嘘の吐き方(うそのつきかた)
人はみんな嘘をついていると思います。僕もそうです。このページが嘘を吐き突き続ける人達のヒントになれば幸いです。
 




僕が一体何に怒っていたのか、
よく思い起こして考え直してみる。
やっぱりそれは、僕の嫉妬心だったのかな?
と思えてくる。
そして、「本当は鋭志が犬の世話をしなくちゃいけないのに、うちの親に甘えてるだけって事になるんだからね!」
と言い返された事についても考える。

亡くなってしまった愛犬の事を、僕や絢斗よりも大事にしているような気がして、
それが僕には辛かった。
その才子の様子が許せなかった。
死んだ犬の事を大事にし過ぎて、
まるで僕との2年間の結婚生活を否定されたように感じ、許せなかった。
「鋭志のせいで私はのんちんと一緒に暮らせなかった」と言われた時には、才子のずっと隠していた想いがグサリと刺さって怒りが何日も収まらなかった。

1度目はテーブルに座って4人で西友の買い物中に具合が悪くなった話と実家での愛犬の埋葬方法や供養についての話合いにおける鶴岡家の不破に関する話の時に、
2回目は絢斗のお迎えの準備をしながら身体を動かしている最中(又は移動中)に、
3回目はサツドラ前の歩道でさんりんしゃからのバスを待っている間、
才子には犬の事について三回責められた。
3回目は言葉を少し修正して、
(どうせ鋭志には言ってもわかんないと思うから言いたく無いんだけど、鋭志にものんちんの事について全く責任が無いとは言えないと思う)
という表現になっていたけど、
どちらにせよ、才子が内心僕のせいだと思っているのは間違い無かった。

僕は子供の頃、公園でコリーという犬種に全身を何度も噛まれて、右腕から皮下脂肪が外へはみ出してしまい、病院で右腕を縫う程の怪我をして、それ以来犬に近づくのが怖かった。
そして動物の毛で喘息の発作が起こるから、
日常的に喘息発作ばかりの生活になってしまったら、と思うと、僕には犬と暮らすのはとても無理だと感じていた。
そして僕の生まれつきのアレルギー体質について責められたとしても、僕には死んで詫びる事も出来ないし、何もしようが無いから、尚更それを責められたのは辛かった。
一体僕には、どんな選択肢があったのだろうか?

そしてそれほど犬が大事なら、2年前に新居での物件選びの際に、サニープレイスに決めようとせず、ちゃんと才子の意思で断って欲しかった。

新婚生活が始まる事の条件に、
犬を飼う事と、タバコを吸い続ける事が条件になっていたなら、
僕はどうしていただろうかと考えてみた。
それでもやっぱり、僕は才子と結婚生活を送りたかった。才子は意固地で頑なな僕を柔らかく変えてくれる特別な存在のような気がしていたし。
僕が才子の前ではじめて大声で泣いた時に
才子はベッドの上で優しく僕を抱きしめて包んでくれて、僕を必死で癒して宥めてくれた。
その才子の優しさが、忘れられなかったから、きっと僕は才子の事を信じる以外に、他の道を見つけられない。
才子は僕が今までに出会った誰よりも僕に対して優しかった。だから僕は才子の人生をどうしても救いたかった。
実家で親の庇護下で自分の殻に閉じ籠ってる才子に対して、大人になれずに苦しんでる才子の様子をみて、僕はどうしても外の明るい世界へ連れ出したかった。
だから、才子が絢斗の事を可愛がって嬉しそうにしている時に、僕の心はとても安らぐ。
才子が幸せそうに成長してくれている様子を見ると、僕の魂はとても安らぐ。
でも、才子が自分の殻に閉じ籠る様子をみている時はつらい。
まるであの頃に逆戻りしているかのような錯覚に陥るから。
僕は才子の心を無理矢理変えるような事は出来ない。僕にできるのは、僕の言葉を届ける事だけ。それを必死でやり続けるしか、僕には道が無い。伝わらない言葉をどれだけ紡いでも、それは才子には届かない。
才子に届けるには、僕の魂を削った言葉が必要だから、僕は深く潜って、僕の言葉を探す。眠って無意識と意識の狭間でたゆたうような感覚の中で、僕は新しい言葉を探す。
誰にも見つけられなかった、原石の言葉を探す。
かつて言葉が生まれる前の、呻き声や叫び声だった頃の、想いだけの頃、僕等が言葉に頼らなかった頃、そこには心の共感が広がっていただろうか?
獣の叫びの中に、孤高の咆哮以外に、
僕達は魂の震える何かを持っていただろうか?
僕は深く沈んで何かを探す。
誰にも見つけられなかった隠された未来が
何処かにあるような気がして、
僕はその、美しい何かを探す。

僕は奇跡を待ったりしない。
僕は奇跡を見つけ出す。
それが出来なければ、
僕達は奇跡の糸を手繰り寄せる事など出来ないから。
多分それは、自分自身が忘れてしまっているような、心の深い部分と繋がっている糸だから、解きほぐすには、とても、時間がかかるのかもしれない。
だけどそれを見つけた時には、心の隙間に光が刺して、セカイの風景は一変するから、
だから僕達は、
自分自身の心に対しては、
絶対に嘘をついたらいけないと思うんだ。

心の扉を開く勇気が足りない
僕はセカイを恐れている。

傷ついても壊れない心
ぶつかっても壊れない心
僕が死んでも、世界に遺り続ける心
そういう大切な何かを、僕は探している。

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