ぼすことがあるためです。とりわけ相手が外国ともなれば、この作業は容易ではありません。さらに言えば、交渉の過程で生み出した選択肢もどの順序で提示するかも結果に影響を及ぼします。特に、望ましいプロジェクトチームの組み合わせになるまで柔軟に調整できるよう、最後まで暫定的な状態でその余地を残しておくことが難しかったそうです。前述のセベニウスは著書『最新ハーバード流 3D交渉術』の中で、当事者の選定にあたっては「全当事者相関図」、交渉の順序を決めるにあたっては「逆方向マップ」の作成を勧めています。



 北川さんらが取り組んでいたのはまさに「3D交渉」でした。政府と民間企業とでは関心事が異なるため、価値交換の仕方が通常のビジネスとは異なっていたこと、共通ゴール(島の人たちが自ら成長できること)の設定は交渉当事者の姿勢に影響を及ぼすため、これを最初にしっかりと固めておくことが非常に重要であるといったことが、この仲間集めでの教訓になります。

ポイント☞チームミーティング時の交渉、チーム対交渉相手、政府系組織の関心事

交渉ポイント3:初心忘るべからず

 交渉が日本と相手国双方の民間企業ばかりでなく、政府関係者なども巻き込み巨大化、複雑化するにつれ、関係者の期待値も高まっていきました。ところが、その結果、内部の意思決定者がリスク回避的になり、過度なリスクヘッジをするなど思わぬ副産物も生まれてしまいました。しかし、やはりその際に大事だったのが共通ゴールだったそうです。

交渉結果

 ところが、思いがけないことが起こります。いよいよ合意という段になって、同国で政権交代が起こり、プロジェクトそのものが御破算になってしまったのです。ということで、北川さんは本件を交渉に失敗事例としてお話しされていたのですが、交渉の何を以て成功と見なすのかは難しいところです。例えば、ヘンリー・キッシンジャーは、1973年のパリ和平協定でベトナム戦争を休戦に導きましたが、2年後のサイゴン陥落で、アメリカが支援した南ベトナム政府は消滅してしまいました。本件の場合、確かに合意にも至りませんでしたが、交渉プロセスについては概ね成功だったと言えるのではないかというのが、お話を伺っての感想です。もちろん、北川さんはエドウィン O.ライシャワー博士のように、同国の市民と対話するなど、さらにやれたことがあったのではないかと、今後の課題を挙げておられました。

<つづく>

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沖縄一品料理まとめ(2023.10-2024.02)

2024年06月17日 | 食べ歩きデータベース


 昨年10月と今年2月の沖縄出張の際の一品料理まとめです。



 初めは、那覇空港で販売している「大東寿司」。かなりの人気で、午前中には売り切れてしまうようです。僕は沖縄に行くときはいつも始発便なので、無事購入できました。その名の通り、北大東島の郷土料理で、そのルーツは八丈島、小笠原などの「島寿司」にあるそうです。

 見た目の通り、鰆を砂糖醤油に漬けこんだほんのり甘いお寿司で、6巻あっという間に食べられます。ちょっとしたおやつにちょうどいいくらいですね。なかなか珍しくて美味しかったです。



 続いて、弊社社員に教えてもらったお店で、嘉手納にある「ルークタコス」。タコスを食べること自体ほとんどないのですが、頼んだのは、パリパリとしたハードシェルタイプのタコス。左がステーキチーズタコス、右がガーリックシュリンプタコス。僕はステーキチーズタコスの方でしたが、ハラペーニョをトッピングすればなお良かったと思います。しかし、タコの食感と肉との相性が良く、食べ応えもあり、満足でした。



 三軒目は、浦添にある「高江洲そば」。浦添の高台にあるお店ですが、かなりの人気で、開店と同時にあっという間に満席になります。ここへは5年前にも来たことがありましたが、その時はあまり体調が良くなかったのと、直前に奥武島で沖縄てんぷらを食べてしまったために、正直元祖「ゆし豆腐そば」を味わえる状態にありませんでした。ゆし豆腐というのは、にがりで固まる前のおぼろ豆腐のような沖縄の豆腐で、これが固まると「島豆腐」になります。ゆし豆腐そばは、この大豆の旨味たっぷりのゆし豆腐と豚でとった出汁で作った沖縄そばです。このように言うと、さっぱりとしたイメージがしますが、何の、しっかりとしたコクがあり、軟骨ソーキもトッピングすれば、ガッツリ食べられるそばになります。



 四軒目は意外にも、「Coco 壱番屋 沖縄北谷国体道路店」。「わざわざ沖縄に来て、ココイチ?」と、僕も思いました。しかし、この時は「第161回YMS」の準備にかかりきりで、しかも限られた時間の中、近所に昼食がとれそうなところもほとんどなく、やむを得なかったのです。

 ところが、お店に入ると、他では見かけない、北谷国体道路店限定というチキンカツカレーバーガーが!しかも、嘉手納基地に近いお店だけあり、厚みのあるチキンカツに、これまた分厚いベーコンがのった、とてもボリュームのあるハンバーガーです。また、カレー屋さんの期待に違わず、カレーソースがしっかり辛い。全国チェーンで思いがけず沖縄限定品に出会いました。



 最後は、お決まりのステーキハウス88へ。実は本当はグルメバーガーが食べたくて、嘉手納から那覇にかけ、目星をつけた店を4軒あたったのですが、4軒が4軒とも跡形もなく無くなっていたので、「美肉の策(?)」として、空港でステーキを食べようということになったのです。腹いせに1ポンドステーキを平らげましたが、その翌週アメリカで3日間1ポンドでは収まらないステーキを食べ続けることになろうとは、この時考えもしなかったのでした。

Luke Tacos



沖縄県中頭郡嘉手納町嘉手納445-12



高江洲そば



沖縄県浦添市伊祖3-36-1



Coco 壱番屋 沖縄北谷国体道路店

沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭844-1



ステーキハウス88 那覇空港店

沖縄県那覇市鏡水150 際内連結ターミナルビル3階

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今回の九州一品料理まとめ-福岡、小倉、佐賀

2024年06月14日 | 食べ歩きデータベース


 5月27日から30日の九州出張時の一品料理まとめです。順番として本当は二番目ですが、初めにご紹介するのは、小倉の焼肉屋「肉ときどき魚」の「イクラ雲丹ユッケ丼」です。大きさは牛丼(並)のどんぶりを一回り小さくしたぐらいなのですが、ご飯も、そしてご覧の通り具も盛りだくさんで、腹八分目位にはなります(50歳男性、個人の感想です)。

 そして何より、写真映えするだけのメニューではなく、具材が新鮮。特にイクラはもの凄い自己主張で、口の中で弾き返してくる弾力でした。北海道でもここまではなかなかお目にかかれないのではないかと思います。



 続いてベタなのですが、福岡ではカジュアルに親しまれている「ウエスト」の肉ごぼう天うどん。チェーン店とはいえ、僕はウエストのうどんは結構ばかにならないと思っていて、昔からよく行きます。のど越しの良い茹で方が好きで、以前店員さんから茹で方のアドバイスをいただいたことがあります。

 7年ぶりに訪れた、バー「ウーバンギャアー」の後に行きました。



 小倉から3時間10分かけて大牟田へ。さらに1時間23分かけて佐賀に。佐賀に到着したのは21時36分、「肉ときどき魚」から何も食べていなかったので、22時閉店という駅前のラーメン屋、ビックワンに駆け込みました。

 折角なので特製ラーメンを。佐賀ラーメンは久留米ラーメンにルーツがあり、あっさりとした豚骨スープに、博多よりは柔らかめの麺(九州の人から見るとやや太い麵だそうです)。生卵がトッピングされています。2年前に訪れた、鹿児島ラーメン「小金太」を思い出しました。



 翌朝、唐津に向かうにあたり、乗り遅れたら次の電車は1時間20分後という長崎本線にあって、駅の「寅ちゃんうどん」に駆け込み、待ち時間を含めわずか7分で肉うどんを完食。井上製麺という製麺所さんの直営店だそうです。前日夜遅くにラーメンだったので、優しいうどんは嬉しい。



 夜は福岡に戻り、清湯系豚骨の先駆け、「月や」へ。初めて行ったのは5年前ですが、今や福岡空港にも入っていますね。

肉ときどき魚



福岡県北九州市小倉北区魚町2-4-20



ウエスト春吉店

福岡県福岡市中央区春吉3-21-24



駅前ラーメン ビッグワン

佐賀県佐賀市駅前中央1-13-16 東高ビル



寅ちゃんうどん

佐賀県佐賀市駅前中央1-11-1



月や

福岡県福岡市博多区中洲2-5-2



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エンターテイメント界からのぞく、すぐそこにある未来ー第165回YMS

2024年06月13日 | YMS情報


 6月12日、NATULUCK関内セルテ 801にて、第165回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。3月から始まった「比較的若手シリーズ」も佳境です。

 今回の講師は、プロミュージシャンで株式会社SAKAY ENTERTAINMENT代表取締役の酒井俊光様。19歳からプロギタリストとして活動、コロナ禍であらゆるイベント活動がなくなる中、それまで副業として行っていた動画編集の幅を広げ、現在はSNS運用代行(編集・撮影)を主軸として、ミュージックビデオ撮影、編集、エンタメ業界以外でもイベントの会場選定やPV作成、プロモーション支援などを行っておられます。そんな酒井さんに、「エンターテインメント業界が経済に及ぼす影響」と題してお話しいただきました。



 初めに、エンターテイメント業界とは、スポーツ、テレビ・ラジオ、映画、音楽、アニメ、ゲーム、舞台・イベント、テーマパーク・レジャー、動画配信など、非常に幅広い業界を包含する概念です。したがって、その裾野は我々が思っているよりも広く、雇用創出、収益増加、観光産業の発展、技術革新の促進など、多岐にわたる影響を経済に及ぼしています。

 例えば、地方で大規模なイベントが行われ、そこに人が集まると、地元のレストランやホテル、小売店、観光産業などに10%~30%の売上増が見込まれるそうです。しかもそれは、コロナ禍で一旦ゼロになり、未だ回復途上にある直近の数字であり、本来はもっと見込めるそうです。

 「戦争は発明の母」という言葉があります。同様に、エンターテイメント業界も様々な技術革新を促す土壌があります。むしろ、エンターテイメント業界で起こった技術革新が軍事転用される例さえあります。例えば、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)技術を用いた軍事訓練は、元はゲームから生まれたものです。もちろん、その逆も起こり得るでしょう。そしてエンターテイメント業界で起こる技術革新は、我々の日常生活をも変えていく可能性を秘めています。例えば、観客が観客席から鑑賞するのではなく、自らも参加する体験型(没入型)演劇、「イマーシブシアター」は、VR/AR技術の進展により今後ますます発展し、そのノウハウがエンターテイメント業界を超え、私たちの生活にも浸透していくことでしょう。その他、5G技術によりリアルタイムデータ処理が可能となり、リアルタイムストリーミング(ライブストリーミング)はよりタイムラグのないものとなります。企業で言えば、リアルタイムのデータをマーケティングに活用することが可能でしょう。エンターテイメント業界には欠かせない著作権管理をAIにやらせるということも行われているようです。

 一方、このような技術革新の副産物として、新たな課題も生まれています。例えば、誰でも手軽に発信ができるようになった結果、二次創作の商業化、AIによるコンテンツ自動生成ツールの登場、NFT(非代替性トークン。デジタル上の資産鑑定書のようなもの)の無許可販売などが起こり、著作権、知的財産権の保護がより困難になっています。また、ストリーミングサービスで大量のコンテンツが配信されるようになった結果、質の低いコンテンツも大量に出回るといったことが起きています。



 最後に、総務省が出している「5Gで繋がる世界」という動画を見ました。



 それで思い出したのですが、40年前に「ミーム いろいろ夢の旅」という科学教養アニメがありました。当時は子供心に「本当にそんな未来が来るのか?」とわくわくしたものでしたが、「5Gで繋がる世界」は遠い未来ではなく、部分的には既に起こっている「すぐそこにある未来」という印象でした。ということは、その結果起こる私たちの生活や取り巻く環境の変化もある程度予測の範囲内と言えます。しかし、そうなった時、今は当たり前のように見えて、今後その価値が高まっていくもの、あるいは生活環境が変わっても普遍的に残る価値、そうしたことに想いを馳せることは、40年前の「ミーム」のようにわくわくします。

 懇親会は、関内駅前周辺の再開発でセルテと共にあと1年半で46年余りの歴史に幕を下ろす「スポーツカフェ ヤンキイス」で行われました。まさに横浜大洋ホエールズから横浜DeNAベイスターズの歴史と共にあったお店で、子供の頃から知っていたので寂しいです。

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした

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くぼたとくぼたくぼたへいくー三代目くぼた(東神奈川)

2024年06月12日 | 食べ歩きデータベース


 4月5日、東神奈川の横浜市神奈川区民文化センター(かなっくホール)1階にある居酒屋、「三代目」にお邪魔してきました。

 京急東神奈川(旧仲木戸)駅から歩道橋を渡り、かなっくホールの2階からエレベーターで降りようとしたのですが、できず。お店に行くときは京急東神奈川からであれJR東神奈川からであれ、地上を渡るのが近道です。

 店主の窪田賢治さんが、弊社社員の高校の先輩に当たるそうで、この日はその社員を含む3人でお邪魔しました。「久保田」でない二文字の「窪田」は少数派なので(一説には久保田の方が3倍ぐらい多いようです)親近感がわきます。初回は、2時間半飲み放題付のスペシャルコースで。

 冒頭の写真、前菜は豆腐の味噌漬け、白身魚のチーズ味噌白和え、季節のお浸し、ワカサギ南蛮漬け。



 サラダは、蒸し鶏の塩麹サラダ。



 刺身五種盛。



 鰆のフキノトウ味噌焼き。



 一品写真を撮り忘れた気がしますが、白だしで炊いたぶり大根。



 締めはあなごと三種の薬味うどん。この三種類の国産小麦をブレンドし、2日間も寝かせたという自家製うどんは、次回来た時、一品で頼もうと決意しました。



 そして5月12日、あの悔しい負けゲームを観た横浜スタジアムの後に、後輩の窪田健一君と共に二度目の訪問。今回はアラカルトで、まぐろと鮮魚の刺身三点盛りから。



 直前にガスバーナーで炙ってから出してくれる、脂ののった大きな炙りしめ鯖。昨年10月にしめ鯖にあたり、アナフィラキシーショックで運ばれて以来のサバ解禁です。



 野球の試合が長引き、最後には日が落ちて結構寒かったため、もつ煮込みを頼みました。お酒はひたすら焼酎のお湯割り。



 驚くほど柔らかかった、やまゆりポーク(神奈川県のブランド豚)の一本焼き。焼いた豚肉とは思えない柔らかさで、これだけボリュームがあってもペロリといけてしまいます。



 そして約束のうどんは、匠の大山鶏入り釜玉。直前の関西出張でカレーうどんを食べていたので、僕は釜玉うどん。後輩の窪田君がやまゆりポークのカレーうどんを頼みました。本当はざるうどんをと思っていたのですが、前述の通り寒さのために温かいうどんとなりました。それでもできるだけうどんのモチモチ感と風味を楽しみたかったので、釜玉にしました。これから暑くなるので、次回はざるうどんにしようと思います。カレーうどんも魅力的です。

三代目くぼた



神奈川県横浜市神奈川区東神奈川1-10-1 店舗5



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生命力を浴び身体の変化を感じるー慈恩②(上町)

2024年06月11日 | 食べ歩きデータベース


 6月8日、再び上町の慈恩さんへお邪魔してきました。直前まで生きた素材を使い、その鮮度のみならず、調味料を極力使わずに調理のタイミングまではかることで素材の持つ味の奥深さを感じ、かつ身体とも共鳴するお料理の数々。店主である岡野さんの目から鱗のお話しも楽しみの一つです。

 さっそく行きましょう。冒頭の写真右上は、亀の手という本当に亀の前足に似た形の貝とカブのスープ、豆乳仕立て。前回は牡蠣のスープでした。お皿の左下は今が旬のアイナメ。右上の蓮華にのっているのは、岩手県産の青ミズ。クセがなく、水菜と同様、瑞々しい野菜です。そして、右下のレバーのようなものは羊の心臓。韮の先端に丸いものがついていますが、これは蕾です。韮は蕾をつけた頃が生命力が強く、確かに韮とは思えないほど甘いです。



 二皿目。綺麗な飴色の海老が出てきました。天草から生きたまま取り寄せた海老の、店主曰く「飴焼き」です。何とこの飴色のソース、日本酒で有名な「浦霞」の本醸造を煮詰めて作ったのだそうです。日本酒の糖分だけなので、見た目よりはるかに甘さは控えめ、頭から食べられる海老の香ばしさが引き立ちます。



 こちらは水菜を野菜でとった出汁と腐乳で和えたもの。腐乳とは、Wikipediaによると「豆腐に麹をつけ、塩水中で発酵させた中国食品」とあります。台湾で有名な豆腐餻(とうふよう)のルーツだそうです。しかしながら、臭みはなく、むしろ出汁のコクが引き立っています。あんかけと水菜のキャキシャキ感、そして上にまぶしたそば茶のサクッとした食感のコントラストと焙煎された蕎麦が香ばしさを添えています。

 因みに、日本酒はしかりとした甘みのある「豊盃 純米吟醸 モヒカン生娘」でした。



 お待ちかね。前回話題に出てきた鮎の登場です。天然の鮎にフランス産ホワイトアスパラのピューレを合わせています。添えられているのは、アスパラソバージュ。これもWikipediaによれば、オルニトガルム・ピレナイクムというオオアマナ属の植物の若芽のことだそうで、アスパラガスの仲間ではないそうです。本来、鮎とホワイトアスパラは旬がちょうど入れ違いだそうですが、それをギリギリのところでくっつけたのだそうです(この日に開催したというのも意味があります)。俳優の故・緒形拳さんの好物だったそうで、頭から丸ごと食べられます。天然の鮎は元々肉食ですが、春になると川を遡上し、川底の藻を食べるようになるのだそうです。元々鮎の肝は好きですが、これは本当に美味しかったです。身も、僕が知っている鮎のパサパサ感がなく、口の中でほろほろと溶けるように崩れていきました。

 なお、お酒は一転してさっぱりとした、清流のような「春霞 夏純吟 田んぼラベル」に変わりました。



 塩漬けしたオーストラリア産の羊を塩抜きしたもの。マトンに近いそうですが、柔らかく臭みが全くありません。その秘密は、野菜の皮の酵素に漬けこみ、臭みを消しているのです。モンゴルなどで用いられる手法なのだとか。添えられているのは長ネギに見えますが、マコモダケ。名前からするとキノコのようですが、イネ科の植物「マコモ」の茎だそうです。ソースは、やや酸味のあるフォアグラソースのような感じがします。

 お酒は切れの良い、「睡龍 純米 無濾過生酒」。青草のような、日本酒ではあまり出会ったことのない不思議な香り。また、少し時間を置くと米由来の旨味の厚みが増すと共に、軽い塩味を感じます。
 


 小豆島手延べ素麺。スープは、豆乳とグリーンピース。羊肉の後、口の中をさっぱりとさせるのにちょうど良いです。焙煎した玄米との食感のコントラストも良いですね。



 軽く火入れした淡竹(はちく)。驚くほど柔らかく甘みがあり、筋やシュウ酸由来の痺れるような感じが全くありません。

 これには、すっきりとした酸味のない味わいのスペインの白ワインを合わせました。



 台湾産パイナップルに、もちろん砂糖不使用の小豆餡、ビタミン豊富なルバーブ(食用大黄。初めて食べました)、クコの実。疲労回復に良いデザートです。砂糖を使わなくてもここまで十分な甘味が出せるのだなと感心します。果実の酸味との相性も良いです。



 最後に。お話しの中で試食させていただいたのですが、イタリア産のルッコラ。概して土地が瘦せている欧州と日本とでは、土の肥沃さによって苦みや香りにどのような違いが出るのかを体験しました。8年前、今は無き「パクチー ジョーズ」へ行った時、正直パクチーの香りに物足りなさを感じていたのですが、あれは水耕栽培だったからなのかもしれません。

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ランチで並ぶのも納得-芳すし(関内)

2024年06月07日 | 食べ歩きデータベース


 6月7日、ランチョンミーティングのため、噂の芳すしへ行ってきました。行列ができるとは聞いていましたが、11時の開店で11時20分到着。すでに行列ができ始めていました(3組目)。15分後、店を出た時には長蛇の列(ミーティングが15分だったのかという疑問はさておき)。お店は13時で一旦閉店してしまうので、なるべく早めに行くのが良いと思います。



 行列の秘密は、このボリュームにして700円という価格。ラーメンでも1,000円超えが珍しくない昨今、破格の値段といえます。写真だと分かりにくいのですが、銀シャリは通常の1.2~1.3倍、卵焼きも1.5倍はいずれも目見当ですがあります。

 上の写真がちらし、下がにぎりのランチ。大盛もあるそうですが、それでも900円。しかし、僕には普通の大きさでも十分な量がありました。関内界隈でお昼を食べることを考えてみ、700円はむしろ安い方に属すると思いますが、それがお寿司とは、行列にもなるわけです。

 ただ、これだけのお客さんをご夫婦だけで切り盛りされているのが少し心配。結構大変だろうと思います。

芳すし

神奈川県横浜市中区真砂町2丁目2−12

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2024年5月アクセスランキング

2024年06月03日 | 人気記事ランキング


 今朝はまた能登半島で震度5強の地震がありました。一方、関東地方では今日も一部の地域で大雨の予報が出ております。十分ご注意ください。

 さて、2024年5月にアクセスの多かった記事、トップ10です。

 5月は久しぶりに月の半分でブログを更新しました。それにより、定番記事の一掃を密かに目論んでいたのですが、

3位:久村俊英さんの超能力を目撃してきました(47ヶ月連続)
6位:「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました(6ヶ月ぶり)

上の2つの記事がランクインしました。前月、「BAR TENDER」が2位に入りましたが、「『上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会』に参加してきました」の久々のランクインはそれと関係があるかもしれません。今年は2024年ですから、上田さんのバーテンダー歴60年にあたる年。8月には80歳を迎えられますね。

 さて、個別記事のトップは2位:「近くにできたハンバーグ屋さんに行ってきましたー万平食堂(吉野町)」であり、3位と232PV離しての独走でした。そして3位~10までが50PV内に収まっており、その点では掲載期間わずか3日の「カウテレビジョン様創業20周年に出席させていただきました」が10位に入ったのはなかなか凄いと思います。地元の小さなイタリアンですが、4月投稿の「下町に咲いた素敵なイタリアンーオステリア 小川製麺所(吉野町)」が5月になってランクインしました。

1 トップページ
2 近くにできたハンバーグ屋さんに行ってきましたー万平食堂(吉野町)
3 久村俊英さんの超能力を目撃してきました
4 おしゃれ感より本場感の羊肉料理ー小城(福富町)
5 横浜在住51年、なのに初!―ハングリータイガー(横浜駅)
6 「上田和男さんバーテンダー歴50年を祝う会」に参加してきました
7 今求められるエンゲージメント向上と”複”業のはなし-第164回YMS
8 立地すこぶる不便、でもまた行きたくなる豪快な焼肉―香味(鶴見)
9 下町に咲いた素敵なイタリアンーオステリア 小川製麺所(吉野町)
10 カウテレビジョン様創業20周年に出席させていただきました

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久留米の老舗久"留米ー田中鰻屋(久留米)

2024年05月31日 | 食べ歩きデータベース


 恐らく久留米に降りるのは初めてなのではないかと思いますが、5月30日、1804年(文化元年)創業の鰻の老舗、田中鰻屋さんに行ってきました。こちらのお店の創業者である清右衛門は、久留米藩主有馬頼貴の御膳寮奉仕、すなわちお殿様のために蒲焼を焼く役を務めた方なのだそうです。

 お店もいつ頃の建物なのか分かりませんが、襖絵なども立派でなかなか趣があります。

 名物は上の写真の「せいろ蒸し」。久留米から筑後川を下ると、どじょうや鰻で有名な柳川がありますが、そこと同じく、たれで味付けした茶色いご飯に、鰻の蒲焼と錦糸たまごをのせ、蒸籠で蒸します。一般に柳川発祥と言われていますが、久留米よりやや南西に位置する大善寺というところが元祖ではないかと伺いました。

 前回ご紹介した近江八幡のひつまぶしとは対照的に、仕上げに蒸してあるため、全体が柔らかくふっくらと仕上がっています。九州なので、味付けは甘め。鰻は地方によって製法も食べ方もそれぞれで、楽しいですね。当初底が浅いと感じましたが、食べ終わるとそこそこボリュームがあります。肝吸い付き。

蒲焼元祖 田中鰻屋



福岡県久留米市中央町15-32



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